第7話
令状を持った天童を先頭に、捜査員たちが続々と捜査本部から出て行く。俺と田村はその最後尾についた。
中警察署の地下駐車場から地上へと出ると、外の世界が眩しくて一瞬目の前が真っ白になった。
「地上は地獄だな」
地上はダンテの『神曲』に描かれている
「どこにいたって地獄さ」
田村はハンドルを握りながら無表情で答えた。
思わず、田村の横顔を見つめた。なんだか意味深な言葉だ。生きていることが地獄だとでも言うのか。俺が返答に
「なるほど、
「俺が言う必要ないだろ」
それ以上、田村は何も言わなかった。
川上の住むアパート前に到着すると、天童を含む数人の捜査員たちが戸口の前に立った。俺たちはアパートを取り囲むように下で待機する。
天童がインターフォンを鳴らした。すぐにドアが開き、中からスウェット姿の長髪の男が出てきた。
――間違いない、川上だ。
天童が令状を川上に見せると、彼は表情を
「
「
俺たちは似たようなセリフを同時に吐き捨てると、
「また逃げるのか」
藤堂のその言葉に川上は顔を
事情聴取は天童班によって行われた。
自分の人生を狂わせた銀行と中嶋建設、それに何もしてくれなかった大学が悪いんだと川上は言い放った。そして、警察官があの時、声をかけなければこんなことは起きなかったと。
どこまでも自分に甘い男だ。悪いことなどしていないのだから、あの時、逃げないできちんと対応していれば彼の人生は違っていただろう。
「ほいよ、お疲れ」
俺は田村の前に淹れたてのコーヒーを置いた。
「アイスがよかったな」
「文句言うなら飲むな」
俺の伸ばした手をかわし、田村はカップホルダーを口に運ぶ。
「うまい」
「ふふん」
俺は手にしたカップホルダーを口に運び、味わうようにコーヒーを口に含んだ。
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