第4話 諦めなければ絶対に勝てる!

前回のあらすじ:変態が編隊を組んだ(激ウマギャグ)



 取り敢えず一週間ほどで攻略最前線を目指すわけだけど、二人が言うには、トッププレイヤーがどこまで進んでいるのかまだ情報が出回っていないらしい。逆に言えば、出回るほどの情報を持つところまで攻略を進めたプレイヤーがいないということだ。ということで私達は、そこまで必死こいて頑張らなくてもいいだろうという楽観的な結論にいたった。

 まあのんびりストーリーを楽しんでいこうじゃないか。と思ったけど、私ピュアミーのストーリー1ミリも理解してないや。てかこのゲーム、ストーリーあるの?今のところそれらしいの見てないんだけど。

 ストーリーのこと聞きたいけど、そんなことも知らないのかって怒られそうだな。


「私このゲームのストーリー知らないんだけど、目的とかあるの?」


 マジかこいつって顔ですっごい見られた。

 聞くべきじゃなかったなと思ったけど、フェルミンが説明しようと言ってくれた。粗暴な感じがしてたけど案外いいひとなんだなあ。


「細かい所まで話すと長くなるぞ」


「要約してほしいな」


「魔法少女みたいなことをするっていうストーリーだ」


 要点どこ?


「まあ簡単に言うと、悪い魔女いて、そいつがモンスターを生み出すからそれを退治したりNPCの願い事を叶えたりして街の平和を護ろうって話だ。魔女を倒すのが最終目標になる」


 モンスター退治やNPCのお使いクエストとか、他のRPGとやることは基本的に同じ感じか。

 説明してくれたフェルミンに、リヴァイアちゃんが何か思い出したように話しかける。


「そういや僕たちもクエストの最中だったね、まずそっちから済ましちゃおうか。ナナオ君も手伝ってね」


 リヴァイアちゃんからクエスト招待が二通来る。迷わず承諾したけど、二人の足を引っ張らないか心配だなあ。

 とりあえずクエスト内容を確認しておくか。


【泣なき虫むしの少年しょうねんのねがい「幽霊屋敷ゆうれいやしきの落おとし物もの」】

 ☆目的もくてき:幽霊屋敷ゆうれいやしきで落おとし物ものを探さがして少年しょうねんに返かえそう!

 ♡報酬ほうしゅう:ねがいのかけら×10


 これ幽霊屋敷内でモンスターと戦うパターンのやつだな。報酬のねがいのかけらは武器の作成などに使うらしい。

 基本的にこういったクエストをこなしていく流れになるんだろうな。

 もう一つのクエストにも目を通しておこう。


【気けだるげなおじさんのねがい「2000円えん貸かしてくれ!」】

 ☆目的もくてき:一文無いちもんなしのおじさんに競馬代けいばだい2000円えん貸かしてあげよう。

 ♡報酬ほうしゅう:2000円えん(レース結果けっかで変動へんどう)


 俗な願いだなあ…

 というかこんなクエストやる意味あるの?

 クエストに招待したリヴァイアちゃんに聞いてみる。


「ゲームのコンセプトが願いを叶えようってことだから、報酬関係なくクエストをクリアすること自体がストーリーの攻略に繋がる…のではないだろうかと僕は思ってるんだ。」


「煮え切らない言い方だな」


「なんていうか、ストーリーとか説明不足なんだよねこのゲーム。正直僕達と君とで情報量に差はそんなにないよ」


 そう言いながらリヴァイアちゃんは肩をすくめた。

 クエストは両方とも難しくなさそうだし、ぱっぱと終わらせよう。



 ☆


 というわけで、私たちは目的地に着いた。

 中に入ると、空気が変わり少し肌寒くなる。奥の方からガタンッと物音が聞こえた。なるほど、その名の通りお化け屋敷のように怖がらせに来ているな。子供向けとは言えVRだ、ちゃちいけど割と臨場感がある。うわっ、後ろから気配がした!けど振り返っても誰もいない…。これ結構怖くて楽しいな。


「うわ~部屋多いねえ、これ調べるの大変じゃない?」


「こういうのはボスモンス倒せば手に入るタイプのやつだろ。ちゃっちゃと奥進もうぜ」


「ああ確かに。ほら、ナナオ君も遊んでないで早く行くよ」


 ゲームって遊びじゃなかったっけ?

 仕方なく風情もかけらもない二人の後を追う。


 屋敷の二階の一番奥の部屋、そこにボスであろうモンスターが立っていた。首のない甲冑騎士が。


『トウマノヨロイがあらわれた』


 ヨロイには首は無い、でも、私たちを睨みつけているという感覚を確かに感じる。だいぶ強いぞこいつ。


「「「変身!」」」


 三人が一斉に変身し臨戦態勢に入る。凄い、息ぴったりだ。


「恐らくこちらが攻撃を仕掛けると動き出すタイプの敵だ、俺の指示通りに動いてくれ!」


 フェルミンが大声で指示を飛ばしてくる。すっごい頼りになるなあ、ただのバカだと思っててごめんな。

 とりあえず私は二人の足を引っ張らないように頑張ろう。私の今の装備はステッキ、サポートメインの武器だ。まだ簡単な回復魔法しか覚えてないけど、後衛として、恐らくアタッカーなのであろう二人のサポートとして十分貢献できるはずだ。

 しかしアレだな、二人がいないとアタッカー無しサポートのみの地獄の一人旅になるところだった。二人に感謝だな。


「二人とも武器を召喚しろ!」


「「応!」」


 フェルミンの合図が来た!


「さあ!」  (ステッキを構える私)


「かかって!」(ステッキを構えるリヴァイアちゃん)


「きやがれ!」(ステッキを構えるフェルミン)


「「「後衛は私(僕(俺))に任せろ!!!」」」


 完璧に決まった!負ける気がしない!


「ってバカァ!!!なんで全員ステッキなんだよ!どうやって敵を倒すんだよ!」


「うるせえ!逆になんでお前はアタッカーじゃねえんだよ、そのために仲間に入れたんだぞ」


「まさか、役立たずだったとはねえ」


 え?なんで私が責められてるの?二人もどうせしょうもない理由でステッキを選んでるだろうに。


「僕は別ゲーでもずっとヒーラーやってたからね」


「指示出す人間は後衛の方が都合いいだろうが」


 思ってたよりまともな理由だった。女の子の尻が見たいとか言ってた自分が恥ずかしい!

 でもどうするんだよこの状況。


「まあ焦んなよナナオ、お前が来る前はリヴァイアと二人でやってたんだから。ちゃんとやりようはある」


「ああそうか、それなら大丈夫だな。取り乱して悪かった。してどう戦うんだ?」


 そういや武器とは別口で魔法を覚えられるんだった。攻撃魔法でも持っているのだろうか。


「ピュアミーは特殊な耐性や魔法がない限り少しはダメージが通るんだ」


「ふむふむ」


「要するに三人が互いに回復魔法を掛け続けて耐久しながら攻撃を当て続ければいつかは絶対勝てる!」


「ええ…」




 二時間かかった。戦闘終盤に、一旦引き返して武器を変更してから挑んだ方が速かったのではと脳裏をよぎったけど、必死に考えないようにした。


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