No.28 捕まっちゃいました!この人、ヤバい人です!


技術力の国に到着したアギー達。

そこは国というよりは工場と呼べる場所だった。


一行の前に突如現れた機械を搭載した魔獣、そしてマドボラ。


魔王達の隙をついてマドボラはアギーを誘拐し、残された魔王達を国ごと爆破した。



「あああ!!チクショウ!アタシを爆破なんてどこまでもバカにしやがって!!!」


瓦礫を灰に変え、その下から現れるフラマーラ。


「まさか国ごと吹き飛ばすとはな」

「この国すらも目的の為にはって事ね」

「まったく、随分と崇高な目的のようだな」


他の3人も無事のようだ。


「さっきの機械もそうだ。人間が入ってるなんてよ、何考えてんだ」


「運ばれてた人間はあの機械に使うためかしら。どちらにしても気味悪いわね」


フラマーラを襲い自爆した機械に組み込まれた人間の話をする二人。


「アウレンデントがこの街に来てから人間を感知出来ないのもそういう理由だろうな。ここにいる者は全てあのような姿にされたんだろうな」


「生きた物のいない国か。統治者の器の小ささが最も伺える部分が出たな」


テネバイサスとグレイシモンドは周囲を見渡す。


爆破により生まれた国の残骸のみで他には何もない。



その光景を映像越しにみて手を叩き笑うマドボラ。

「ギッヒッヒッヒ!あの爆発を無傷か!」

「あなた自分の国になんてことを!!それに、自分の国民にも!どうして……!!」


アギーは怒った。

彼女は光の壁に囲われた場所で、宙に浮かされた状態で閉じ込められていた。


「はあ?国?あそこはただの実験場だ、まあ面白い遊び場だったが。これからもっと面白い事になるから良しとしよう」


マドボラが光る板を腕から発生させそこに何かを書き込んでいる。


「ああ、あと国民だが、アイツらは俺の国の奴じゃねぇ。他の国からかっぱらってきた奴らさ」


「え?」

アギーは唖然とする。


「俺の与えられた国にも多少は人がいたんだが、全員死んじまってさ。まだ実験の為の環境整備すら終わってないのによ。整備やちょっとした過程で生まれたガスや液体が身体に合わなかったんだろうな〜」


こめかみをポリポリとかきながらまるで気に留めるようすもなくそう話す。


「そうだ!お前ティターノの所にいったんだろう?どうだった?あそこの兵士は!」


突然質問されるアギー。


「み、みなさんとても優しい方でした。でも記憶が曖昧で……」


アギーがそういうと嬉しそうにマドボラは笑う。


「そうかそうか!記憶が曖昧か!ヒッヒッヒ!」


「っ!もしかしてあなたが!」


マドボラは嫌味たっぷりな笑みを浮かべる。


「この薬さ。人の記憶に作用し余計な過去を消し去る。そしたらどうだ?過去もねぇ奴は目の前の事にすがるしかねぇ!なんせそれしか自分を形作るものがねぇんだからな!ほら!従順な兵士の出来上がりだ!」


そう息巻くマドボラ。


「だが、それでも連中の根っこにある感情までは奪えない。ティターノの甘ちゃんがうつっちまった、やはり感情は不要だ、兵器には特にな。だから俺はこれを開発した」


彼は手を叩く。

すると先程フラマーラ達を襲った兵士が現れた。


「人間を動力源に動く機械さ!人間の脳を基盤として命令を処理する。なんで人間をって?この燿の魔力は機械に閉じ込めるには不安定でな。人間に少し俺の力を付与して暴走を抑えているのさ」


彼はとある映像をみせる、イビルハンガーの幹部たちだ。


「ほら、コイツは覚えてるだろ?これは俺がアドバイスしてやったのさ」


「あなたは一体どこまで酷い事をしたら!」

アギーが腕をブンと振るとその勢いでぐるぐると宙に浮いた身体が回る。


「酷い事?ああ、お前の価値観で言えばそうなのかもな。でも俺の価値観で言えば俺はやるべきことをやっているだけだ」


笑っていたマドボラは声を低くしてそういった。


「やるべきこと?」

ぐるぐると回り続けるアギー。


「魔王様は、ああこの世界の魔王様だが、あのお方は遥か先をみている。あの方からしたらこの世界そのものが消耗品さ。考えてみろ、なんでこんなに兵力を増やそうとしてる?食料を薬を使って無理やり増やす?もうこの世界を支配してるんだぜ?」


