第7話 クラート王国との会談①

 2023年3月19日

 小笠原諸島近海 クラート王国軍艦【カイング】


 日本への外交団を乗せた船団の旗艦である【カイング】。その軍艦の甲板で、一人の少女が老齢の男と何かを話していた。


「あの、ほ、本当に私が日本国との外交団代表をしなきゃダメなんですか?」


「しなきゃダメ、ではなくすることが出来る、のですよカーラ王女」


 少女の名前はカーラ。クラート王国の第一王女にして、日本との外交団の団長である。話している相手は彼女の執事だ。


「で、でもぉ。相手は空飛ぶ化け物を持っているんでしょ!キングバードじゃ比にならないくらいの大きさの化け物ですよ!そんなの持ってる怖い国と交渉なんて絶対無理ですよ!?」


「無理かどうかなどやってみなければ分かりませぬぞ。それより、そろそろ待ち合わせの海域に着きます。港へと誘導してくれる日本国の軍艦が見えてくるはずです。ワクワクしますなあ」


「ワクワクなんてしませんよ!………ひょっとして近づいてきてるアレですか?あっちの」


 カーラが指をさす方向には、白っぽいような、灰色とも言えるような船が見えた。


「おお!きっとあの船でしょう。しかし、かなり遠くです。船とは全てこの距離からあれ程大きく見えるものなのですかな?」


「うーん。どうなんですかね。私としてはそんなことより日本国に着いた後の方が重要ですよ………はあ」


「数日はかかるでしょうし、今考えても仕方ありませぬぞ」


「そりゃそうですけど」


 その後も、しばらく二人は駄弁っていた。


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 2023年3月23日

 横浜港


「ついに日本に着きましたな!」


 横浜港についたクラート王国の外交団。

 彼らを真っ先に出迎えたのは巨大な港湾設備と巡視船『あきつしま』であった。


「ええ。着いてしまいましたね。というか、我々を誘導したあの真っ白い軍艦見てくださいよ。木でつくったものではなさそうですし、大きさも【カイング】の3倍はありそうですよ」


「船の大きさが国の強さというわけでは………」


「でも、あんなに大きな船を、それも木材以外で建造する能力はうちにはありませんよね?」


「そ、それはそうですが」


 クラート王国の外交団が日本に到着した。彼らが最初に驚いたのは、自分たちを誘導した巡視船の大きさだった。

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