4人コラボ マーダーミステリー
マーダーミステリーについて少し調べてみた。
せっかくコラボでやる訳だしね。
マーダーミステリー──通称マダミスっていうのは、推理ゲームの一種を指す言葉だという。
推理小説の登場人物の1人になって、それぞれに与えられたミッションの達成を目指す、そんなゲームだ。
マーダーを殺人、ミステリーを推理小説って訳すことができるから、本当にそのままの意味だね。
このゲームではその名の通り、だいたいの場合において殺人事件が起きる。
中には『おやつを盗んだのは誰だ?』みたいなマダミスもあるらしいけど、ほとんどのマダミスでは開幕でNPCの死体が発生する。
プレイヤーはその場に居合わせた人物になりきり、殺人事件の推理をする。
犯人は犯行がバレないように、それ以外は犯人を見つけるために推理していく訳だが……マダミスにおいて特徴的なのは、それぞれの登場人物が皆、各個人に与えられた隠しミッションがあるという点だ。
例えば『エンディングまでに◯◯のアイテムを確保すること』とか『自分が◯◯であることをバレてはいけない』とかね。
マダミスでは、投票によって最多得票者になった人物が物語の犯人として結論付けられるんだけど、中には『真犯人を最多得票者にしない』なんて個人ミッションもあったりする。
人狼ゲームで言えば『狂人』的なポジション。殺人には関与してないが犯人側に立つ、そんなミッションだって存在する。
つまり、皆が犯人探しに協力的じゃない場面も存在し得る。この点を考慮する必要があるみたいだ。
まぁ、あとはもうやってみて、だね。
結局のところ、やってみないことには何にもわからない。
シナリオによって参加人数も議論時間も議論回数も何から何まで全部違う。異世界物のマダミスもあればSFチックなマダミスだってある。
変な固定観念にとらわれていると、実は殺人のトリックに催眠術が使われてたり、魔法が使われてたりなんてこともあり得る。
何でもありの推理ゲーム、それがマダミス。
調べる限り、ざっくりこんな感じみたい。
今回やるマダミスシナリオも、事前に簡単なあらすじと登場人物の説明資料をもらったけど、この時点であんまり推理できることもないんだよね。
まぁ、俺自信が推理苦手っていうのもあるけど……。
マダミスはロールプレイを楽しむことが一番らしいからね。
ロールプレイを、コラボを、素直に楽しもうかな。
【マーダーミステリー】透明人間は見えない【アキラ/アキト視点】《指宿アキラ》
同接:486人
ボードゲームのような卓上の盤面にカードが並んでいる。
その下には今回のコラボ4人のアイコンが並んでいた。
司会進行役の金髪アイコンのお嬢様が流れるようなスムーズさで配信をスタートする。
「ワタクシがお嬢様系VTuberの
「皆さんどうもこんばんは。Vすきアキラこと、指宿アキラです。PL1のメナシ家長男アキト役をやらせていただきます。名前が近くて唯一の男の子ということで、選びました。マダミスは今回が初めてで、あと皆さんとコラボできるとは思っていなかったので、めちゃくちゃ緊張してますが精一杯頑張りたいと思います」
全員が初めまして。そして、全員俺が昔スパチャを送ったVたちだ。
どういう経緯で、俺を誘ってくれたのかはわからないけど、普通に嬉しかったりする。
コメント:マダミスだーー!!
コメント:よくわかんないけど楽しみ!!
コメント:いきなりの4人コラボでびっくらぽん
コメント:このシナリオか
コメント:ネタバレ現金
コメント:女の子とコラボとか炎上しない?大丈夫?
