第2.22話 共同作業

 風呂で頭を洗いながら、シューティングゲーム作製の事を考えていた。休憩時間でも頭を働かせるのは、悪い癖である。とはいえ、そう簡単に治るものでもない。それに、ゲームを作る上では、それなりに必要な癖なのかもしれない。

 そろそろ背景とメデューサの絵が出来そう、と秋晴さんから聞いたので、それに関するプログラムを考えるつもりだった。

 背景はただ描画するだけなので、そんなに考えることは無い。霧を途中で出すなり消すなりするが、それも難しくはないだろう。考えるべきなのは、ボスであるメデューサだ。

 しかし、頭の中で膨らんでいるのは、スタート画面だった。

 矢印キーで選択して、エンターキーで決定する。これだけだと、操作方法に問題は無いように思える。しかし、シューティングゲームで飛行機を動かすのは、WSADの四つ、他のゲームでもよく使われるキーだ。スタート画面とシューティングゲームで使うキーが違うのは、やりづらいかもしれない。統一したほうがいいかもしれない。

 そして、芝竹君に操作方法を教えていた時を思い出す。

 そこまで難しい操作ではないが、スタート画面に操作方法を乗せてはどうだろうか。どうせ身内でやるだけだから口頭だけで問題はないと、割り切ってしまうのもありだ。しかし、簡単な説明文を描画するだけなら、そんなに労力はかからないはずである。

 のぼせないように早めに風呂から上がり、夕飯もさっさと済ませる。

 野菜ジュースを入れたコップを持って、自室に戻った。デザートの代わりだ。

 勉強机に向かい、ノートパソコンを開く。

 スタート画面からシューティングゲームへ切り替わるのを、もう一度確認する。特に問題はない。

 先にスタート画面で使うキーの変更を済ませた。上矢印キーをW、下矢印キーをSに変えた。いちおう実行して確認する。

 次に操作方法を書くのだが、これが思ったよりも厄介だった。

 上に進む:W、下に進む:S、右に進む:D、左に進む:A、弾を発射:Space、と縦並びに書いてみたのだが、なんとも味気ない。UIをさぼると決めたのは俺だが、少しくらいは考えてみてもいいんじゃないかと思ってしまう。

 文字のサイズを変えたり、色を変えたりしてみたが、しっくりこなかった。

 結局、秋晴さんに頼ることにした。絵が描けない俺でも、無料のソフトを使えば、多少はマシなものができるかもしれない。しかし、餅は餅屋という言葉がある。ここはひとつ、腰を折って頼んでみることにした。

 返信は、数分ほどで返ってきた。操作方法だけでなく、他のUIも描いてくれるとのこと。そして、背景とメデューサの絵を共有フォルダにアップロードしたということも、同時に伝えられた。

 共有フォルダを覗いてみる。どうやら、メデューサの色が、ほんの少しだけ明るくなっているらしい。背景の上で表示させてみて気づいた。

 確認したという意味も込めて、さすがだなと送った。

 やはり、動かす絵があるというのは、いいものである。今までは、丸とか四角とかの図形を動かして、淡々と勉強してきた。多少なりとも達成感はあったが、楽しいと感じるようになったのは、シューティングゲーム制作を始めてからだ。

 さて、背景とメデューサ、どちらのプログラムを先に書こうか。

 すでに頭の中では、どちらのプログラムもある程度組み立てられていた。

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