第77話 帝都での予定
◆◇◆◇◆◇
ダンジョン・スタンピードを無事に終息させた後、事後処理を少々手伝ってから宿泊している高級宿屋に帰還した。
アリスティアが泊まっている部屋の扉をノックすると、白銀色の髪の絶世の美女が扉を開けて出迎えてくれた。
「ーーおかえりなさい、リオン」
「ただいま、リーゼ。思っていたより疲れた、って何だか寒くないか?」
「力を行使しましたので」
「なるほど。全員怪我は無いか?」
寝泊まりする部屋は別だが、護衛対象であるアリスティアが外出する際には護衛として付き従うようにしている。
スタンピードが起こっている間は、セキュリティの整った宿の中であろうとも、室内で警護するように指示を出していた。
そのため、奥の部屋にいるアリスティアの周りには、秘書であり専属護衛でもあるラーナ以外にもエリンとカレンがいる。
スタンピード発生の要である黒オーガの討伐後、残りの魔物を討伐しながら『
その時に簡単に報告は受けたため、全員無事だとは知っているのだが、一応聞いておく。
「大丈夫ですよ。相手が動く前に封じたので無傷です」
「それなら良かった。能力を使うほど強かったのか?」
「どうでしょう? リオンが欲しがるかと思い、生かしたまま確保するために使っただけですから」
「俺が欲しがる?」
「ええ。詳しくは襲撃者の姿を見たら分かります。アリスティアに報告する前に処理しますか?」
「そうだな……報告はすぐには終わらないだろうし、先に処理しとくか」
「分かりました。では私がアリスティアにリオンの無事を伝えておきますので、お先にどうぞ」
「分かった。あっちだな?」
「はい」
扉の隙間から冷気が漏れ出ている小部屋へと向かう。
扉を開けた先には、全身を氷漬けにされた襲撃者の姿があった。
「ふむ。凍った俺がいるな。俺が欲しがるって、そういうことか」
そこにいた襲撃者はスキルの力なのか、俺の姿をしていた。
襲撃対象の仲間に変装して近付くってのはありきたりではあるが、確かに有効な手だろう。
だが、今回においては運が悪かった。
リーゼロッテとはスキル的に常に繋がっているため、その感覚を通して目の前にいるのが本人かどうかが簡単に分かってしまう。
また、スタンピード中でも『念話』で定期的に連絡を取り合っていたので、どれだけ姿を似せようとも偽者だとバレバレだった。
「哀れだな……」
目の前の氷像に思わず哀れみの視線を向けてしまうが、その視線の先にいるのは俺の姿をしているので、ちょっと複雑な気分になった。
氷漬けになっているが、生きてはいるためスキルと記憶を奪うことが出来る。
アリスティアを待たせてるし、さっさと奪い尽くして処理するか。
オマエの力と情報は俺が役立ててやるから安心して逝け。
[スキル【変身】を獲得しました]
[スキル【模倣】を獲得しました]
[スキル【暗殺補正】を獲得しました]
具現化した喰手でトドメを刺してそのまま捕食させる。
強奪したスキルは予想通りな能力だった。
奪った記憶によれば、国内の裏の世界では結構有名な奴だったらしく、スタンピードで厳戒態勢だったヴォータムの中に入り込めるほどの腕があったようだ。
「まさか何も為せずに終わるとは思わなかっただろうな」
【復元自在】で冷気と室温を元に戻してから小部屋を出る。
さて、アリスティアに報告に向かう前に、手に入れたばかりのスキルの良い合成案が浮かんだので、膨れ上がったスキルの整理ついでに合成しておくか。
[スキルを合成します]
[【覇獣の戦闘本能】+【豪鬼剛体】+【暴虐】+【三度目の瘴食】+【剛毛鎧皮】+【強靭なる骨格】+【鬼帝膂力】+【金剛鬼身】+【金剛骨格】=【鬼神が如き金剛神躰】]
[【破滅の一撃】+【重撃無双】+【破衝拳】+【戦鬼の破拳】+【巨鬼の鉄槌】+【強撃乱舞】+【鎧甲圧殺】=【強欲覇王の撃滅戦葬】]
[【静止の魔眼】+【鬼ノ眼】+【重圧の魔眼】=【停止の魔眼】]
[【
[【覇動王威】+【王者の圧政】+【死王の暴圧】+【鬼気】+【鬼気王威】=【戦神覇気】]
[【重葬斬撃】+【兜割り】=【重葬兜斬り】]
[【高位鬼種の命精】+【滾る血潮】+【満ちる血肉】+【迸る巨鬼の生命力】=【鬼王の漲る命精血肉】]
[【形態変化】+【変身】+【模倣】=【千変万化】]
[【悪足掻き】+【小賢し鬼知恵】+【命乞い】+【死んだふり】=【
[【格闘の心得】+【斧術の心得】+【槍術の心得】+【剣術の心得】=【武術の極み】]
[【守護の心得】+【防衛の心得】+【盾術の心得】+【守護の構え】=【守護の極み】]
[【機先を制する】+【先制攻撃】=【先手必勝】]
[特殊条件〈守護の極み〉〈防衛戦完遂〉などが達成されました]
[ジョブスキル【
