三二話
「フウゥ……。ま、僕の実力はこんなものだよ」
「仮面の英雄さま、やっぱり本物だったんだぁー」
「すごぉーい」
「大好きっ」
「ハハハッ、まあ、待ちたまえ。焦らずとも抱いてやるから、順番はちゃんと守りたまえよ」
なんとも胸糞が悪いやつだが、今日でもうお別れだと思うとストレスはそこまで感じない。
「ところで、例の子は連れてきているのかね」
偽仮面の一言で、その場の雰囲気がガラッと変わった気がした。例の子――?
「――嫌ぁっ、やめてください!」
「ほら、言うこと聞きなさいよ!」
「そうよ、仮面の英雄さまの誘いを拒む気!?」
「何さまのつもりなの、あなた!」
まもなく一人の小柄な少女が、女子たちに両脇を抱えられながら嫌々といった様子で偽仮面の目前に連れてこられる。
ん、このお下げ髪の少女、職員室にいた生徒だ。あんないい子を犯すつもりなのか。
「フフッ。この子は僕の好みというのもあるが、こんな風に少しは嫌がる子も抱かないと味気ないのでね。僕に抱かれたい子をただ抱くだけっていうのは、さすがに食傷気味だからねえ」
「か、仮面の英雄さまは、そんなことを無理矢理するような人ではないはずです! 指とか噛んじゃいますよ!?」
「そうかそうか。そんなに嫌ならもうしなくてもいい」
「えっ……? わ、わかってくださったのですね……」
なんだ、偽仮面のやつ、まさか改心したのか?
「ただし、もうこんな学校は見捨てることにした。はあ……理不尽だ。僕は一体、今までなんのために身を粉にして学校を救ってきたんだか。アホらしい」
「ほら、仮面の英雄さまがそう言ってるよ?」
「あんたのせいで学校のみんなが死んでもいいの?」
「それって、あなたが殺したようなものよね?」
「「「「「この人殺しっ!」」」」」
「うー……わ、わかりました、やります……」
性悪の女子たちに責められ、嫌がっていた少女が観念した様子。そのあと偽仮面の男が待ってましたとばかり振り返ると、仮面の隙間から白い歯を覗かせた。
「フッ、わかればそれでいいのだ。よくぞ決心してくれたね……」
「…………」
まったく、悪魔もドン引きするくらいのどうしようもないクズだな、こいつらは……。
よーし、そろそろ行動に出るか。やつのスキルが【幻覚】なのはほぼ確実とはいえ、一応念のためにその実力を試すべく、俺は仮面をつけた自分の『アバター』を出現させて『コントロール』で操作することに。
これは自分の分身ではあるが、中身は抜け殻、すなわちオールステータス0の状態なので、相手の能力に応じてダメージを受けるからうってつけだ。
「そこまでだ!」
「「「「「っ!?」」」」」
偽仮面を筆頭に、やつらがはっとした顔で『アバター』に注目してくる。
「ほ、ほんも――い、いや、偽物か! 失せろ!」
こいつ、今本物って言おうとしたな。偽物っていう自覚はあるのか。
「偽物はお前だ。死にたくなければ、その嫌がっている少女を置いて消えろ。これが最後のチャンスだ」
「い、いい加減に黙りたまえよ、偽物めがっ……!」
お、偽仮面が『ヘルファイヤ』を使ってきたと思ったら、分身はまったく炎上しなかった。
やはりそうだったか。これでしょぼいステータス通り、やつの魔法がこけおどしであることがはっきりしたな。
「くっ……!」
俺は相手を油断させるべく、ビビった振りをして『アバター』をその場から退場させることに。
「ハ……ハハハッ! ま、参ったか!? に、偽物めがぁ! はぁ、はぁ……」
「「「「「大丈夫ですか!?」」」」」
偽仮面が胸を押さえながら座り込み、不良の女子たちに心配される。偽物なだけに、本物が現れたと思ってかなり心臓に悪かったらしい。
「……だ、大丈夫、だ……。ぼ、僕の持つ偉大な魔法を、偽物なんかが使えるわけもない。仮面をつけただけで僕に成りすまそうとするとは、愚かにもほどがある……フッ……」
「「「「「ああんっ、仮面の英雄さまー!」」」」」
いつもの調子が戻ってきたな。ここはお仕置きせねば。
「ハハッ、押すな押すなっ、この子を抱き終わるまで待ちたまえ――どわっ!?」
まず挨拶代わりに『バナナ』+『ラージスモール』を使って盛大に滑らせてやったあと、『タライ』でオチをつけてやった。
ん、その弾みでやつの仮面が取れたわけだが、あまりにも間抜けな表情だったので女子たちがドン引きしてる。さて、そろそろ始末してやるとするか……。
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