第66話車がほしいです
【車がほしいです、あっ、やっぱりやめます】
「裕子さん、あの~、車買おうと思うんです」
「何? まさかポルシェとかフェラーリとか言わないでしょうね」
「はい」
「じゃあマセラティ?まさか・・・・・・」
「いえ、トヨタです」
「ふ~、よかった、で、なんていう車?」
「カローラです」
「そっか、うん、いいんじゃない?」
そう言ってスマホの画面を見せると
「何?これ本当にカローラ?なんかごつごつしてない?」
「はい、でも普通に運転できる車ですよ」
「ほんと?」
「私も運転できる?」
「あ、イヤ、そのマニュアルなんで」
「何それ、ねえ、何かあるんでしょ!? 」
「・・・はい、なんかラリーの世界選手権みたいなのに出場できるような仕様なんですけど・・・」
「そんなの、必要?」
「……いえ、必要ないです」
「じゃあ、どうして?」
「・・・かっこいいから・・」
「克己君、お子様なんだ」
「・・でも、やっぱりかっこいいから・・」
「しょうがないわね、まあフェラーリとかポルシェとか言わないからいいかな」
「はい!」
さっそくディーラーに連絡して、次の休みに2人で試乗に、
さっそく乗ってみると
「ねえ、なんか狭くない? シートが体にぴったりしていて身動きが取れない感じ、疲れそう」
「そうですね、運転するのにちょっと窮屈な感じがします」
「マニュアル、大丈夫? 克己君はこれがいいの?」
「やっぱりやめます」
「それがいいかもね」
「はい」
シートがぴったりしすぎて、車を止めて隣の裕子さんにキスすることも難しそう、マニュアルは運転に一生懸命になりすぎて裕子さんと会話できない・・・やっぱり車で2人お出かけしたら、キスやその先くらいはしたいし・・・嫌がるかな~
でも普通に走るんだったらもっとゆったりした感じの方がいいな、そう思っていたら
「克己君、このまま他のディラーも回って見ない?」
「いいんですか?」
「うん、車ほしいんでしょ?」
「はい、やっぱり2人でドライブとか、郊外のショッピングモールデートとかしたいです」
「じゃあ、今日1日、ディーラーめぐりしようっか」
「はい!」
2人でオープンカフェで隣に座ってスマホで調べて
「時間的に1か所くらいかな?」
「そうですね」
どちらかというと今日決めるというより、ディーラーめぐりデートという気分で レクサスとペンツとアウディのディーラーを回ることにした。
噂話だけど、すっごいお金持ちだけど見た目がチビデブで服装に無頓着な男とすっごい綺麗な婚約者と2人で車選びにディーラー回ったら、この3か所だけはちゃんとお客様対応してくれた とかで
お客様対応を2人で味わってみようかって。
お金はあるんだけどもともと貧乏性な俺は、おどおどしそうだし、そんな男が裕子さんみたいな女性と一緒だと、まさにその噂話のまんま、そんな事を考えていると
「克己君、ひょっとしてその噂話が自分にぴったりはまってるとか考えてたでしょ」
「・・・はい」
「大丈夫、もっと自信を持って、君はカッコイイんだから」
そう言って思いっきり腕に抱きついて俺の頬にチュ
「・・・はい」
なんか自信が付いてきたぞ、最初に言ったレクサスのディラーで色々な車を見て回って
「裕子さん、これいいんですけど大きすぎて運転が怖いかもしれないです」
「そうね、こんな大きな車、私たちにはいらないわね」
「あの・・・・・・」
「あら~、フフフ、な~に?」
「これなんですけど」
「うん、うん、で?」
「・・・・・・かっこいいです」
「うん、で?」
「試乗してもいいですか?」
「うん♡」
かっこいい、RXでも・・・・・・
「この、2.0ターボで十分だと思うんですけど 」
「そうね、でもいつ乗るの?」
「そうですね・・・・・・」
小声で
「飛行機とか新幹線とかロマンスカーだと手を繋いで、ぴったりくっついていられるよ♡・・・・・・キスもできるよ♡」
耳元で、
『こっそり、ここ、さわってもいいのよ♡』えっ?胸を見てしまった
「でも車だと克己君が運転している間は手も握れないね、キスも無理かな~」
「……そうですね」
「克己君と私の子供ができたら、家族でお出かけする時に車は便利だけど、2人で遊ぶ時はどうかな?」
2人の子供……そうだ夫婦なんだ、これから家族になるんだ
「家に帰って考えます」
ディーラーの人にそう言って出てきたけど 裕子さんは俺を見て
「ん?」
「はい、買うのやめます、子供……そうです!裕子さんと俺の子供ができたら考えます」
「そうね♡」
裕子さんが小声で耳元でささやかれて、確かに!思った。
2人で旅行する時、よく考えると裕子さんの言う通り、運転中は裕子さんの顔を見れないし、くっついたり手を握ったりできない。
移動が大変ならタクシーに、2人後部座席でイチャイチャした方が楽しいし、海外に旅行に行くならなおさら車はいらない、という事で・・・車はやめた。
「その代わり、2人でもっと色々な所に旅行に行きましょ♡」
「うん♡」
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