第70話ようやく

【ようやく】

チュンチュン、あさ~

朝食を食べ、チェックアウトまでまだ十分時間があるので、もう1度バスルームへ

「克己君、せっかくのホテルでゆっくりするはずがぐったりよ♡」

「はい、でも気分はすっきりです」

「もう」

「ヘヘヘ」「フフフ」

本当は違反?犯罪?かもしれないけど、フロントに「すみません、領収証の宛先を会社名じゃなくて個人名に変えてほしいんですけど」そう言ってあいつの名刺を見せると、フロントは「領収証を見せていただけませんでしょうか?」そう言いながら端末をいじってから俺を見て

「個人名になっておりますが?」

「あっ、すみません、そうでした」まさか答えてくれるとは思わなかったけど、やっぱり、会社の経費で落ちるわけないよな。

次の日あいつが連絡してきたので、スピーカーオンにして、

「そういえば、スイートルームのホームパーティーの企画、どうなりました?」

「それがですね、残念な事に、先送りになりました」

「そうですか、今度高杉さんのところの編集の方の所に言って、この企画のお手伝いをしようと話していたんですよ、残念ですね」

「イエイエ、他の編集の人間はまだ知らないです……企画段階で私が担当なので……そうですね、そういう事なので来なくてよかったです、はい」

やっぱり!裕子さんと2人、目があって頷く。

そんな企画なかったんだ。

「それでは、これでもう関わることはないですね、ありがとうございました、それでは失礼します」

そう言って電話を切る。

克己君が、名刺にある電話番号にかけ編集の担当の人に代わってもらい、お断りの電話を入れると、「そんな企画はない」。

やっぱり!!

もう、全部ばらしちゃえ!スピーカーONにして、私も会話に参加する。

対応した人は、最初は高ピーな態度だったので、しっかり高杉の名刺をもらっている事、ホテルの予約は高杉名になっている話をして、『ネットに挙げても良いですよね』とか、『克己君、やっぱり顧問弁護士に相談しようよ』とか相手に聞こえるように言ったらだんだん態度が変わって、最後は謝ってきて、副編集長がどうのこうの言うから、『高杉をなんとかしてくださいます~?』と丁寧な、でもイヤミっぽい口調で言って、最後に

「お宅の誠意を見せてください、それが見えないようなら……」と言うと何も言わないから、『高杉からの電話はブロックしてません、もし、また電話がかかってきたら、会話を録音して、先ほど言った事をすべて実行しますから』その旨を伝え電話を切った。

 それから高杉から連絡が来る事はなかった。

その後、高杉がどうなったか?そんなの関係ない、どうぞご勝手に。


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 裕子さんの毅然とした対応、強い!

裕子さんが怪しい雰囲気を感じて対応した、よかった。

×2でこの容姿の裕子さんだから、おそらく今までもいろいろあっただろうから、そういう気配に気づいたんだ、そうじゃなかったら、今頃あいつにはめられて大変な事になっていた。

その事を裕子さんに言うと、

「そうね、うん、×2も良いところがあるのね」

「そうです。俺にとって、良いところだらけです。

×2で6歳年上の裕子さんが大好きです。そんな裕子さんが奥さんでよかったです」

「そう?」

「はい」

「ありがと」

「はい!」

今までは何かと×2を卑下していたけど、ようやく。


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