「そ、それは魔王様方に備えて……」

「ヒッヒッヒ!あんな抜け殻に何が出来んだ?」


「そんな!皆さんものすごい強いんですよ!」


魔王達を映す映像ではフラマーラが暴れている。


「クソッタレッッッ!!!どこ行きやがった!!」

彼女が手を降るとその方向数kmにある有象無象は蒸発してしまう。


その様子をみて頷くマドボラ。


「確かに、純粋な戦闘力では連中は無視できない。実際俺があのまま戦っていたら勝てる見込みはゼロだ。だがそれだけじゃねぇんだ、戦いってのは。だからお前だ」


マドボラはフワフワと浮くアギーに顔を向ける。


「え?私ですか?というかなんで私は浮いているんですか!?」


「質問を連続させるな、一つずつ答えるぞ、いいか?まず一つ、お前をこうやって捕らえた理由はお前の能力が最も厄介だと思ったからだ。そしてお前を浮かせているのもその能力に対処するためだ」


彼女の質問に対しマドボラはそう答えた。


「え?私の能力が一番厄介って?ただ植物さんの力を借りてるだけですが……」


「自分の能力をここまで過小評価できるなんてな、俺を見てみろ、自分は超スゴイ!天才だって信じて止まないんだぜ?まあいい、食料を短期間で大量に生産できるその能力は戦争において重宝されて当然のものだ。もちろんそれだけじゃない」


マドボラはティターノの画像と経済力の国で戦った破壊者の映像をみせる。


「ティターノの鉄をも溶かす炎による攻撃を防ぎ、空気すら凍りつく空間で氷の大地のような破壊者の外装を破壊する植物を生み出せる。更には種も必要とせず触れた部分から植物発生させる事が可能で、その植物の種類は現存しないような空想の植物でも可能と来た、もう何でもありだな」


そう言って彼はアギ―に振り返る。


「とまあ俺が知りうる限りではこんな所だ。この施設には自然由来のものは一切ない、まあそれでも意味があるのかは不明だがな。その檻も触れなければ植物は発生させられない、という仮説に基づいて作ったものだ」


「あ、本当です。植物さんが出てきませんね」


アギーは試しに檻の壁に向かって手をかざすが、そこから植物は発生しない。


「それは何よりだ。ひっひっひ、俺がお前と戦って勝つ見込みなんて無いからな。にしても興味深い能力だ、本当にそれは植物を生み出しているのか?俺が仮説しているのはエネルギーを植物へと変換させている、だが。それとももっと根源部分に関わる能力なのか?ああ、出来る事なら色々と調べたい」


マドボラは興味深そうにアギ―をみる。アギ―は嫌そうに体を逸らしなるべく相手の視界に自分が映らないようにした。


「さて、随分とおしゃべりをしたな。そろそろ次の行動に移らねぇとな」

アギ―に背中を向け、マドボラは画面を切り替える。


「さぁ行ってこい!俺の自慢の軍隊たちよ!!蹂躙しろ!!」

彼が光の板を空中に発生させそれを操作する。


「一体こんどは何を……?」


「ひっひっひ、裏切り者の粛清さ」



一方その頃グラドは魔王との話をしていた。

「グラドよ、最近は随分と調子が良いようではないか」


「魔王様、なんの御用でしょうか」

魔石越しに話しかけるグラド。


「いやなに、近況が気になったのでな」

「魔王様が把握されている通りかと」


グラドは冷たくそういう。


「貴様の働きには随分と助けられた。貴様は優秀だ、だからこそ解せぬな。なぜあの者たちに加担した?あの者たちは一度我と戦うことを諦め、自ら封印される道を選んだもの達だぞ?」


「そうかもしれません。ですが今回の彼らは違います、明確に」


グラドの話をきいて魔王は笑う。


「フン、あの召喚士の娘か?それならば先程マドボラが捕えた」


「なっ!?流石、一筋縄ではいかないですね」

驚くも冷静さをすぐに取り戻すグラド。


「さあ、そろそろ始まる頃だろう。残念だが貴様の国は終わりだ」

外が何やら騒がしくなる。


「そうですか。ならばこれで、支度をするので」

グラドは魔石に背を向ける。


「支度、なんのだ?」


「貴方との戦支度ですよ、魔王」



同時刻、ティターノ治める武力の国の防壁前。

「ティターノ様!あれは一体?」


「皆の者!!覚悟は決めたな!民を守り抜け!」

ティターノはその巨体に見合う大剣を掲げる。


「魔王との戦だ!!!」


彼らの国に灰色の大軍が押し寄せる。

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