第13話 救出作戦開始

—1—


10月12日(金)


 体育館でごうがそわそわと動く。


「どうしよう。もう3日目だよ洋一。はやとたち助けに来るかな?」


「はやとならきっと来るさ」


「俊介」


 俊介が自信をもって剛に答える。

 隣には夏帆もいる。


「ちょっと待ってろ」


 洋一はスマホ片手に3人から遠ざかる。


「もしもし。はやとか?」


『洋一! なんだよいきなり』


「助けにこい。このままじゃ全滅するぞ」


『言われなくても分かってるよ』


「そうか。最後に1つだけ、誠には注意しろ」


『なんでお前にそんなこと言われなくちゃならないんだよ。誠の何を知ってるんだ!』


 はやとに電話を切られた。


「何を知ってるんだって全部知ってるんだよ。それにこのゲームが辛くなるのはこれからなんだ」


 洋一が小さい声で呟く。


「剛、はやと助けに来るって」


 洋一が剛に伝える。


「はやとに電話してたのか。よっしゃー、待ってるぜはやとー」


—2—


 3日目の目覚めは最悪だった。

 洋一からの電話で起きた。

 何が誠には注意しろだ。何考えてるかわからない洋一の方がよっぽど怖いわ。

 ブーブーブー、ブーブーブー。


【本日のゲームは、8時30分から行います。学校に登校しなくて構いません】


 昨日と同じか。

 こころと桃はまだ布団の中にいた。揺すって起こす。


「こころ、桃も朝だぞ。起きろ」


「んー、おはよー」


 こころが俺に抱き着いた。


「おい、こころ寝ぼけてるって、これは俺の腕だって」


「はやとくん、おはよう」


「おう、おはよう桃。ちょっと手伝ってくれ」


 桃と一緒に俺からこころを引き離した。


「じゃあ、後は任せた」


 桃にそう言い俺は廊下で雅人に電話をかけた。

 もちろん出ない。


「雅人。今日の午前中、俺たちは俊介を救出しに行く。雅人と翔子の力も必要なんだ。よかったら一緒に救出に来てくれ」


 留守番電話にそう残した。聞いてくれればいいんだけど。

 ピンポーン。

 桃の家のチャイムが鳴る。来たか。


「はやとくん、出てもらってもいいかな?」


「はいよ」


 玄関に行きドアを開ける。


「おう。里菜、理久」


「おはよう。はやと」


 里菜と理久を呼んでおいたのだ。これからの作戦のために。

 部屋に座り救出作戦の最終確認をした。


「昨日こころと桃が学校を調べてきてくれたんだけど、正門から入って大丈夫だと思う。誠も協力してくれるから上手くいくはずだ」


「大丈夫なのか? 敵を信用して」


 理久も洋一と同じようなことを。だが、客観的に見れば仕方ないか。

 起きてから時間が経ったので頭が働くようになった。


「誠は信用していい。安心しろ」


「そうか。わかった」


 理久がコクコクと頷く。


「雅人と翔子は?」


「電話したけど出なかった」


「そう。なら私たち5人で行きましょ!」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【8時30分になりました。どろけい3日目ゲームスタートです!】


「行こう!」


 学校の正門へ向かう。

 ゲームが始まったというのに警察を1人も見ない。

 いつもなら前半戦は、全力で追いかけてくるのに。誠が上手いことやってくれてるのか?

 それとも明日香と桜の新しい作戦か?


 9時ジャスト、正門に到着。

 正門を抜けるとすぐにグラウンド、左手の奥に校舎があり、校舎の右に体育館がある。

 体育館の前に誠がいた。こちらに気付き手を振っている。


「明日香ちゃんと桜ちゃんたちは、西地区に行ってるよ!」


 やはり誠が上手くやってくれたようだ。

 俺たちは体育館に向かって一直線に走る。


「やった! 剛を助けられる」


「里菜、喜ぶのは助けてからにしろよ」


 と言いつつ俺も思わず頬が上がってしまう。これでみんなを助けられる。


 誠がポケットに手を入れた。ポケットから笛を取り出し、思いっきり吹いた。学校の敷地外まで笛の音が響く。


「えっ? なに、なに?」


 こころがキョロキョロと周りを見る。


「何やってるんだよ誠?」


「泥棒が来たぞー!」


 誠が叫ぶのと同時に校舎の中から明日香と桜が姿を見せた。

 そして、次々に物陰から警察の奴らが現れた。


「誠、お前」

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