嘘を纏う

 裾が膝で踊る。今日のために買った赤いワンピースは、私の歩きに合わせてふわふわと揺れた。

 クリスマスにセッティングされた飲み会には、マキと同じサークルの男子とその友達も来るらしい。これが合コンか、と他人事のように思いながら手帳に書き込んだ。もうすぐ待ち合わせ場所に着くというのに、全く実感がない。

 それでもこのワンピースを着ていれば、新しい出会いに浮かれているように見えるだろう。それでいい。

 行ったって、恋ができないのは分かっている。いい加減忘れなよ、と何度言われたか分からない。でも仕方ない。あの人しか好きになれないんだから。

 みんな私の気持ちなんて分からない。だから今日も、新しい恋に浮かれたふりをする。



(300文字)


2023/12/02

#Monthly300

( @mon300nov )

第12回お題:装う



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