十八話


「…………」


 あくる日の早朝、俺は【ダストボックス】内で目を覚ました。まだ4時前だ。


 当然凄く眠いわけだが、『アウェイク』で頭を覚醒させて起床する。


 ちなみに、ラビはまだすやすやとベッドでおやすみ中だった。


「んんっ……ユートさま、私の体温でずーっと温めてあげますぅ……」


「お、おいおい……」


 相変わらず刺激的な寝言だ。もうずっと【ダストボックス】の中にいたくなっちゃうじゃないか。


「……ひっく……」


「ん?」


 ラビがしゃっくりをしたわけだが、あたかも


 妙だな……。アルコール系は飲ませてないし、もしかしたら風邪かと思っておでこを触るも熱はない。寝言から察するに、エッチな夢でも見てるせいかもしれない。


 俺は【ダストボックス】を脱出し、まだ薄暗い学校の廊下に出た。


 壁を背にして寝ている生徒もいたが、普通に起きてて会話してるやつらもいたので、これから外へ行くのを見られないように【隠蔽】で自身を隠すことに。


 そっと窓を開けると、ついさっき作った『フライ』の魔法で宙に浮かんで飛び立つ。


「……うわっ……」


 なんせ学校のすぐ下は谷底なんでヒヤッとするが、MPがあるうちは大丈夫だってことで、どんどん上昇していく。こうして見ると、かなり際どいところに学校が召喚されてるのが改めて見て取れる。


 あれかな……天の声によると、この異世界は強力なモンスターばかりいるみたいだし、なるべく襲われないようにわざとこんなところに召喚したのかもしれない。


 それこそ、いくら嗅覚が凄いとはいっても飛行できるモンスターでもないと学校を襲いたくても襲えないだろうしな。


 まもなく学校が小さく見えるほど俺はガンガン上昇していったわけだが、まだ視界は崖で閉ざされている。どんだけ険しいんだか。


「…………」


【隠蔽】スキルも併用しているせいか段々フラフラしてきて、精神力がもろに削られていくのを感じる中、ようやく終わりが見えてきた。


「――おおぉっ……」


 周囲の視界が一気に開けたので嬉しくなる。辿り着いた場所は、いかにも高い山の頂上といったところだった。ここなら作った攻撃魔法を思う存分試せそうだな。


 俺は『エリクシルヒール』を使ってHPとMPを全回復させたあと、手ごろなモンスターがいないかどうか、しばらくその辺を散策してみることにした。


「グルルルルル……」


「ちょっ……」


 俺の目前に何かがフッと現れて暗くなったと思ったら、巨大な漆黒の竜だった。おいおい、いきなりドラゴンかよ。ハードな異世界らしいな……。


「ゴオオオオオオォォッ!」


「ぐっ……!?」


 急に襲い掛かってきたのでギリギリでかわしたが、やつのスピードは瞬間移動してるかのように尋常じゃなかった。どんなモンスターか調べたいが、こんなに素早いんじゃ【慧眼】を使う暇もない。


 てか、【隠蔽】で自分の姿を消しているのに、全然関係ないってことは持ち前の嗅覚かなんかか?


 こっちの居場所がバレてるならMPが勿体ないってことで、俺は【隠蔽】スキルを解除すると、新しい攻撃魔法を試すべく詠唱を開始した。

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