第3話 聖歴152年6月12日、やったスキルが生えた

 街の門は枠が鉄で出来ていて扉は分厚い木で出来ていた。

 いざという時は、モンスターの侵入を防ぐのだろう。


 門番が5人が足税を徴収している。

 俺は街に入る列の後ろに大人しく並んだ。

 この街は拠点の街ではない。

 極光の奴らに俺が生きているのがばれたら、殺されるかも知れないからだ。

 だから、知らない街に来た。


 ここまでどうやって来たのかといえば、歩いてきたのだ。

 食事はどうしたかって?

 巡礼者を装った。

 白い布を腕とメイスに巻きつければ巡礼の出来上がりだ。


「はい、次」


 俺の番だ。

 財布を開け中を覗く。

 銅貨が5枚以上見えた。

 良かった、足りるようだ。


「ほらよ、銅貨5枚」


 銅貨5枚を支払うと残りは2枚しかなかった。

 もう金がほとんど無い。

 露店があったので銅貨2枚の串焼きを買う。

 これですっからかんだ。

 次に飯にありつけるのは何時の事か。


 今の俺に売れる物と言ったら、腰につけたメイス。

 身に着けている皮鎧。

 それと、日記とペンとインク。

 腰のポーチに入れてある針と糸と少しの布。

 装備は出来る限り売りたくない。


 魔力が売れりゃあなぁ。

 魔力は寝ると一晩で回復する。

 使っても問題ないところだったんだが。


 使い道はもちろんスキルと魔道具だ。

 俺にスキルはないから、魔道具に充填する仕事だけが出来たはずなんだが。

 でも駄目だったかもな。

 魔力を持ってない人なんていないから、需要はほとんどない。


 もっとも今は呪いで魔力0だけど。



 喉が渇いたので噴水へ行く。

 腹を壊したって構うものか。

 噴水の水をたらふく飲んでやる。


 噴水に行くと噴水は白い石灰石で出来ていて水を盛んに吹き上げていた。

 中央の像はドラゴンだった。

 それに剣士が剣を突き立てている構図だ。

 剣を突きたてられたドラゴンは、苦し気に口を開き大口を開いて水を吹き上げるといったところだ。


 噴水の周りには沢山の人がいて銅貨を投げ込んでぶつぶつと何かを祈っている。

 おお、なんかいわれがあるんだろう。

 俺はそばにいた女の子に話し掛ける事にした。

 女の子の年の頃は18歳。

 クリっとしてて柔らかい眼差し、巨乳で豊満な体つき。

 髪を長く伸ばしてポニーテールにしていた。


「うちになんや用かいな?」


 西の方の訛りがある。

 西の人間だな。


「噴水に銅貨を投げ込んで祈ってるよな。何かなと思って」

「ああそれな。願い事が叶うんやて」


 ほう、俺もやってみよう。

 財布を覗いて、使い果たしたのを思い出した。

 困ったな。


「うちが貸したるわ」


 困った俺の顔を見て彼女が言った。


「ありがとう。おおきに」


 西の方の訛りを真似して俺は言った。


「どういたしましてや」


 銅貨を受け取り噴水の中に投げ込む。

 何を祈ろう。


「現状打破」


 力がみなぎった様な気がした。

 まさかな。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:スグリ LV12

魔力:1200/1200


スキル:

無限収納

魔力通販

――――――――――――――


 やったぜ。

 呪いが解けた。

 その上、スキルが2つも生えてる。


「ひゃっほい」


 俺は飛びあがって宙に拳を突き上げた。


「どないしたん」

「やったよ、あんたのおかげだ。スキルが生えた」

「おめでとさん」


「ありがとう。何でも言ってくれ。あんたは俺の恩人だ」

「借金返済を。ううん、無理やな。むりうてかんにんや。銅貨すらないのに」


 彼女の役に立ちたい。

 心からそう思った。

 無限収納は収納スキルの上位互換だろう。

 たぶん無限に物が入る。


 魔力通販は魔力で物が買えるはずだ。


「銅貨はないが、品物はある。【魔力通販】」


 ええと1200円の物までしか買えない。

 1魔力1円か。

 物品のリストが日本のだ。

 異世界に電化製品はないからな。


 何が良いだろう。

 おっと、これなんかどうだ。

 人工宝石の3個セット1180円だ。


 それにしよう。

 1.5センチの人工宝石が3個現れた。


「これをやるよ。ダイヤモンドではないがガラスより硬い。それなりの値段で売れるはずだ」

「おおきに。借金全額は無理やけど、これで余裕が出来たわ」


「なら、借金返済するまで、俺が毎日、宝石を出してやるよ」

「ええの」

「いいんだ。それくらいの恩はある」


「うちはジューン。よろしゅう」

「俺はスグリ。ところで今晩泊めてくれない?」

「ええよ」


 駄目元で言ってみたが、まさかのオッケー。


「いいのか。こんなの事言うのも何なんだけど、もっと自分を大切にしないと」

「あんたが気に入ったんや。他の人間ならせえへん」


 まあいいだろ。

 深い仲になるつもりはないからな。

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