私は仕事がしたいのです!
渡 幸美
第1話 プロローグ
「エマ、気分はどう?」
「ありがとう母さん、もうかなり楽よ」
「良かった…毎年流行る風邪だけど、今年は重くなる子が多くて…エマまでいなくなったりしたら、母さん生きられないわ」
「心配かけてごめんね」
「ううん、本当に良かった!何か食べられそうなものを持ってくるわね」
「ありがとう」
私はエマ。平民なので家名はない。私の事を愛してくれている母と二人暮らしだ。母子家庭ってやつね。父は私が5歳の時に事故で亡くなった。ありがたいことに小さな庭付きの家と、母の刺繍の仕事があり、贅沢をしなければ何とかやっていけている。
「そう…私はエマ…12歳よね」
そう、エマなのだ。普段は健康な12歳!だけど、今年の冬は流行り風邪にやられてしまい、一週間ほど寝込んでしまった。そして熱に魘されながら見た夢…あれはいわゆる前世よね。しっかりと意識をしていないと、まだまだ混乱してしまいそう。前世の私、アラフォーだったし…
前世の私はそう、日本という国の共働き家庭の主婦で、当時二人に一人はかかると言われた大病にかかり、その世界では若くしてこの世を去ったのだ。
そして、今の私は…
「いわゆる、異世界転生ということ…かしら」
前世で大病を患った私は、結構な長い間入院していた。その時に娘が「最近ハマってるんだ❤️」と、悪役令嬢ものや転生ものの話、異世界やらファンタジーなどの本をたくさん持ってきてくれた。
もう、わりといい年だったし、ライトノベルとかってついていけるかしら…と思ったけれど、さらさら読めるし、深いものも多いし、スカッとするしであっという間にハマった。かなりいろいろと読んだ。乙女ゲームそのものとかはさすがにやれなかったけど…本の中で何となく、スチルとか好感度とかの仕組み?は理解した…と思う。
そして、現世。
エマとしての人生を振り返ると、いわゆる地球ではないわねと思う。
そう、魔法のある世界。
それから私は、ベッドから降りて小さな鏡台の前に立って、自分の姿を写してみる。
「うん…かわいいわよね…びっくりするくらい」
私エマは、ピンクブロンドのふわふわな髪で、蕩けるようなハチミツ色の瞳を持ったかなりの美少女だ。いわゆる庇護欲を駆り立てる…クリッとしたかわいさの。
前世で読んだ話も全部覚えている訳ではないし、そもそもここがそういう異世界かどうかも分からないし、ゲームだとしたら全くシナリオとかもわからないけれど。
「ピンクって…怪しいわよね…」
ヒロイン率が高くない?
気のせいだといいけど…
気のせいであってほしいような…と、ブツブツと考えていたら、コンコンと扉をノックして母さんが入ってきた。
「エマ、動いて大丈夫?はい、パン粥よ」
眩しっ!輝く笑顔で持ってきてくれた。
結構な美人さんだ。そりゃそうだ、私の母。
髪色は同じで、瞳の色が違う。母はエメラルドグリーン。儚げな美女。
「ありがとう、ちょっと動くくらい大丈夫よ!おいしそう、いただきます!」
母さんのパン粥、ちょっと甘くしてあって美味しいのよね!大好き❤️
いろいろと過ることはあるものの、ひとまず腹が減っては戦はできぬということで。
病気の時に、人が作ってくれるご飯てありがたいわあと12歳らしからぬ感想を持ちながら、元気にペロッと完食致しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます