虚無


 「俺たち村人は自分の意志で話したり動いたりすることができない」



 最初はそれになんの疑問も抱かなかった


 勇者「あいうえ」にセリフを言う それだけが頭にあった


 ただ世界が始まってから数時間が過ぎる頃には「自分」について考え出した。噴水の周りをランダムで歩かされる日々。ひたすらに虚無が俺を襲う。

 

(なぜこれだけの役目しかない俺に自我があるんだ?)

(ゲームがクリアされた時俺はどうなる?)

(もしゲームを途中で飽きられてしまったら?)

 

 考えたところでどうしようもないことをひたすら自問自答し、無限に続くような時間を潰す。


 この世界は5分で朝と夜が入れ替わる。もう朝日を見るのは120回目だ。これほど時間が経っても勇者がやってこない所からするに俺はゲームの中盤〜終盤あたりの村にいるのだろう。


 そんなことを考えながら今日もいつかはこの村に来る勇者のことを考え自分のセリフを頭の中で読み返す。


 

 「噴水を見てると癒されるだっぺよ!

     あんたも一緒に癒されるっぺ!」

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