死に水すら取れない




 己が身には流れてはいまい血汐で身を燃やす、八重のチューリップの花びらにくっつく清らかな雫たち。岩に身を委ねなければ。地に伏したままでは決して見られなかったであろうそれらを見て閃いたのだ。甘露だと。口に含めばたちまち傷が癒えて家に帰られると直感するも。どうしてか手を伸ばせなかった。






(2022.4.15)


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