僕、今日卒業します。~1つ同じ屋根の下~
おにわら93
第1話 早くに卒業することがそんなに偉いの!?①
「童貞や処女の卒業は早ければ早いほど良い。」
現代ではこれが世の中の童貞・処女の卒業に対する価値観である。
やっぱりはじめはちゃんと好きな人と卒業したいよねなんて言ってた人たちも――
いや、むしろそういう奴らに限って年齢を重ねるにつれてこの価値観におびえるがごとく、ただ自らの性欲に任せたまま、どうせいずれ破局するであろうしょーもない相手としょーもない卒業式を執り行ってしてしまうのである。
何事もはじめが肝心であるということは親やら学校の先生やらに散々言われてきたのにも関わらず、テキトーな卒業式を行なってしまうから本来尊い行為であったものが尊厳を失い、セックスフレンドだの浮気だのといった自分がモテていると勘違いしている性欲まみれ人間の自業自得極まれない事態に発展してしまうのだ。まぁ、ざまあみろという他ない。
しかし!わたくし小野滉志(おの こうし)はそんな早さ勝負のくだらない価値観に動じてしまうことなどは絶対にない!私はなんとしても本当に好きな人と童貞を卒業することをここに宣言します!――――――
――――ピピピピ!ピピピピ!ピピピピピピビ!
目覚まし時計を止めるためのボタンを押したときの最後の音だけ割れるのはなんなんだ。というか、夢の中で何やってんだ俺は。
3月31日。まだ冬の寒さが残る気温なのにもかかわらず、天気だけは春まっただ中の快晴。窓から差し込んできた朝の日差しとともにベットからその体を起こして今日も1日を始める。
小野滉志19歳。高校三年生の時に受験に失敗し、一年間の浪人生活を経験するも見事キャンパスライフをゲットした男である。
3月26日に大学生活を送るためのアパートに入居し、昨日ようやくすべての引っ越し作業が完了。今日はバイトデビューの日という忙しくも充実した大学生ライフのスタートを切っている。
バイトは今流行りのデリバリースタッフ。
ここで勘違いしてほしくないのは、俺は決して流行りだからという単純な理由でバイトを決めてしまうような男ではないということである。
このバイトの魅力の一つは、言わずもがなそのシフトの融通の利きやすさ。
そして、一番の魅力といえば髪型・ピアスが自由であること!
俺の金髪ツーブロック七三分け両耳ピアスという自己主張強めのスタイルをも受け入れてくださる条件を設けてくださったその寛大さに心惹かれてこのバイトにしたのだ。
そんなことを考えながら身支度をしていると初出勤の時間が迫ってきているではないか。
俺は500mlのペットボトルに入った飲み残しの水を一気に飲み干し、早々と部屋を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます