ボクノソナタ

○○○

序章 開幕(0話)

 ――深夜一時

 ――教授宅―――――――――>麻雀卓にて


 トン!!


「ツモっ!嶺上開花リンシャンカイホウ!!――三色ドラ4、四〇〇〇・八〇〇〇です」

 「なっ!」

 「ちっ!」

 「すごっ!これで嶺上リンシャン三連続」

 「うわぁ……えげつないな……。まぁたオマエの一人勝ちじゃん……」

 「流石ですね!小南こみなみさん」

 「ありがとう吉原よしはらさん」

 「やっぱ小南は何やっても勝つんだよなぁ。失敗とかしなさそうだよな」

 「そうかなぁ………」


 そんなことはない。

 それは自分が一番理解していることだ。何をやっても勝てる訳じゃない。何をやっても失敗しない訳じゃない。

 完璧な人間なんてこの世には存在し得ない。

私はあの日それを思い知らされたのだ。


    調 逆 僕 次

    査 光 孤 の

    さ が 島 満

 夜  れ 始 で 月

 烏  た ま 再 の

 P   si る び 夜

      お


 長野からはるか南へくだった海上を一隻いっせき漁船ぎょせんが少し古ぼけたエンジン音を周囲へと響かせなが進んでいた。

 見渡す限り朝霧に包まれ、前方の島影は黒い染みのように見える。他の全ては純白に染まっていた。

 漁船のデッキでは無精髭をはやした中年男性が縁により掛かり紫煙をふかしていた。

徐々に姿を見せつつある前方の島影をウンザリしたような表情で見つめていた。


 「――まったくぅ……世間じゃ楽しい楽しいゴールデンウィーク真っ盛りだっていうのに……なんでこの私がわざわざあんな島に出向かねばならんのだ?」


 そう言って吐いたタバコの煙は、すぐに朝霧に混ざって見えなくなる。

 

 「仕事でしょ」


 私はあの日、教授の仕事で陽陰島に向かっていた。





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