第22話 ドMの兄に上から目線の許嫁

 久々に楽しい下校に風景な気がする。ただ一ついつもと違うのは…、


「おい!悟吏!許嫁の私を煩わすつもりか?」

 兄は美優になった恋歌お姉さまにブチギレられていた。


「でも、美優。買い物に行かないと今日で食材が切れてしまうんだよ。だから、少し時間をくれないか?」

 理由を説明してお願いをしているみたいだ。


「今日は上機嫌だからな、3分待ってやる。それまでに買い物を済ませて戻ってこい!死にたくなければな!」

(お姉さま?3分じゃ、猛ダッシュしても間に合いませんよ?)


「美優。10分は欲しい。頼む!」お兄ちゃんは交渉に入った。


「お前、誰にモノを言っている?死にたいのか?」

 事があるごとにこの姉は死亡のフラグを匂わせてくる。


私は彼女の弱点を兄に伝えていたので、

「美優!ゴメン!」お兄ちゃんはいきなり美優お姉さまにキスした。


すると、

「良いだろう、お前は私を愛しているなら、早く済ませて帰ってこい…。」

 恋愛経験が無さすぎるこの姉は愛を感じる行動に弱いのだ。


「美優、行ってくる。」真面目な兄はダッシュで買い物に行った。


お兄ちゃんがいなくなり、顔を真っ赤にさせている美優お姉さまが、

「私は美優じゃなくて…恋歌なんだぞ。あの男は何を考えているんだ。」

 美優お姉さまの体は兄を好きすぎるから、否定しても、感じてしまう。

私はしばらく美優の体にいたから、よく分かるもん。今頃、体がウズいて仕方がない、状態だろう。


 真面目な兄はちゃんと10分以内に戻ってきた。

「しっ、心配したぞ!私をこんな状態させて…ただで済むと思うな!」

 キレながらも嬉しさを隠せない。美優の体は兄を好きすぎるから…。


「お待たせ、美優。さあ、帰ろう…。」とお兄ちゃんが言うと、


「グズグズしているくせに、偉そうにするな!」

 と言っているのにちゃんとお兄ちゃんの手を繋いでいた。


(柏野家の姉妹は美人なのに、恋愛だけは不器用になってしまう。)

 恋歌お姉さまですら、美優の体に振り回されるんですね。カワイイですよ。発言がツン、行動がデレのお姉さま。


「美優は何が食べたい?」お兄ちゃんが聞いても、


「お前ごときに私の舌を満足させる料理が作れるとは、到底思わないが、特別に私のために作っても構わんぞ。ありがたいと思え!」

 とんでもない上から目線発言で返してくる。でも、私のお兄ちゃんは、


「いつもより本気で作るよ。美優に美味しいと言って貰いたいし…。」

 と優しすぎでドM過ぎる受けを見せてくる。


それを見ていた私は、

「お兄ちゃん…ドM過ぎだよね。痛め付けられたり、暴言を吐かれたりするの絶対、好きだよね?」と呟いていたら、


「お前だけではまともな料理を作れるとは思わん。隣で私が指導してやる。」

 兄と手を繋ぎながら、一緒に料理を作りたいと宣言し出した。


「ありがとう、美優。不甲斐ない俺に手を貸してくれてありがとう。」

 長年、美優の奇行に慣れているお兄ちゃんにはこの程度の発言など、苦ともしないのだろう。すべての記憶を取り戻す事ができた兄はとても強かった。



家に着いた時には、かなりラブラブになっていた。

兄が部屋に向かい、いなくなると美優になった恋歌お姉さまが、

「美優はなんでこんなに幸せな日々を送れるのにそれを手放そうとしたんだ?理解できん。」彼女が私に聞いてきたので、


「それは複雑な家庭に生まれた家系のせいで何が正しいのか?判断が出来なくなったんでしょう。それにその体はイカれていますよ。欲望のままに動こうとするんですから…。」

 長い間、あの人の妹をしていた、私ですらどこに本心があるのかが、分からないんですから…。


恋歌お姉さまは私に本音を話してくれた、

「私はいつも美優を叱っていた。アイツは学校でも、プライベートでも、他人に迷惑を掛けて問題ばかり起こしていたからだ…。なんでそんなことばかりするのか?聞いても、曖昧な答えしか返って来ない。実の姉なのに、妹を理解できなかった。」


「美優の体になって分かった。この私が翻弄され、感情のコントロールが出来ない。必死で抑えようとしても無理だ。美優の体で自分を律する事ができる、純はスゴいな。」と言って来たので、


「あの人が私を評価する理由は圧倒的に強い精神力を持っている事なんです。たぶん、あの人の願いは私に自分の暴走を止めて欲しいんだと思います。」

 美優お姉さまに勝てるのは私しかいないって彼女は思っているんだ。


お兄ちゃんが戻って来ると、恋歌お姉さまがまた壊れ始めた、

「待たせたな美優、今から晩ごはんを作るよ。」とお姉さまに話すと、


「お前だけでは不安だからな、隣で手伝ってやる。」

 お姉さまは兄の隣に寄り添い、上機嫌で料理作りを手伝い出した。兄が動けば、それにピッタリとついて行き、


「お前は手際が悪い、私が手取り足取り指導してやるから覚悟するんだな。」

 (私はあなたの隣で一緒に料理を作りたいと言いたいのか…。)


「ありがとう、美優。俺に悪い所があったら遠慮無く言ってくれ。」

 (お兄ちゃんは普通に対応しているよね。)


その後も二人仲良く(特にお姉さまは)楽しそうに料理をしていた。

(なぜか上手く行ってるし…面白過ぎだよ、二人とも…。)

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