第35話 電車に乗って(1)
たまたまなのか、
電車のなかで立つことになったら、
電車のなかの明かりで見てみると、毛受愛沙も血の気がひいているわけでもなく、不自然に顔が紅いわけでもないことがわかった。
ただ、気分がよくないのは確かなようで、うつろな目を斜め上にやっている。
車内にはほかにも
明るい青の
ほかに知らない制服の子もいる。
毛受愛沙の気が散っているあいだに、その毛受愛沙を向かいから見る。
瑞城女子高校の制服は、スクールカラーだという「明るい紺」で、遠目に見るとワンピースに見える。
でも、実際にはワンピースではなくて、ブラウスとスカートは別らしい。
襟と袖口だけが白だ。学校案内には「明るい紺」と書いてあるけれど、とくに明るい色という感じはしない。普通に紺色だ。
毛受愛沙は上のボタンをはずすと「すごくダメに見える」と言っていた。景子はそんなにダメだとは思わなかったけれど、いちばん上を留めているととてもお行儀よく見える制服が、それをはずすとだらっとした感じになるのはわかった。襟から胸元が見えるだけで、「お
夏服は同じようなデザインで白だというけれど、どんな感じなのだろうか。
やっぱり襟のところが詰まっていて暑いのだろうか?
向こうにいる瑞城女子中学校の子の制服は襟なしジャケットで、文句なくかわいい。
明珠女学館の制服は?
電車のなかの何か所かにいる明珠女の中学生や高校生を見てみる。
たぶん、色が紺ならば、いちばん大人びて見える制服ということになるだろう。しかし、色が瑞城よりも明るい青なので、とても「青春!」感がある。
泉ヶ原から二駅めまでは毛受愛沙はたましいがこの世から離れているようにしていた。目は開いているのだが、どこに目線をやっているかわからず、目が電車の天井のほうを言ったり来たりしている。
でも、二駅めを過ぎたところで、毛受愛沙はふと正面から景子の目を見た。
「あの」
声はまだうわずっている。
「景子さんって、降りる駅はどこですか?」
「
この電車の終点だ。
「ああ、じゃあ」
とそこまで言って、愛沙は背負い鞄を開け、中から黒い本のようなものを取りだした。
開く。
タブレットらしい。
毛受愛沙の、小さい体と巻き気味の毛と愛くるしさにはあまり似合わない。
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