第15話 1から説明しよう
—1—
「洋一が今まで脱落した人たちをそれで撃ち殺したの?」
「おい、こころ」
こころが洋一に聞く。
下手なことを聞いたらこの場で洋一に撃ち殺されそうだ。
「だって」
「俺が?」
洋一がこころに銃口を向ける。
「おい、洋一!」
パンッ。
みんなが目を瞑る。
「なーんてな、安心しろ。さっきので最後だ。それに脱落した人を撃ったのは俺じゃない。政府関係者だ」
「なんで1日目のゲーム開始直後に捕まった洋一がそれを知ってるんだ? それにその銃はなんだ? 高校生が銃なんて持ってないだろ普通!」
俺が思っていたことを洋一にぶちまける。
「そうだな。全部1から説明しよう。俺の過去を全て」
洋一が砂場に拳銃を置く。
そして話し出した。自身の過去について。
「俺は高校1年の時、別な学校に通っていた。文化祭の次の日、俺のクラスで選別ゲームが始まったんだ。選別ゲームの内容は的当てゲームだった。的当てはよく祭りとかでやるものだけど、選別ゲームの的当ては全然違った。的は俺たちクラスメイトでこの銃を使ってそれぞれを撃ちあうものだった。クラスを3つのグループに分け、1つのグループが残るまでゲームは続いた。初めはみんな抵抗していて誰も銃を使わずに過ごしていたんだけど、数日経ったらマスターが特別ルールを出して——」
洋一がこの学校に来る前にも選別ゲームをやっていただと。
選別ゲームは1回勝ち残れば新国家に入れるんじゃないのか?
だが、嘘を言っているようには見えない。
「マスターってのはなんだ?」
俊介が聞く。
「ゲームマスターだ。そのマスターがゲームのバランスを見て特別ルールを出してきたんだ。それで強制的に戦わなきゃならなくなってみんなどんどん死んでいった。最後に俺のグループの4人だけが生き残った。銃に残ってたのは体育館の時の1発だけだ」
「生き残った後はどうなったんだ? 新国家に入れるんじゃないのかよ」
俺が先程の疑問を洋一に聞く。
「2人は新国家に入れた。俺ともう1人は怪我が酷くてな。後で指定された学校に行けとマスターに言われて別々に。それで俺はこの学校に来たんだ。転校してきて驚いたぜ本当」
「何が?」
「マスターもしれっとこの学校に居やがったんだ。普通に学校に溶け込んでやがった」
マスターが初めからこの学校に居た?
もしかしたら俺らの中にマスターがいる?
「誰なのマスターって? もったいぶらないで早く教えなさいよ」
里菜が怒り口調で洋一に聞く。
「あぁごめん。マスターは林だ。みんなにとっては林先生だよ」
「えっ!? 嘘でしょ」
みんな開いた口が塞がらない。
あの熱血で優しい、生徒から人気が高い先生がこのいかれたゲームのゲームマスターだなんて。
「それにこのどろけいは、前と変わっていなければそろそろ特別ルールがくるはずだ」
「前と変わっていなければって何だ? どろけいのことも知ってるのか?」
「こっちに来る前、病院で治療してるときに聞いたんだよ。だから大体は分かる。同じかどうかは分からないけど」
それから洋一に話を聞いたところ、泥棒チームで脱落するのは逃亡している人のみで捕まっている人は脱落にならないらしい。
だが、ルールにゲーム終了後、最後まで捕まっていた人は脱落する。とあるのでかなりリスクがある。
洋一はどろけいが始まってすぐに捕まり特別ルールが出るまで、自身の安全の保障の確保と敵の様子を観察していたそうだ。
前の学校でも『脱落=死』だったという。
洋一はいつの間にか泥棒チームで俊介に並ぶリーダー格の1人になっていた。
それにしても特別ルールとはどんなものなのだろうか?
—2—
「林マスター、泥棒も警察も数が同じくらいになりましたけどどうなさいますか?」
「よしっ、これでいこう」
林がスマホで作った文面を政府の佐々木に渡す。
「かしこまりました。特別ルール始動っと」
佐々木が送信ボタンを押した。
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