うん。良い感じだな。
ここ最近で手に入れた大量のスキルが一気に纏められてスッキリした。
今度こそアリスティアに報告しに行くとしよう。
◆◇◆◇◆◇
「ーーそうでしたか。死者を出さずに解決出来たようで何よりです。これもリオンさんのおかげですね」
「冒険者や兵士達皆の頑張りのおかげですよ」
「フフフ、そういうことにしておきます」
俺をスタンピード解決に派遣したアリスティア、延いてはゴルドラッヘン商会の成果に繋がると考え、重傷者を治療したことなどアリスティアが把握しておくべきだろう情報は隠さずに報告した。
死者が出ないように動いたことを知らされたアリスティアからすれば、今の俺の発言は謙遜の言葉にしか聞こえないだろう。
実際のところ、確かに謙遜の意もあるんだが、他の冒険者や兵士達のおかげというのも嘘偽りの無い気持ちだ。
「ところで、その黒オーガの素材はどうしたのですか?」
「頭部の方は討伐証明としてギルドに提出してきましたよ。戦果判定が終わり次第返還される予定です」
「そうなのですね。ちなみに、その素材の使用用途はおありですか?」
アリスティアがニッコリとワザとらしい笑みを浮かべてくる。
まぁ、その成り立ちからして貴重な素材だし、商会としては是非とも取り扱いたいところか。
軽く精査した感じでは、死してなお皮も骨も生前の特性を有しているようだった。
今のところは、
だが、ギルドに報告した内容が巡り巡って関係各所に広まれば、より良い買取り先が見つかるかもしれないし、素材を使って何かしら製作する可能性もある。
ーーよって。
「今のところありませんが、暫く素材特性を研究したいと考えています。具体的な扱いに関しては、それからですね」
俺もワザとらしくニッコリと笑みを返しておく。
視界の端でカレンが「うわぁ……」という顔をしているが気にしない。
「あら。それでしたら、研究が終わったらわたくしに一番に教えていただけませんか? その時に色々と助言出来ることがあるかもしれませんので」
「分かりました。その時はよろしくお願いします」
遠回しに断りを入れても、抜け目なく約束事を取り付けるあたりは、流石は商人というべきか。
「あとギルドから、素材の返還は明日以降になるとのことです。まだ事後処理もあるため、申し訳ありませんが、帝都に戻るのが少し遅れそうです」
「大丈夫ですよ。今回の件で商会が得た利益を考えれば、多少遅れたぐらいでは商会長も文句は無いでしょう。何より、わたくし自身がお願いしたことですからね。それでも文句を言ってくるようなら、お母様にお父様を折檻して貰いますので」
「ハハハッ。それなら安心ですね」
なんだか、家庭内の力関係が垣間見えたな。
ギルドマスターのアニータに聞いたところ、遅くとも三日以内には報酬を渡すそうだから、ヴォータムを発つのはそれ以降になるだろう。
三日でヴォータムを発つと計算するとして、帝都に着くのは……マップを見る限りでは、更に七日後ぐらいか。
シルヴィアとマルギットの二人と別れ際に、二ヶ月後に帝都で会おうと約束したのだが、到着は結構ギリギリになりそうだな。
アリスティアの護衛を受けて、途中から帝都まで遠回りのルートを行くことになったのと、今回のダンジョン・スタンピードがあったからギリギリになるのは仕方ないか。
帝都に着いたら冒険者ギルドに護衛依頼の完了の報告もしなきゃならないし、Sランク冒険者のレイティシアから帝都を案内してもらう約束もあるので、ギルドの方からレイティシアに連絡を入れてもらう必要もある。
だからギルドには必ず寄らないとならないだろう。
シルヴィア達の家にも連絡を入れなきゃならないし、【第六感】と【予見】の力なのか、帝都では他にも色々とありそうな気がする。
ま、何があろうとも俺のやることは帝都でも変わらない。
〈強欲〉らしく、貪欲に自分の欲しいモノを手に入れ、向かってくる敵は討ち倒していくだけだ。
☆これにて第三章終了です。
異世界系では定番?の奴隷を出して、襲われている馬車を助けて、スタンピードで締めました。
全体的にテンプレ多めの章でしたが、如何だったでしょうか?
テンプレながらも、何かしらこの作品らしいところを出せていたら幸いです。
次の更新日に三章終了時点の詳細ステータス(偽装ではない)を載せます。
二章終了時のステータス以上にゴチャゴチャしていますが、良ければご覧ください。
四章の更新はステータスを掲載する次の更新日の、その更に次の更新日からを予定しています。
四章では帝都という国の中枢に滞在するので、そのあたりと関わっていく予定です。お楽しみに。
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