コメント:大丈夫だろ。アキラは奥さんラブだから
コメント:コラボ相手のファンがどう受けとるかやな
「はい、よろしくお願い致しますわ。では続いて
「……ゲーム配信用アンドロイド井川#111。PL2、メナシ家長女、トーカ役をやる。マダミスは2回目だけど初心者と同じ。頑張る。……アキラとは初めまして、よろしく」
青髪アイコンの男の子?が、中性的な声で自己紹介をする。
メナシ長女役で、長男のアキトにとっては妹に当たる。
緊張を隠して「初めましてー」と返事をした。うん。普通に返事できたはず。
コメント:男の子?か?
コメント:ハジメマシテ
コメント:アキラ緊張してんのか
コメント:女の子役ってことはつまり……ハッ
コメント:井川くんちゃんは性別不明
コメント:アキラと親子くらい年離れてそう
「はいはい、それでは最後
「いちえんじゃないよ、いちまどかだよっ!! というわけで、今日はマダミスやっていくよー!! ……マダミスって何? 分かんないけど頑張ります!! PL3、メナシ家使用人見習いの少女、スバルちゃんやりまーす!! アキラさん、初めまして!!」
元気いっぱいの声で自己紹介をしてくれたのは、赤髪アイコンの少女。
メナシ家使用人見習いの少女。ぶっちゃければ事前情報だけならこの子が雰囲気一番怪しい。まだ何もわからないけどね。
「よろしくね」と返事をした。うん。俺は平常心。
コメント:っ!?
コメント:声デカすぎぃ
コメント:耳が一瞬逝きかけた……
コメント:元気良い子
コメント:やっぱアキラ緊張しとる
コメント:声がちょっと震えてて草
コメント:ドジっ子メイドタイプと予想
コメント:皿とか平気で何枚も割りそうwww
コメント:使用人見習い……ふーん
「はい、それでは全員の自己紹介も済んだところで、マーダーミステリーについて、わからないという視聴者の皆様もいらっしゃると思いますので、簡単に説明致しますわ」
一通りの自己紹介が済んだところで、お嬢様が進行を始める。
「マーダーミステリーとは、推理小説の登場人物になって、とある事件に巻き込まれた1人になりきって話し合いで推理を進めていくゲームになりますわ。そして、1度プレイしてしまうと、2度とプレイヤーとして遊ぶことができないのが特徴ですわ」
「え? そうなの?」
「……1回プレイすると謎解きのトリックが分かる、から」
「なるほど、確かにその通りだね」
「ワタクシはこのシナリオを以前プレイしてしまったので、今回GMとして卓を組ませていただいたんですの。ですから、もしこのシナリオをプレイしてみたいというそこのあなた!! お帰りください。そして、自身のプレイが終わったら戻ってきてくださいませ。また、視聴者の皆様に言っておきますが、初めてこのシナリオを見るという方もいらっしゃいますので、コメントでのネタバレはお控えください」
コメント:へー
コメント:ネタバレってどこまでのはなし?
コメント:例えば感想をツヴィッターで呟くときも『あの人の推理が良かった』がネタバレになる
コメント:推理する側の人間って分かっちゃうからだね
コメント:ほぇー
コメント:ワイ初見
コメント:ネタバレ有りで見たいやつはGM視点いってこい
「それではさっそく、始めていきたいんですけれども、皆様準備はよろしいですか? 」
「OK!!」
「……大丈夫」
「うん、いつでもいいよ」
お嬢様が全員の準備を確認し──スイッチを切り替えた。
それでは──
「マーダーミステリー『透明人間は見えない』開幕です」
◇◇◇
『あらすじ』ーーーーー
明治時代。
それは、日本の開国により欧米文化が急速に浸透した時代。
子どもは学校へ行き、大人は新聞を読むようになった時代。
電気、ガス、鉄道が日本中に普及していった──そんな時代。
人里離れた山奥に、とある
およそ1年ほど前の火事によって全焼したその屋敷はひと月前に、焼ける以前と全く同じ姿で再建された。
屋敷は1年ぶりに華族一家を迎え入れる。
