「おまじない、効いたみたいだね」

「えっ……？」

　私の困惑が、口からそのまま出ていた。

「今日ここに来ますように、あたしの言葉に頷いてくれますように、って、おまじないしてたんだよ」

　そう言った仁美の蕩けた顔を見て、思わず息が漏れた。身体が沸騰したみたいに熱い。

「そんなの、しなくても良かったのに」

「え？」

「私のおまじない、効いたんだね」

　おまじないは、漢字で「お呪い」と書くらしい。かわいい響きをしているくせに、呪いという漢字を携えているなんて。その行為自体を生々しく表しているようだ。

　ずっと小さい頃からやってきたおまじない。私の大好きな仁美。

「ね、仁美。早く聞かせて」

　愛情をたっぷり込めて、頷いてあげるから。

（300文字）

2024/09/07

#Monthly300

（ @mon300nov ）

第21回お題：まさか

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