第15話 一念岩をも通す
えー皆様、異世界ニュースお時間です。
今日、某異世界、某国で無事に閉会式を迎えた『アーチェリー異世界大会』女子決勝で、前代未聞の珍事が起きました。
この『アーチェリー異世界大会』は選手が大会規定の弓と鉄の矢を使い、一対一で交互に遠くに離れた的めがけて射撃する競技で、五本の矢を撃ち終わった時点でより高い得点を取った方が勝利者となります。
伝説の金属で造られた大会規定の『オリハルコン』製の的は、鉄の矢が当たると、当たった部分をデジタル解析して得点を小数点第二位まで割り出せます。
そして珍事は決勝、正に勝負が決まる第五射目で起きました。
後攻のアゾマニー『ユミツカ
ですが、勝利への執念なのか渾身の力で弓を引き絞り『ユミツカ井』選手の放った鉄の矢は、貫くはずのないオリハルコン製の的を貫いたのです。
『ユミツカ井』選手は惜しくも優勝を逃しましたが、この珍事を目の当たりにした観客は、始め言葉を失い静まり帰えると、やがて、総立ちになり割れんばかりの歓声が鳴り響いたとの事です。
大会運営者
「いや、初めて見たときは自分の目を疑いましたね! 鉄の矢がオリハルコン製の的を貫通するなんて今でも信じられませんよ! 正直、夢でも見ているんじゃないかと思ってますよ!!」
今回優勝を手にしたエルフ族
『森野姓之祐実』さん
「確かに今回優勝したのは私ですが、彼女……『ユミツカ井』さんの勝利への執念が起こしたあの一射は、私にとっては試合に勝って、勝負に負けた……そんな一射でした。……ごめんなさい、もう良いですか……? あの奇跡を目の前で目撃して、身体が震えてしまって……」
オリハルコン製の的を貫いたアゾマニー族
『ユミツカ井』さん
「『森野姓之祐実』さんの射撃は一射一射、的確に的を獲ていて、正直手も足も出ませんでした。今回の結果は自分の力不足を痛感……え? どうやってオリハルコン製の的を貫通させたのかですか? それは私にも解らないんですよ。最後の一射はよく覚えて無くて……。客席がわいて初めて、的を貫通している事に気づいたんです」
オリハルコン製の的を貫通した鉄の矢は、どうやっても引き抜くことは出来なかったそうです。
異世界ニュースのお時間でした。
続いては、異世界転生する人々に与えるチート能力システムを維持するために、税金を30%に引き上げが決定した異世界のニュースです……。
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