くすぐられる博士と助手の話


「博士、そろそろ起きてください。」


僕と博士しかいない研究室では、今日も僕のそんな声が響く。


「うーん……、分かったー。」


「そう言いながら、毛布に尚更包まらないでください。もう休憩はおしまいですよ。」


「そうだな……、うーん……。」


「もう、博士いい加減起きてください。このやり取り、もう10分ぐらいやっているんですよ。」


「そうか。」


「いや、『そうか』じゃなくて、もうー、博士~。」


はぁ、一体どうしたものか。

うーん……、あっ、そうだ。


「はぁ、起きないのなら、そろそろ強硬手段に出ますよ。」


そう言って僕は、ピョコッと出ている博士の足をくすぐり始める。


「んんっ!?き、君、何して……、あはははっ!ちょ、やめろ、くすぐるな!あははははっ!」


「止めて欲しかったら、今すぐ起きてください。」


「お、起きる!起きるからい、今すぐ止めてくれ!あははははっ!」


それから、博士は渋々と言う感じで起き上がる。


「おっ、起きましたか。よし、それじゃあ、実験の続きを始めましょうかね。」


「……まったく、君と言うやつは最近、私に対して遠慮と言うものが無くなってきているのではないか?」


「遠慮?何ですか、それ?あなたのような自分勝手と言う言葉を具現化したような人には遠慮なんてものはありませんよ。」


「……メッチャ言うな。流石に私も泣くぞ、泣いてしまうぞ。」


「お好きにどうぞ。」


「ぐぬぬ、来た当初の君はあんなにも可愛かったのに、まぁ、今も可愛いが随分憎たらしくなった。」


「一体いつの話をしているんですか……。もういいから、続き、しますよ。」


「はいはい、分かったよ。まったく、これじゃあ、どっちが上司かわかったもんじゃないな。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る