第4話「職業訓練 受験」

 武田は職業訓練を受ける決心がついた。


 ハローワークに、書類を持って行き手続きは終わった。

 ふ〜〜っ、あとは受験だ!

 何人くらい受けるんだろう?

 受験に失敗って事もあるな……でも、一般常識の勉強をするには範囲が広すぎるし、どうするか?

 とりあえずタイピングをするか……


 ❃


 家に帰り、昔、友人にもらったノートパソコンを出してみる。

 ほこりまみれであるが、電源を入れると、ちゃんと動いた。

 パソコンの画面を見るとタイピングのアプリが入っている。


 これか!? タイピング。あるじゃないか、これをやればいいな!


 タイピングソフトは、初心者用のものでローマ字の入力のし方から文章を打つものだった。

 これを練習するか、ローマ字って……普通に日本語で入力した方が早いんじゃないのか? スマホみたいに……しかし、チラシを配っていたオジサンはローマ字入力で授業をやるって言ってたな。

 職業訓練終了までに、10分間で350文字を入力できることを目指すって言ってたな。

 それって難しいのかな?


 武田はブツブツと言いながらタイピングの練習を始めた。


 ❃


 受験日。

 会場に行くと受験生は12名だった。

 あれっ、これだけ?

 募集は20名だったから12名なら受かるんじゃないか!? 俺は、てっきり40〜60名くらい受験すると思っていたよ。


 テスト問題は漢字の読み書き、算数の計算、なぜ職業訓練を受ける気になったかを書くというものだった。


 あれは、何て読むんだったのだろう、漢字も書けなかった。分数の計算なんか忘れてしまった。まずいな……落ちる事もあるかな?


 筆記試験は終わり、次は面接である。


「失礼します。武田鉄男です」

「武田さんはパソコンを使った事はありますか?」

 試験官は男性と女性の二名だった。


「あっ、え〜っ、パソコンは、今練習中です」

「では、パソコンは持っているんですか?」

「は、はい。友人にもらったノートパソコンがありまして、タイピングの練習をしているところであります」

「タイピング、いいですね。授業が始まったら毎日練習しますから」

「はっ、そうですか……」


 一般的な事を聞かれ面接も終わった。


 面接が終わった人から帰っていいということで、近くにうどん屋があったので食べて帰る事にした。


 20名の定員で12名の受験なら、受かるだろう……そう思いながらも、ひょっとしたら落ちるかもしれないという気持ちもあった。


「かき揚げうどんと、お握りで800円になります。お支払いはどうされますか?」

「どうって、現金で……」

「はい、現金ですね! ありがとうございます」


 武田は、違和感を感じながらうどんをすすっている。

 いまの店員さん、何が言いたかったのだろう?

 ふと、テーブルに置いてある広告を見るとスマホのアプリなどから支払いをすると値段が安くなりポイントも付き現金よりお得だと書かれている。

 あぁ、このことを言っていたのか……まえにも消費税がかからないとかやっていたな。

 俺もパソコンを勉強すればいろいろわかるようになるかな?


 武田はスマホは使っていたが、スマホを使っての支払いや会員登録などは、全くわからなかった。



 四日後。手紙が届いた。

 これは、これに合否が書かれているんだな……

 武田は、まず神棚に手紙を上げ、手を合わせた。パンパン! 柏手を打つ。

 どうか、合格と書かれていますように。


 今から祈っても内容は変わらないけどね、どうしよう。よしのが帰って来てから一緒に見るか? あいつ何時に帰って来るんだっけ? 5時くらいか? いまは1時か……けっこう時間があるな。

 えい、見てしまえ!


 武田は封筒を開けて書かれている文章を見た。


 合格であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る