レベルMAX勇者召喚師と魔王の交わる世界

綾乃蒼人

第1章 レベルMAX勇者召喚師

第1話 無能ルビと美少女勇者アーネ

「今日も青空が気持ちいいーーー」

広い丘の上に寝そべり、大きく背伸びをする茶髪の若者がいた。

その若者の名前はルビ。今年で17歳になる。


そのルビがいるここはラーンザイル王国。

ラーン大陸の西部に位置し、広大で豊かな大地を有する農業が盛んな国で、この大陸では最も古くからある由緒ある王国であった。


東部にはハイドラ国、北部にアロイ国、そして、南部にはクロノス国があり、ラーン大陸は、その4国で統治されていた。


「うーーん。やっぱりこの丘からの眺めは最高だよな~」

ルビは、綺麗に澄み渡った空と田畑を呑気に眺める。


「大部分が焼失したのによくここまで復興を……まあ半年以上前の記憶は、俺には無いのだけど……」


半年前の大魔王軍の襲来で町は焼け、田畑の半分が焼失し、住民はすぐに城へ避難したが亡くなった者も大勢いた。

さらに、不幸なことに国王であるラル王が、何者かに暗殺されてしまったのだった。


そんな戦乱の中、即位したのが第一王女フレイヤだった。王子がいないために王女が即位することになったのだ。

不幸中の幸いだったのは、このフレイヤが、正に才色兼備・勇猛果敢であったことだ。


大賢者アミーと共に国土の半分まで蹂躙侵攻していた大魔王軍を退却させることに成功する。

その後、勇者マリアンヌや大賢者アミーを含む勇者パーティーが大魔王の討伐に成功したのだった。


「やっぱり母さんは、凄かったんだよな……この国の英雄なんだ。」

ルビは、育ての親であった勇者マリアンヌの優しい笑顔を思い出しながら涙を浮かべ、再び遠くの空を眺めた。


「ルビじゃないの~何をしてるのよ?」

いきなりルビの耳元によく知っている可愛い声が届く。


「わぁっ!驚いたぁ!アーネ!だ、だから気配を消すのをやめろよ!西の勇者様は、忍び足がお得意ですか~?」

アーネと呼ばれた赤髪の美少女は、ルビのすぐ横でプカプカと宙に浮いていた。


このアーネは、大賢者アミーの娘で西の勇者になったばかりだった。

王国最年少の西の勇者ということもあり、ラーンザイル王国では天才少女として有名であった。


この世界の勇者の定義は、高い戦闘能力はもちろんだが、それなりの知識も必要であり、勇者精霊に認められて初めて勇者を名乗ることができた。


「忍び足?風魔法の応用技よ。上昇気流を発生させて少しだけ体を浮かせているだけよ。」

「知ってるって……というか今日は教えておいてやるよ。」


「うん?何よぉ~?」

アーネは、いぶかしげにルビの顔を覗き込む。


「見えてる……」

「は?何が?」


「だ~か~ら!スカートが捲れて白のパンツが見えてる……」

「あ、あ……あぁぁ!ば、ばかぁ!そんな大事なことは、もっと早く言いなさいよっ!」

アーネは、赤面しながら全力でスカートを押さえる。


「あはははっ!スカートでそれやってる時はいつも見えてたぞ!」

「あんたね~ブレイズアローで燃やすわよ!」

アーネは、馬鹿笑いしているルビの目の前で右の人差し指から炎を出す。


ブレイズアローは、攻撃魔法の一種で術者の魔力注入度合いにより威力を調整できる。

便利だが、やり方次第ではとても恐ろしい威力を発揮する火属性爆発魔法であった。


「待ったぁ!すまんっ!ごめん!先週は、水玉パンツだったなんて絶対に知らないから!」

アーネは、左手で握りこぶしを作りながらプルプルと震える。


「あ、あ、あんたねぇ!本気で塵にするわよ!このぉ!ブレイズアロー!」

アーネは、小さい火球を数発ルビの足元に向かって発射する。

「ひゃあーー!アーネ魔王軍の襲来だぁぁ!助けて~」


アーネは、真剣な顔でルビを見つめてくる。

「……それ……いくら記憶が無くても、この国では冗談にならないわよ……あんたが想像している100倍は、辛く苦しい戦いだったんだからっ!」


「……ご、ごめん……本当にごめんなさい……」


あまりにも縮こまるルビの姿に反省を見たアーネはため息をついた。

「はぁ……分かったならもういいわ。それより今日はフレイヤ女王様と謁見の日でしょ?いったい何事なの?」

「う~ん。分からん。母さんが謎の死を遂げたからって急に婚約破棄ってことはないだろうけどな~」


「マリアンヌ様…………わ、分かんないわよ~だってあんたって補助スキルどころか魔法や剣技も使えないわけでしょ。そんな無能なあんたが才色兼備な女王様と婚姻とか、かなり無理があるわよ。」


「うるさいな~いいから魔法で城の前まで飛ばしてくれよ。」

「はいはーい!婚約破棄されたら残念会やりましょうね~飛んでけ~」

アーネは、ニヤニヤしながら魔法詠唱を完了した。

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