記録No.4 相棒に愛でてほしい相棒

「ったく、本部も容赦ねぇなぁ…」


俺は爪楊枝を噛みながら愚痴っていた。

大体おかしい、訓練生を平気で派遣する気があるとか、正気の沙汰ではないと思いたい。

だがそんなこと言ってると訓練生が30機も敵機体を落とすとか普通じゃないと言われるので口には出さない。

なぜなら、ご最もだからだ。


「あ、ディー!」


おや、天使が降臨したようだ。

しかも天使は俺の胸に舞ってきた。


「…んふぅ〜…」


天使はふやけた笑みを浮かべながら、俺に抱きついてくれた。

にやけそうになるが、そのニヤケを爽やかな方の笑みに何とか替えながら話しかけた。


「お、シャロ。リズはどうしたんだ?」

「なんか違うお姉さんに引きずられてったよ、『訓練やだァァァァァ』って叫びながら」

「多分そのお姉さんって、エイヴリル少佐だな…あの人そんな一面があんのかよ…」

「ディーよりちょっと背がちっさくて、青い髪のポニーテールだった、綺麗な人だった」

「確実に少佐だな…まぁ、リズも少佐ではあるんだが」


あのリズのことだ、多分シャロを構いすぎたんだろう、そこを確保されたのだろう、愚かなり…

まぁ正直どうでもいいので、今のうちにシャロに色々と説明しておこうと思う。


「なぁシャロ」

「ん〜…なぁに〜?」

「ぐっ…い、いや、あのな、何日か後に派遣でちょっと居なくなるから、それを今言っとこうと思って…」


相変わらず高すぎる天使の破壊力に罪悪感を感じつつ唸りながら、何とか要件を伝えた。

そしてその要件を聞いた天使は、


「え?…な、なんでぇ…」


一瞬で涙目になった。


「やーだーやーだー…」


そして顔を胸に当てながらポコポコと打撃して来て、俺はかなりのダメージを受けた。

一応、背が小さいとか力が弱いとか少しあるが、シャロも訓練生なので、一応、本当に一応、体術や格闘技等はこなせるらしいのだが…目の前の少女、しかも己の弱さを隠そうともしない甘えん坊が、とても殴り合いとかできる気があまりしないのである。


「や、やだって言ってもなぁ…しょうがない事なんだ、別に帰ってこない訳じゃないから、な?」

「…それでも、不安…やだ…」

「う〜む…どうしても行かないといけないんだが、ダメか?」

「…じゃあ、帰ってきたら、何でも言う事聞いて?」


微妙に納得のいかない顔をしつつ、上目に要望を伝えてきた。

無論断るはずもなく、


「仰せのままに、なんでも聞こう」


俺は頭を撫でてやりながら、笑顔で答えた。

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