第27話 unknown

 E2C


 自衛隊の保有する早期警戒機であるE2C。そのコックピットで、二人のパイロットが雑談をしていた。


「機長、あれから全然帝国軍来ないですねー。なんかここまで何もないと逆に怖いですよ」


「ああ。戦争中とは思えんほど静かだな。それが不気味に感じるのは分かるさ。まあ連中が何を考えてようが我々の任務は変わらないんだ。任務に集中することだな」


 尖閣沖海戦以降、自衛隊は人工衛星による帝国本土の監視や、空自や海自による警戒を続けている。しかしながら全く帝国軍に動きはなく、自衛隊内では大規模な反撃も検討されていた。


 そんな状況で、E2Cは相も変わらず今日も何も起きない警戒監視任務についているのだが………


「き、機長、12時方向、当機の120km先からから所属不明の航空戦力が!時速1400km程でこちらへ向かって飛行中です!」


 ………訂正しよう。どうやら今日はそのが起きてしまったようだ。


「何だと!?落ち着け、帝国軍と決まったわけではない。とりあえず、お前は連絡をしろ!」


「は、はい!」


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 F15J (side篠田)


『良いか、例の所属不明の航空戦力は音速を超える速さだ。どの程度の武装を持っているかは不明だが、慎重に事にかかれよ』


「ええ、分かってます」


 無線越しに聞こえてくる、上官の声。その声はいつもよりも厳しい。

 今回のスクランブルはいつもと訳が違う。中露相手にやるときは、無線が使えたからある程度の距離を保っても警告が出来た。だが、今回の相手は無線が使えないらしい。


 クラートから貰った魔法通信機とやらも使えない。だから、なんとか領空に入らないように威嚇射撃や接近で警告をするしかないだろう。


 ………つまり、相手に非常に近づく必要がある上に場合によっては相手に敵対と取られかねない行動を取らなければならない。


 相当に危険だ。だが、やるしかないだろう。


『レーダーによれば、その近くに居るはずだ。もう目視で見えてもおかしくないぞ』


「確かにこっちのレーダーにも反応があります。でも………今のところそれらしきものは見えませんが………」


 良く目をこらして周囲を見回すが、戦闘機のようなものは何も見えない。


『おかしいな………レーダーに映っているのだからそれなりのサイズはあるはずだ………見落としていないか?もう一度レーダーに映っている方をよく見てみろ』


 そう言われて、レーダーに点が映っている方を向いてみるがやはり何も見当たらない。


「何も見当たりませんが………もう相当近くなんだから絶対に見えるはずなんですがね、うーん………ん?」


 一瞬何かが見えた。

 慌ててスピードを落とす。


「な、な、な………空を飛んでる!?」


『おい、どうした!?ついに見つけたんだな!』


「そ、それが………そのお………」


 動揺の余り、篠田は見てしまったことをうまく言葉に出来ていない。


『例の航空戦力を見つけたのだろう!?早くどんな特徴なのかを言え!』


「………いや、しかし………疲れてるのかなぁ」


『良いから早く!悠長にしてる暇はないんだ!』


 無線越しの怒鳴り声に、篠田はやっと返答する。


「人が………人が空を飛んでるんです!あれは………何なんだ?」










『………はぁ?』


 先ほどまでの怒気を含んだ声は、困惑と混乱を感じられるものへ変わっていた。

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