異世界エイナール・ストーリーⅡ 闇剣士クロンの復讐記

七霧 孝平

プロローグ

とある森の中、剣の一閃が放たれる。


その一閃はモンスターを切り飛ばし木に叩きつけた。


青年、いや少年とも呼べる人物は、自分ほど大きいその大剣を背負いつつ、モンスターを引きずりながら森を抜けていく。


森の奥の小さな村。少年はそこに向かっていく。




「ほら」


村につくと少年は、モンスターの死体を見せるように投げる。


それを見た村人たちは「おお」と驚きの声を上げた。


「あ、ありがとうございます。討伐していただけるとは」


村長が少年に微笑みながら話しかける。少年は一瞬照れた様な表情を浮かべるがすぐに表情を戻すと。


「……依頼だ。報酬が貰えればそれでいい」


そっと村長から目を逸らした。


「そうですか。ではこちらを」


村長から袋にいくらか入った硬貨を受け取ると、少年は立ち去ろうとする。


「お待ちください。もしよろしければもう一つお願いがあるのですが……」


村長が少年を止める。それに少年が振り向くと、村長の後ろから別の老人が近づいてきていた。


「メ、メル様はワシが! ぐううっ」


老人は腰を擦りながら苦しむ。


「あれは?」


少年は村長に問う。


「彼は『ジライ』さん。君と同じく旅人らしいのだが……」


村長は老人ジライを見る。ジライも村長を見ると大声を上げた。


「こんな小僧に頼らなくても、ワシ一人でメル様を助けれるわ! ……アタタ」


村長はやれやれと首を振る。


「なんでも連れの少女をモンスターにさらわれたとかで。自分一人で助けに行くと言ってはいるがあの通りというわけです」


「そうか……」


少年はジライに近づく。


「爺さん、その子の救出、俺が引き受けよう」


「いいと言っておるじゃろ! それに――」


ジライは少しバツが悪そうな表情をする。


「――依頼するほど金もないわい」


その答えに少年は苦笑した。


「報酬はさっきの村長の報酬でまけてやる」


「ぬ。ぐううっ。わかったわ小僧! ……メル様を頼む」


「ああ」


ジライは折れ、少年に少女救出を託す。


少年はジライにいくつか質問をし、村を出発しようとした。


「待て小僧。お主、名は?」


その時、少年は自身がまだ名乗っていないことに気づいた。


少年のような背丈と顔でありながら、巨大な剣を背負い、漆黒の鎧を身にまとった少年。その名は――


「俺は『クロン』だ」



これは少年クロンと一人の少女の物語。

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