そんな屋敷にはとある噂が立っていた。
「あの屋敷、再建されたんだって」
「ああ。透明人間が住んでるっていう、あの屋敷のことだろ?」
「バカバカしい。村の
屋敷が再建されたと聞き、山の
「あの屋敷の奥さん、火事で亡くなったんでしょう?」
「行方不明になった息子が火を点けたって聞いたぜ──」
「──た、大変だっ!?」
そんな村人たちの会話を中断させたのは、噂の屋敷の主が殺害されるという、事件の知らせだった──。
屋敷の主、メナシ家当主であるメナシトーヤが死亡したのは昨晩のことだった。
その時間屋敷にいた者は「当主の息子」、「娘」、そして「使用人見習いの少女」の3人。
誰が、何のためにトーヤを殺害したのか。
それとも、3人の他にも容疑者がいたのか。
そして、村に流れる「透明人間の噂」の真実とは──。
ーーーーー
『メナシ家について』ーーーーー
メナシ家。
明治政府が新たに設けた特権階級──華族の一家。
当主のトーヤ、妻のトア。
双子の息子であるアキトとカズト。
1人娘のトーカの5人家族。
男執事1人と女使用人1人が働いていた。
1年前の火事によって、トアは死亡。
アキトの弟であるカズトは行方不明になっている。
屋敷の再建により、バラバラになった家族は元の家へと集まった。
火事で火傷を負った女使用人の代わりに、1人娘のスバルが使用人見習いとして働くことになった。
ーーーーー
『キャラクター』ーーーーー
●ナトリ(GM)
メナシ家の男執事。
事件当時は山の麓の村へ買い出しに出掛けていたため不在だった。
●メイ(女使用人)
メナシ家の女使用人。
1年前の火事で火傷を負い、娘のスバルを使用人見習いに推薦し自身は隠居。
●トーヤ(この事件の被害者)
メナシ家当主。
アキト、カズト、トーカの父親。
●トア(トーヤの妻)
10年前、何者かに襲われ植物状態となる。
1年前の火事で死亡。
●カズト(トーヤの息子)
トーヤの息子であり、アキトの双子の弟。
生まれつき左目が見えない。
1年前の火事の後、行方不明になっている。
◯アキト(PL1)
トーヤの息子であり、カズトの双子の兄。
生まれつき右目が見えない。
◯トーカ(PL2)
トーヤの娘。
生まれつき両目が見えない。
◯スバル(PL3)
メナシ家の使用人見習いの少女。
使用人として働いていた母の代わりにメナシ家に仕える。
ーーーーー
◇◇◇
「はい。それでは、皆様に
「ハンドアウトって何?」
「一般的には講義とかで事前に配布する印刷物のことかな」
「……マダミスだと、各キャラクターの詳細な情報が書いてある。隠したい秘密、持っているアイテム、事件当日の動きとか」
「そうですわね。各々に与えられたミッションもここに記載してありますわ。15分、時間を設けますので、皆様にはここでHOを読んでいただいて自分のキャラクターの深掘りをしていただきますわ」
「へぇー」
コメント:うおー
コメント:当事者じゃないのに緊張してきた
コメント:ガンバえー
コメント:誰が犯人なんだこれ
コメント:お嬢様朗読とか向いてそう
コメント:キリッとスイッチ切り替えててかっこよかったね
「さて。ネタバレ防止のためここからは、プレイヤーの皆様はコメントは閉じて見えないようにしてくださいませ」
「ほいほーい」
「……りょ」
「はーい」
「それでは15分タイマー、スタート」
◇◇◇
っふー。
めっちゃ緊張してきた。
落ち着けー。
よし。
まぁ、プレイヤーの人数は3人だし、俺が犯人じゃなかったら残り2人のうち片方が犯人になるわけで。
50%の確率で犯人当てられるんだから。
気楽にいこう……。
犯人じゃありませんように。
犯人じゃありませんように。
犯人じゃありませんように。
チラッ。
『あなたはこの事件の犯人かもしれない』
「どぅぇっ!?」
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