十話
「「「「「ワーッ!」」」」」
「…………」
周りから歓声が上がるのもわかる。次々と、生徒たちの側に猫耳の亜人や鳥頭の獣人が現れたのだから。しかも彼らの中には普通に喋ってるのもいるし、異世界に馴染めるだけでなく心強い仲間にもなりそうだ。
一方、俺はというと、永川にスマホを返してもらって画面を見ても、やっぱりバツ印がつけられたものしかなくて何も選択できなかった。
「ち、畜生……」
俺は一応落ち込む素振りをして虎野たちのほうを見ると、やはり一様にニヤニヤと笑いながらこっちのほうを窺ってて気持ち悪かった。
てか、連中がどんな仲間を選択したかと思ったら、虎野がゴーレム、近藤がリザードマン、浅井がヴァンパイア、永川がスライム、影山がメドゥーサだった。なんていうか、いかにもあいつららしい選択だ。
それからまもなく、俺は項垂れつつトイレへと向かった。もちろん、何か捨てられてないか【ダストボックス】の中身を確かめるためだ。孤立した俺は逆に目立ってるだけに、教室でいきなり消えると不自然だからな。
目的地へ到着した俺は、すぐに【ダストボックス】内へ潜り込む。
さあて、何が捨てられてるかなあ――
「――うっ……」
なんにもなかった。部屋は立派だったが俺は一人。はあ、さすがに毎回、残り物に福があるなんて展開にはならないのか。
なんともいえない寂しさを感じつつ、『クリエイト』で作ったソファに座る。
今なら、どんな仲間でも快く迎え入れることができる。ムカデ人間とかだったらさすがに嫌だけど、それでも話し相手くらいにはなるかもしれないしな……。そのうち怒りがどっと噴き出してきて、もう虎野たちをぶっ殺そうかなと思うが、まだダメだ。
なあに……仲間なんかいなくても、俺には最高のスキルや魔法があるじゃないか、ははっ……。
「はあ……」
なんだか虚しくなってきたし、しばらくベッドで横になろうかな。寝れば苦しみも忘れる。そう思って眠れる効果の『スリープ』という魔法を作った矢先だった。箱が一つだけ、部屋にフッと現れたんだ。
お、おおっ……。中に何がいるのかと思って箱を開けたら、垂れた兎耳を持つメイド服の少女が入っていた。
へえ、超可愛いじゃないか。なんでこんなのが捨てられたんだ? 疑問を感じつつも、俺は異世界の仲間ができる喜びを抑え切れなかった。
「はっ……!? わ、私は、どこにいるのでありましょうか……」
「ここは【ダストボックス】だよ」
「【ダストボックス】? それは一体、なんなのでありましょう?」
「ゴミ箱」
「ひあっ!? じゃ、じゃあ私は捨てられたのですね……」
兎耳の少女ががっくりと座り込んでしまった。
「でも、俺が拾ったから……」
「と、ということは、あなたはゴミ箱の管理人さん!?」
「ま、まあそんなもんかな? とにかく、拾ったからには俺のものだよ」
「は、はぃ、拾われたので、私はあなたのものです……」
頬を染めてデレッとした態度を見せてくる兎耳の少女。実は生意気な性格なんじゃないかと思いきや、今のところなんの問題も見当たらないし、ますます捨てられたのが不思議だ。
「俺は如月優斗。あんたの名前は?」
【慧眼】で調べられるとはいえ、交流を深めるためにも直接聞きたい。
「ご主人さまは、ユートさまというのですね! 私は、ラビっていいます。よろしくですー!」
「よろしく! ところで、一つ聞いてもいいかな?」
「はい?」
「なんで捨てられたの?」
「え、え、えっと、それは……」
なんだ? ラビは耳を震わせて動揺してる様子。もしかして、聞いちゃいけないことを聞いてしまった……?
「どうしてか、わからないのです。ただ、私、ちょっと変わり者なのかもです」
「どういうこと?」
「こうしなさい、ああしなさいと、上から目線の態度になってしまうんです」
「慣れてくると厚かましくなるわけか」
「わ、私は、ただ、常に一緒にいなさいと言っただけです。そしたら、『俺が命令する側だ、バカ野郎』と言われて、削除されてしまい……」
「そりゃ可哀想だ。俺と一緒にいなさい」
「ええっ!? ダメです、私と一緒にいなさい!」
「ははあ」
俺はひざまずいてやった。
「わ、わわっ……!?」
ラビのやつ、俺のほうを見下ろして感涙してる。
「ご、ご主人様っ、私と一緒にいなさーい!」
「わかったよ、ラビ」
「う、うれひくて倒れひゃいましゅうう」
ありゃ、目をグルグルさせてうつ伏せに倒れてしまった。どうやら気絶したらしい。失礼ながらスカートをめくると下着のお尻の部分にもちゃんと丸い尻尾があって、兎の亜人だとわかる。【慧眼】で調べてみるか。
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名前 ラビ
年齢 15
性別 女
種族 キャロット族
HP 100/100
MP 30/30
攻撃力 10
防御力 20
命中力 50
魔法力 30
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性別や年齢等、俺が知りたいことを、【慧眼】は読み込んでくれたらしい。実は男性でしたとか本当は100歳だったとかは嫌だしな。へえ、キャロット族っていうんだな。いかにも兎らしい。なんか弱そうだけど、愛玩用ってことでいいか。決して深い意味はなく。
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