第29話 追いかけっことは(哲学)

(sideシエラ)


 あと3分。あと3分だけ遊ぼう。


 本当に、追いかけっこが楽しいぞ。

 ………ずーっと、こうやって遊んでいたのだ。


 でも、このままだとそれは出来ない。


 こうやって遊ぶ前に、を止めなければ、ニンゲンはみーんな居なくなってしまうだろうから。


 だから、ニンゲンと遊ぶ前に少しだけ忠告を………




 ん?




 後ろから何か………



 ドオオオオオン!



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 F15J(side篠田)


『篠田ァ!大丈夫だったか!?』


『良くわからん化け物には俺たちが99式をぶちこんでやったぜ!』


『念には念を入れて四発当てたんだ。ひとたまりもあるまい』


 無線越しに流れてくる、聞き覚えのある声。


「お、おいおい!やっちゃって大丈夫なのか!?」


 それらに対して俺が最初に感じたのは、感謝や驚きじゃない。攻撃したことへの心配だった。


『なあに言ってんだ!上の方から許可が出てるぞ?』


『おめーが聞き逃したんだろ、ああ!?』


「あっ、そういやあなんか言ってたなあ………」


 それを言われて、無線越しに上官からさっき何かを言われていたことを思い出す。とにかく振り切ることに必死で、何も聞けてなかったのだろう。


『おいおい、お前集中しすぎだろwww』


「し、仕方ねえだろ!相手がめちゃくちゃ速いうえに運動能力も化け物だったんだ!こいつで最高速を出しても振り切れなかったんだぞ!?」


『お前がヘタクソなんじゃないかあ?おいおいw』


 なんだか、ホッとする。あの化け物相手に、俺は助かったんだ。生き延びたんだ。

 そう思うと、なんだかやり切ったような気持ちに………


『お、おい………レーダーにまだ反応が残ってるぞ?』


『はあ?ミサイル直撃でやられねえやつなんぞ………え………』


 その言葉を聞いて、慌てて周囲を見る。


「な、な………あ、あのバケモン、まだ浮いてやがるッ!?」


 そこには、あのヒトの形をした化け物が浮かんでいた。

 しまった!油断していたせいで回避が取れない、やられるッ!!!


『お、おーいニンゲン達よ。ワタシは遊びに来ただけで戦うつもりはないぞ~?』















 は?


 脳内に直接響いてくる少女のような声に、俺はただただ困惑していた。


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(sideシエラ)


 お、追いかけっこをしていただけで、よく分からない空飛ぶ棒でこうげきされたぞ………

 爆発するし、四本もくらったからそこそこ痛かった。でも、なんであんなものをワタシに………


 …


 …


 …ひょっとしてワタシ、ニンゲン達に敵と思われてるのか?


 だ、だとしたらマズいぞ!な、なんか言わなきゃ………


 …


 …


 …


「お、おーいニンゲン達よ。ワタシは遊びに来ただけで戦うつもりはないぞ~?」


 と、とりあえず思念魔法を使ってみたが、どうだ?どうだ?どうなのだ?流石に伝わったよな?

久しぶりに使ったし、間違えて別の魔法使ってないよな?



 ………ていうかひょっとしてさっきのは追いかけっこじゃなく、ワタシから逃げていただけなのか?

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