分身
二階からの景色は今日も変わらない。古びた木造アパートは風がなくても軋んでいるように感じる。雀が電線にとまり、目の前の公園からは子どもの声がしている。平和だ。今日も平和なんだ。
うまくもない煙草を吸って吐く。雀が木に飛んでいくのが見えた。おれも背中の羽を動かしてみる。バサバサと音がするだけで、ちっとも飛べやしない。艶のない羽は所々抜け落ちている。こんな羽で飛べるわけがない。
ちらと振り返ると、おれの分身はまだ横たわっていた。いや、羽があるおれのほうが分身なのか。よく分からないが、間抜けなおれの寝顔を見ながら、おれは煙を吐いた。
西日が眩しい。畳の上におれの影が伸びていく。それは不格好な十字架に見えた。
(300文字)
2023/08/05
#Monthly300
( @mon300nov )
第8回お題:鳥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます