姉を虐げ、両親に溺愛された義妹が行方不明!? ~そして判明するのは義妹の愚行の数々!?~
mimiaizu
第1話 姉妹格差/行方不明
とある貴族の屋敷にて、銀髪碧眼のツインテールの可愛らしい義理の妹と黒髪碧眼のポニーテールの美しい姉の貴族令嬢姉妹がいた。義妹は姉に向かってこんなことを言い放った。
「お姉様の今着ているドレスが欲しいですわ! 頂戴!」
頂戴と迫られた姉は渋々とドレスを脱いで義妹に渡した。
時にはこんなことも。
「お姉様のお誕生日プレゼントがうらやましい! 譲ってください!」
そんなことまで言われても姉は黙って自身の誕生日プレゼントを義妹に譲るしかなかった。そんな理不尽な仕打ちを誰も咎めない。
挙句にはこんなしまつである。
「お姉様! 可愛い妹のために掃除してくださいね! その後は給仕もお願い!」
掃除に給仕、そんな者は使用人がやるべきこと。だが、姉は言われた通りに従うしかなかった。貴族令嬢にはあり得ない行いだが、このようなことはもう彼女たちやその両親にとっても日常茶飯事なのだ。
「「姉としての務めを果たしなさい」」
姉の理不尽な状況は、白髪交じりの黒髪黒目の父親も銀髪碧眼の化粧の厚い義母も全く気にしない。むしろ義妹と同じような気持ちのようだった。
「「姉なのだから可愛い妹を大事にしなさい」」
すでに十八にもなる姉は口答えしない。そんなことをすれば咎められるのはいつも自分だと理解しているからだ。父も義母も義妹を溺愛するばかりで、自分の家の屋敷なのに姉には味方はいないのだ。
更には、姉の婚約者でさえも義妹を可愛がるばかり。
「君じゃなくて妹の方が可愛いじゃないか。婚約する相手を間違えたかな?」
婚約者は無神経で言葉を選ばない。こんな連中ばかりなのだから長女であるのに自身の周りは敵しかいないのだ。
ただし、味方がいないわけでもない。屋敷に味方がいないなら、屋敷の外で味方を作ればいい。そう考えた姉はずっと前から屋敷の外に味方をつくっていたのだ。こんな状況をつくったの生家に反撃するために。
「このままでは終わらないわ。必ず逆転してみせる」
味方のいない姉は家族や婚約者に蔑ろにされながらも必死に努力した。勉学に励み知識を持ち、人脈を広げ自身の味方をつくり、家族に気付かれぬように商会を立ち上げたのだ。姉に無関心な家族、父も義母も義妹も誰一人気付かない。もちろん婚約者でさえも。
そして、準備が整ったその時、予想していた出来事が始まった。それは義妹の起こした馬鹿げた行動が引き金となったのだ。それも予想通りなのだ。
◇
「ワカマリナがいなくなった?」
「はい。旦那様はその件でアキエーサお嬢様をお呼びとのことです」
フーシャ王国の国立フーシャ学園の学生寮の一室で、侍女から要件を伝えられた伯爵令嬢アキエーサ・イカゾノスは険しい顔になる。
「そう。遂にあの女はしでかしたみたいね」
はあ、とため息をつくアキエーサは、今度はうんざりと言った顔になる。つまり、呆れたのだ。
アキエーサは一応ワカマリナの姉ではあるが、彼女の心には義理の妹のワカマリナを心配する気持ちは一切ない。何しろ義理の妹ワカマリナは、ことあるごとにアキエーサを虐げてきたのだ。父と義母と共に。『あの女』呼ばわりは当然だ。今までさんざん迷惑を掛けられてきたが今度は行方不明ときたとは。
「……ふふふ、いずれこんな日が来るとは覚悟していたわ」
「そうですね。そのための準備もしてきたんですものね」
アキエーサは椅子から立ち上がると、顔から微笑を浮かべる。先ほどの様子から百八十度くらい心境が変化したと言っていいほどに。
「ええ。これから知ってしまうことにあの連中はどんな顔するのかしら? 後からのお楽しみになるけどね」
アキエーサは自分を蔑ろにしてきた家族のこれからを予想して、ほくそ笑む。彼女は総てを知っているのだから。
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