第2.25話 共同作業
今日は岡林先生が来ていた。
「スタート画面があらかた出来ました、次はボス関連ですかね」
口頭だけで進捗状況を伝える。岡林先生には、作品としてある程度出来てから、評価して貰うつもりだ。
「私はUIについて調べています」
それだけ言うと、秋晴さんはすぐにパソコンに向かった。
ホワイトボードには、将棋とオセロの定石が書いてある。岡林先生が描いたものだ。今日は何の定石を描くのだろうかと思っていたのだが、どうやら全部消すようだ。特に勿体ないとも思わないが。
ホワイトボードをその名の通り真っ白にした岡林先生は、お知らせがある、と言いながら、俺達の方を向いた。
「今週の金曜日、つまり明後日はここを使えない」
なるほど、だからホワイトボードを綺麗にしたのか。
「料理研究会が使うことになった。ここは間借りしている状態だからな、部活動優先なんだ」
理由を聞く前に、岡林先生が答えた。
料理とパソコンになんの関係が、とも思ったが、まぁ、レシピをまとめたりするのだろう。さすがにノートパソコンのかき揚げを作るとは考えにくい。
「仕方ないですね」
秋晴さんも頷く。
岡林先生はお知らせを伝え終わると、すぐにどこかに行った。
「それでどうする、休みにするか?」
休みにするかという問いは、休みにしようという自分の意思表示でもある。おそらく、第一コンピュータ室はいつも通り、コンピュータ部が使うのだろう。他にパソコンが二つ以上置かれているところといえば、せいぜい職員室くらいしか思いつかない。今から作業が出来る場所を探すのは面倒だ。
「カフェとかカラオケで作業するっていうのもよく聞くけど」
なるほど、そういう手もある。しかし、人の懐事情は千差万別である。残念ながら俺には、そこまでのお金を持ち合わせていないのだ。それに、一度パソコンを家に取りに帰らないといけない。時間的にも厳しいだろう。
「学校の後からというのはちょっと難しいんじゃないか」
秋晴さんも、元からどこかでやろうとは思っていなかったようで、だよねと頷いた。
とはいえ、このままいくとゴールデンウィークを挟んでしまう。明日は祝日であり、たしか、来週も木曜日と金曜日の2日間しか無かったはずだ。
さすがに一週間も休むのはまずいかもしれない。
「作業通話ってどう?」
悩むか悩んでいたら、秋晴さんが提案してくる。誰かと一緒に何かをするということに慣れていないため、こうやって提案してくれるのはありがたい。
「それでいこう」
やったことはないが、お互いのパソコンの画面を見せ合うこともできる。というか、これならわざわざ第二コンピュータ室に集まるのも必要ないのではないだろうか。いやそれは言わない約束というやつか。
「それでいつにする。俺はいつでもいいぞ、さすがにずっとというわけにはいかないが」
少しの沈黙が訪れる。こういう場面は苦手だ。
「土曜か日曜日、どっちかの昼でどうだ」
特に指定が無いのだ、適当に近い日にちにすればいいだろう。
「じゃぁ土曜日で」
ということで、作業通話を土曜日の昼からする、ということが決まった。後は何をするかだ。
「スタート画面に乗せる操作方法、土曜日までに描けるか?」
「それは今日中にやろうと思ってる。スタート画面のUIは土曜日までにやるつもり」
であれば、それを実際に組み込んで、違和感がないかの確認だ。それでスタート画面は完成だろう。
「わかった、作業通話の時にできたものを送ってくれ。それをゲームに落としこんだら、実行結果を送る。一緒にテストプレイしてほしい」
分かったと言いながら、秋晴さんが頷く。
もう一つ、メデューサの動きを実装して、それもテストプレイしたい。このゲームの面白さに直結することなので、秋晴さんにもやってほしい。
そして、メデューサの動きを考える前に、攻撃方法を考えたい。それは今日やってしまおう。
土曜日にやることと、それまでにやることが決まった。後は手と頭を動かすだけだ。
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