第8話 ジークフリート=グリーク王太子殿下
午前の母国語、経済学、政治学の三限が終わり、お昼休みです。
私は畏れ多くも、ローズマリー様と何と王太子殿下とご一緒に、学食に向かうこととなった。
午前中の単元の間の休憩中に、クラスメートが我先にと自己紹介しに来てくれたりお誘いも受けたけど、慣れるまではローズマリー様とご一緒ということになったのだ。
さすがに名前と顔を一斉に覚えることはできないので、ローズマリー様が仕切って下さって助かった。
けれど。
「エマでございます。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません、ジークフリート=グリーク王太子殿下。更にお二人の貴重なお時間をいただき、恐悦至極に存じます」
そうなの、殿下は五年生で一つ年上。せっかくの二人きりの時間に邪魔するのは忍びなく…早く学園生活に慣れよう。
もちろんカーテシーしてます。これほんと、体幹大事。
「エマ嬢、そう畏まらなくてもよい。ここは学園だ。それに私も公務が忙しく、国の宝である聖女のそなたと会うことが叶わず、礼を欠いている。今日はようやくお会いできた」
「礼を欠くなど…私などに、とんでもないことでございます」
殿下も一瞬、驚いた顔をしたように見えたけど…一瞬なので、気のせいかな?今は穏やかに笑っておられるし。金髪碧眼の完璧王子よ…。
「ふむ、ここで立ち話をしていても時間がなくなるな。そろそろ向かおうか」
「「はい」」
私はお二人の一歩後ろを歩いてついて行った。
はあ…絵になるお二人…。
やっぱりブロンドって鉄板よね。窓から入ってくる光に反射して、お二人とも更にキラキラ…。
人間、もちろん中身が一番大事だと思ってるけど、ここまで美しいカップルを見ていると、これはもうこれだけで幸せというか何というか…。
「…様、エマ様?」
しまった、トリップし過ぎた。
「はい、すみません、ローズマリー様。何かございましたか?」
「いえ…もうすぐ食堂に着きますので…」
「ありがとうございます、すみません、少しぼうっとしてしまいました、お恥ずかしいです」
「そうなの?転入初日だから、気疲れしたかしら?」
心配させてしまった。
「いえ、大丈夫です、ご心配ありがとうございます。重ねて恥ずかしながら…前を歩かれるお二人があまりにお美しく、しばし見とれてしまいました」
気遣いされても申し訳ないので正直に話してみたら、シン…とした間が広がる。
(あ、あれ無反応…まずかった?…ん?)
二人の顔を見ると、間違いない、今回は完璧に二人揃ってめっちゃ驚いてる!!そして固まっている!!!え、何で?!
「あの…申し訳ありません、不敬でしたでしょうか…」
「い、いや、そんなことはない、少し照れるが嬉しいよ、なあ、ローズ?」
先に殿下が復活した。きゃっ、ローズですって!
「ええ、恥ずかしいですけれど…ありがとう、エマ様」
はにかんだ笑顔のローズマリー様、最高です!
でも…不敬じゃないなら良かったけど…そうじゃないなら逆になぜあんな顔を?褒められ慣れてないとか?いや、そんなことはあるわけないか。
「エマ様、どれになさいます?」
食堂に着き、ローズマリーさまがトレーを取って下さった。おお、日本の学食と同じ感じなんだな!
楽しみ~!
「お二人のオススメはありますか?」
「私はAセットのビーフシチューだな」
と殿下。
「私はBセットのサーモンのムニエルですわ」
とローズマリー様。
えっ、すごい迷う…けど、うーん!
「今日は、ローズマリー様オススメの、ムニエルにします!」
「まあ、嬉しいわ」
女子二人で盛り上がる。
「なかなか悔しいな。エマ嬢、シチューも本当に旨いぞ?」
「はい、次の機会にいただきます」
「そうか…」
殿下はちょっとしょげて、ローズマリー様がフォローしている。優しい。こう見ると、まだまだ年相応でかわいいよね。
「エマ様、あちらでいただきましょう」
「はい」
ちょっと気になることはあるけれど。ひとまず腹ごしらえです。大事!!
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