第4話松の廊下

「吉良殿、吉良殿、お待ちくだされ」

「なんじゃ、浅野殿」

「明日、御勅使、ご到着の際、我々接待役は敷台の上で待つべきでごさいますでしょうか、はたまた敷台の下で待つべきでごさいますでしょうか?」

「浅野殿もお人が悪い。そのような事は先刻ご承知のはず。みどもに聞かずとも決まりきった事」

「吉良殿、どうにかお教え願いたい」

「浅野殿、かねがね噂は耳にしておったが、田舎侍よのう。この鮒侍めが!」

「くっ!」

「お、怒った顔がなんとも、バカな顔をしておるわい」

「言わせておけば、次々と罵りおって、吉良許さん」

「おっ、刀を抜くのか?城内で刀を抜けば即日切腹、お家は断絶。そんな、勇気があるの

か?」

「ええいっ!」

「おっ、刀を抜いたな!殿中でござる。皆のもの殿中でごさる!」

だれも、松の廊下にはいない。

「待て待て、浅野殿、今が一番の見せ所なんだから、刀を一応収めてくれ!最初から」


「浅野殿、刀を抜けるのか!」

「もう、我慢ならぬ!」

「おっ、刀を抜いたな!殿中でござる。出合え出合え、殿中でござる」

誰もいない。浅野内匠頭は吉良上野介をなます切りにした。

「歴史が変わってしまったわ」



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