台所の排水詰まりを自力で解決した話

沖綱真優

第一部 見慣れぬ穴の正体

一の一 縦穴の出現 〜困惑〜

 二〇二一年十二月二十九日のこと。

 年内最後の勤務を前日に終えて、この日は大掃除だった。


 玄関の靴、傘、ゴミ回収日までと重ねてあった新聞の束をどかして、細い繊維のほうきで三和土の砂やほこりを掃き出す。


 続いて、玄関外側から階段を掃きながら降りて、植栽のあたりに塵をまとめる。

 石積みの植栽スペースの木は、家を購入時に植えられていた三本のうち二本がすでに枯れており、残った一本だけが落ち葉をさんざか落としている。


 植栽のキワには風に吹かれた落ち葉と砂やごみが溜まり、普段からコマメに掃除していないのが丸わかりの状態だ。


 玄関から掃きだしてきた砂埃と落ち葉、どこからか飛んできた袋麺の外袋も合わせてゴミ袋に詰めていく。

 小さな袋はすぐに一杯になった。口を括り、屋外に置いてあるゴミ箱に捨てようと、家の側面へ向かう。


 我が家の側面外壁沿いには、犬走りというのか、砂利を敷いた通路がある。


 キッチンスペースから直接外に出られる勝手口があって、コンクリ打ちっぱなしの狭いポーチと階段一段が付いており、その階段部分にフタ付きの四角いゴミ箱を置いてある。


 毎日の片付けものの仕舞いに、キッチンから片足だけ降ろしてフタを開け、セットしてある市指定ゴミ袋の中に新聞紙で包んだ生ゴミ入り小袋を捨てる。

 寒い時期も暑い時期もできるだけ外には出たくない、さっさと屋内に戻りたい横着者には丁度良い置き場所なのだ。


 しかし、この日、ゴミ箱は定位置になかった。

 外壁にくっつけて置いてあるゴミ箱が、十数センチはズレていて、通路の真ん中寄りにあった。


 ゴミ箱の本来の辺りに、直径十センチほどの穴が開いていて、黒い水面が見える。

 周囲には、水漏れの跡と黄土色っぽい汚れ、それから、穴の上にハマっていたはずのフタが転がっている。


 水漏れの跡は階段下の砂利部分にも続いていて、長靴の足で砂利を動かせば、濡れた地面が見える。砂利にもいくらか黄土色の汚れが付いていた。


 持っていた枯れ葉入りゴミ袋をゴミ箱に入れ、ゴミ箱をポーチに移動させる。

 ビニール手袋の手でフタを拾う。フタ自体はそれほど汚れておらず、表面に『おすい』と刻まれている。


 フタで隠していた穴、『おすい』の中を覗き込む。

 夕方だが、家の側面外壁のそば、穴のキワひたひたの水は暗く、奥は見えない。


 

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