第21話 悪魔の正体 その2
「うン? お前、そこの男に造られたんじゃないのか?」
「違います! 私は生まれた時は一人でした!」
話が噛み合わない。ビルデはたしかに初めて会った時も誰かと一緒ではなかった。しかし、この悪魔はあたかも自分が造られた存在かのように話す。
「よく分からないナ、俺はその本の作者によって造られた。お前は誰に造られタ?」
「知りません! それが知りたくてここにいるんです!」
ビルデは泣きそうになりながら叫ぶ。完全にパニックになっている。
「悪魔は死んだ生物の魂を凝縮したものから造られル。それ
「分かりません……私は一体――」
「お、おいビルデ!」
ビルデがフラッと倒れそうになったので、俺は滑り込んでビルデを受け止める。
「ふム、少し興味が湧いてきタ。そこの同族だけならまた来ても構わないゾ」
「そんなこと許すはずがないだろ! フェイ、図書館に帰してくれ!」
「いいわよ、さっさとビルデをベッドに移した方がよさそうだしね」
フェイは左手を掲げると、俺等を図書館へ戻した。
俺は戻った瞬間に図書館を飛び出し、宿屋のベッドにビルデを運ぶ。ビルデはベッドに置いたタイミングで目が覚め、辺りを見回していた。
「あれ……私、気絶しちゃったんですか。すみません、せっかく協力してもらってるのに」
「気にすんな。それより気分はどうだ?」
「まだ混乱しています。一体私は何者なのか、更に謎が深まっちゃいました」
ビルデは体を大の字にしてベッドに転がる。疲れているのだろう、声にも疲労が浮かんできている。
「まあ謎が深まったというのはある意味当たり前だ。何も知らなかったのが少しは知ってるに変わったんだからな」
「そういうもんですかね。まあ、ちょっと今は一人にさせてください」
ビルデは追い払うような手つきをする。俺達は仕方なく宿屋の外へと出た。
「あいつ大丈夫かな。病んじゃったりしないよな?」
「ないでしょ。あの子なんだかんだ強いし」
俺達がしばらく待っていると、ビルデが突然宿屋から飛び出してきた。何故か典型的な魔法使いの格好をしていて、花がついている魔法帽を身に着けている。
「どうですかお二人共! この格好、可愛くないですか?」
「ビ、ビルデ? 悩んでたんじゃなかったのか?」
俺はあまりにビルデのギャップが凄すぎたので、動揺を隠さずにはいられなかった。
「色々考えてみたんですが、旅しながらゆったり知っていけばいいかなって思いまして。それより、新しいスキルが使えるようになったんですよ!」
「ほらね、心配要らなかったでしょ?」
「……そうだな」
俺は苦笑いしつつも、内心ホッとしてビルデに駆け寄っていった。
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