時は流れて
【ゼータの伝説 ブレイバーズ オブ ザ ワールド】今日も世界を救わない part8《指宿アキラ》
同接:182人
「皆さんどうもこんばんは。Vすきアキラこと、指宿アキラです。それじゃあ今日も引き続き『ゼータの伝説』をやっていこうと思います」
コメント:待ってました!
コメント:もうそろそろ終盤かな?何はともあれ楽しみだ
コメント:まだ活動してたんだ
Vとしての初配信を終えてから、早くも1ヶ月が過ぎた。
1ヶ月前の初配信では結局のところ『不倫して活動休止した元ワオチューバー』という誤解を解くことはできなかった。
初配信で語った『活動休止に関する3つの原因』について、その内の2つを『家族に関するプライベートなことだから』と言って詳細を伏せたのが良くなかったらしい。
『全部話してくれるんじゃないのかよ』
『言わないのはやっぱり不都合なことだからだ』
そんなコメントがチラホラ見えた。
ツヴィッターの告知では全部話すなんて書いてないし、質問にはできるだけ答えたいとだけしか記載していないから言いたくないことに関しては発言を伏せても問題ない、と俺は思っていた。
ただ、配信を見てくれていた人たちの中でそれに納得した人は少なく、疑惑がより信憑性を増したと捉えた人の方が多かったみたいだった。
配信で言わなかった残り2つも含めて『活動休止に関する3つの原因』を分かりやすく並べるならこんな具合だ。
① 自身の動画スタイルの限界を感じたこと
② 実況活動に没頭して妻の誕生日を忘れてしまい娘に怒られたこと
③ 娘の受験勉強のために防音性能のある配信部屋を勉強部屋にリフォームしたため
大別するなら①と②が活動休止をする決め手になったことで、③が活動休止が長引いた理由だ。
①ついては、意外とすんなり理解してもらえた印象があった。もともとそういった噂が流れていたことで受け入れられる下地が整っていたためだとは思う。
視聴者目線で活動休止以前の俺が限界に見えていたという考察を見かけたときは、素直に驚いたものだった。まさか気付かれているとは少しも思っていなかったからね。
だからこそ、あのタイミングで活動休止したことは正解だったのかなと今にしてみればそう思っている。
そんなわけで、ここまではよかった。
問題はこの後の2つの理由、②と③を『家族に関するプライベートなこと』だから話せないと言ってしまったことだった。
視聴者からすれば、プライベートなことこそ『不倫』という疑惑に関連が深いところであり知りたかったのに、それを伏せられるのかという驚きと怒りがあったのだろう。
これによって、多くの視聴者に誤解を解消するどころかむしろ逆に疑惑を事実として確信させてしまった。
今振り替えれば、あまり良くない選択だったのかなと思う。プライベートなことを伏せても、誤解が解けると思っていた俺の見通しが甘かったとしか言いようがない。
でも、プライベートなことをわざわざ開けっ広げに話すことは家族に対してもネットリテラシー的にも良くないとは思っていたので、これ以上はもう手の施しようがないかなとも思っている。
だからもう、誤解を解消するのは諦めることにした。
これ以上下手にこの話題に触れても何も生まないし、奇跡でも起きない限りこの誤解が解けることはないだろうと思ったから。
『人の噂も七十五日』という
そう思って1ヶ月──。
──忘れられたのはどうやら、誤解だけでなく『俺という存在ごと』だったようだ。
◇◇◇
「世界を救わないって言いつつも、いつのまにやら物語も終盤に差し掛かってきたみたいだね」
コメント:前の配信で4体目の聖獣救ったんだっけ?
コメント:あとはラスボスだけやな
コメント:ホコラ回ろうぜ
初配信から1ヶ月後の本日まで、俺はVTuberとして活動を始め、ゲームの生配信をコツコツと積み重ねていた。
流石に毎日やっているわけではなく、2日に1回だったり3日に1回だったりとまちまちだったりする。
これは無理のないように活動するためで、メインチャンネルでの教訓を生かしている形だ。
これでまた毎日毎日配信ばかりしていたら梓と茜に怒られちゃうからね。
いま配信しているゲームは数年前に発売された『ゼータの伝説 ブレイバーズ オブ ザ ワールド』。どこまでも、どこへでも行けるオープンワールドと個性あるキャラクターたちが織り成すストーリーが魅力のゼータシリーズの最新作だ。
日本のみならず世界からも高い評価を受けており、『何時間でも遊べる』『メインストーリーが進まない』『寄り道が止まらない』といった具合にメインストーリーよりもむしろ自由に無限に遊べるオープンワールドが話題のゲームで気になっていたのだが、メインチャンネルでは単発の動画が多かったことと、プライベートでゲームをやる時間すら当時はなかったため、気にはなっていたがやらずにいたゲームだった。
そんなゲームに今さらながら、ドハマリしてしまったのが何を隠そう俺だったりする。
配信外でもやっているくらいにはハマっている。こんなゲームは久しぶりだった。
このゲームはメインストーリーを進めるのも面白いが、個人的には世界各地に散らばっているホコラの試練と呼ばれるミニゲームのようなものをやるのが好きだったりする。
クリアすれば試練クリアの証がもらえ、それを体力やスタミナに交換することができる。
ホコラの試練はパズルのようなもので、一見難しそうに見えるが、頭を柔らかくすれば解けるような難易度になっており、俺が解けるくらいのちょうどいい難易度なのがありがたい。
難しすぎるゲームはもうこりごりだからね。
「そうだね。ラスボス前にもうちょっと寄り道してホコラ巡りでもしようかな。ハートとスタミナ満タンにしてラスボスには挑もうか」
コメント:相変わらず堅実だねぇ
コメント:俺はその方が好きだけどね
コメント:つまんねーなコイツ
Vとしての活動開始の最初の頃こそ荒れていた俺の配信は、今では台風が過ぎ去った後のような穏やかさを持っていた。
まぁ配信を重ねていくごとに同時接続数も減っていき、総視聴者数と同時にアンチも減っているというような悲しい状態であるのが実態なのだが……。
たまに『まだお前やってたのか』『Vやめろよ』みたいな批判コメントが目につくが、それも少数。
ありがたくも俺の配信に付いてきてくれている常連さんたちには、そういったコメントは無視するようにと言ってあるので、コメント欄が荒れることも減っていたりする。
もはやアンチすら興味を失っている。
それが初配信から1ヶ月過ぎた俺の現状だった。
「それじゃあ今日は、とりあえずマップ東の未開の地を探索してホコラ巡りしつつ、サブクエストを回収していく回にしようかな。ラスボスへの挑戦は次かその次くらいの配信でやろっか」
コメント:おっけー
コメント:了解
因みにだが、いまだに他のVとのコラボはゼロ。
やはり『過去に不倫したやつ』という誤解が解けていないのが一番の原因だろう。
実はコラボの誘い事態はいくつかあったのだが、相手のことを調べてみると炎上系だったりゴシップ系だったりと、あまり良い話を聞かない人たちからの誘いしかなかったために、丁寧にお断りしていたりする。
自分からコラボを持ちかけるということはしていない。自分という存在がいまこの界隈から良く思われていないのは感じているから。そんな相手からコラボの誘いが来ても、困惑させるだけだろうということで自重している。
だから地道に活動を続けて、ファンを増やしていく。そんなことしか今はできないかな。
コラボまでの道のりは、思った以上に遠そうだ。
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