第20話「CS検定 ワープロ 3 級」
コンピュータサービス技能評価試験
ワープロ部門 3 級。
課題 1∶文字入力。
課題 2∶文章の作成。
課題 3∶文章の編集・校正。
試験時間 50分。
武田は 3級合格を目指して必死にタイピングの練習をしていた。
課題 2と課題 3は、すでに合格ラインになっていたが、課題 1の文字入力ができなかった。
文字入力は約350字の単純文字入力で保存も含めて10分以内にできればいいのだが、パソコン初心者でローマ字入力もおぼつかない武田には10分間で150文字くらいしか打てなかった。
「タイピングソフトで練習すれば、なんとかなるだろう!」
武田は頑張っていた。
コーヒーを飲みながらスナック菓子を食べながら、ひたすらタイピングの練習をしていた。
「づ? ZU? ちが〜う! DU!」
まだまだローマ字にてこずっていた。
❃
「いて!」
寝ていた武田が叫んだ。
「肩が痛い!」
肩の痛みで目を覚ました。
なんだ、これは? 右の肩関節に痛みが走ったぞ。
肩関節に時々ズキンと痛みが走り、肩の筋肉も痛んだ。
パソコンの授業が終わってから外科に行くと……
「五十肩ですね。炎症が収まるまで3ヶ月くらい無理しないでください」と医師に言われた。
3ヶ月? 検定試験は、あと半月ほどなのに肩が痛くて大丈夫だろうか?
❃
武田はパソコンの練習をするものの、肩が痛むのでどうにも集中できなかった。
クラスの多くの者は仕事で文字の入力はしていたので、10分間で350文字の入力をクリアしていた。
武田は3つの課題の内、文字入力だけが間に合わなかった。そこで考えた。
先生は合格の採点については公開されていないが、1つの課題につき7割程度できれば合格になると言っていた。それなら、文字入力も350文字ではなく245文字でいいのではないか?
武田は模擬試験で文字入力を350文字入力すると時間が無くなるので文字入力を約10分で150文字打ったら、次に第2課題を8~9割やり第3課題も8~9割をやる。残った時間を文字入力の残りにあてた。
「よし、できた!」
このやり方なら100点はないが3つの課題は7割以上の点数を取れる。
武田はワープロ検定 3級の合格ラインに入った。
❃
まえにやったコンピュータサービス技能評価試験 表計算部門 3級の結果が出た。
武田は合格だった。
A4サイズの合格証書を受け取り、
デカい合格証書だなと思っていた。
「武田さん、よかったね!」
早坂さんが祝福してくれた。
「早坂さんも合格じゃないですか!」
武田も早坂さんを祝福した。
しかし、2級を受けた人達には合格者は少なかった。
❃
家に帰り奥さんに合格証書を見せる武田。
奥さんは「よかったわね」と一応褒めてはくれたが、どうでもいいという感じだった。
しかし、武田は久しぶりの合格証書に興奮していて、お祝いに寿司屋に行こうと言い出した。
夕飯の支度をしていた奥さんは、せっかく作ったのにと渋い顔をしていたが、夕飯は明日食べるからと強引に寿司屋に行くことになった。
お祝いだから普通のお寿司屋さんに行きたかったが、失業中の身の上。回転寿司店に行くことにした。
久しぶりに回転寿司店に行くと、寿司が回転していなかった。
「あれっ、なんで? 回転寿司で寿司が回ってないよ」
武田が不思議そうにしていたら、奥さんが、今はコロナウイルスだから、お寿司も回転させないで注文するようになってるんじゃない? と言った。
まさに、その通りで店員さんに注文するか、タッチパネルで注文するようになっていた。
「パソコンを使って注文するの!?」
武田はタッチパネルでの注文は初めてだったが、すぐに理解した。
これくらいは、検定試験に比べたら簡単だ。だが、ついこのあいだ、(何十年も前だが武田にとってはこのあいだ)回転する寿司屋が出来たと驚いていたのに、もう回らなくなったのか……
「時代はパソコンか? パソコンを使えないといろいろと不便になるんだな。お前も習うか?」
武田は奥さんにもパソコンを勧めたが、奥さんは機械はまるでダメでスマホも苦手だった。しかし、口は回る人で、武田は言い争いになるといつも負けていた。
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