第16話 Sランク詐欺師、ライ

『帝国データベースの閲覧が完了しました、ライには犯罪歴があります。罪状は詐欺罪です』


「……詳しく聞かせてくれ」


『皇歴5498年、警備隊を偽証し賄賂を受け取り多額の利益を受け取っていました。

 発覚後は爵位を偽造し貴族のフリをして多額の借金をし、現在は逃亡中ということになっています』


「それじゃあ、Sランク冒険者ってのは……」


『99%偽証かと思われます。もし私がカイルなら、彼を信用することはないでしょう』


 警備隊、貴族と身分を偽り、今回はSランク冒険者という肩書で俺を騙すつもりでいたわけだ。


 そう考えると、無性に腹が立ってくる。


「シシー、ライについての情報を可能な限り集めろ」


『了解しました』


 明日、詳しい話をするということで、再びライと相まみえることになっている。


 その時こそ、ライに一泡吹かせる絶好の好機だ。


「待ってろよ、ライ……!」






 翌日。待ち合わせ場所であるラウンジに行くと、ライの姿はなかった。


『その昔、わざと決闘に遅刻することで、相手の平静を奪い勝利を収めた剣士がいたそうです。相手のペースに惑わされず、冷静に対処してください、カイル』


「わかってるよ」


 それから10分、30分と時間が過ぎるも、ライは現れない。


 待ち合わせの時間から1時間が経過すると、ようやくライが姿を現した。


「悪いな。遅れた」


「気にするな。俺も今来たところだ」


 挨拶もそこそこに、俺は本題を切り出した。


「そうそう……知り合いに聞いたんだが、昔、警備隊で面白い事件があったらしくてな」


「……へぇ、何があったんだ」


「なんでも、警備隊に成りすまして、商人から賄賂を貰う不届き者がいたらしい」


「…………ほ、ほぉ~~それは……肝の太いやつもいたもんだな」


 ライの顔が青ざめていく。


「他にも、爵位を偽造して貴族を名乗っていた奴もいるそうだ。なんでも、10億ゼニーも金を借りようとしたところで捕まったらしい。……いや、世の中には、とんでもないことを考えるやつがいるもんだよ。……なぁ、ライ」


「………………………」


「爵位を偽造するやつがいるんだ。……もしかしたら、Sランク冒険者を詐称するやつだっているかもしれないな」


「…………………………………………」


 俺が睨みつけると、ライは全身から汗を噴き出して視線をさ迷わせた。


 出会った当初の自信に満ち溢れていた面影はなりを潜め、消え入りそうな声でボソリとつぶやく。


「………………………なあ、お前……どこまで知ってるの?」


「全部」


 ライの顔が青を通り越して真っ白になる。


 その場にへたり込むと、ふるふると肩を震わせた。


「は、はははは……そうか……全部知ってるのか……。それじゃあ、オレは……」


「詰みだな」


 ブツブツと、何かを呟く声が聞こえた。


「……ん? なんか言ったか?」


 ゆらりとライが立ち上がる。


「フフフ……<健脚>、<縮地>、<高速移動>の購入とインストールが完了した。バレちまった以上、オレは逃げに徹するとするぜ!」


 俺に背を向け脱兎のごとく逃走を図るライ。


 せめてもの抵抗。だが、それも無意味だ。


「シシー、ロックだ」


『ライの身体を拘束します』


 シシーがロックを発動すると、ライの身体が動かなくなった。

 石像のように、その場に硬直する。


「なっ、なんだよ、これ。なんで動けねぇんだよ!」


「既にお前の中のナノマシンはハッキングが完了している」


「はぁ!?」


 スキルは使えず、身体も動かせない。


 こうなった以上、もはやライには抵抗する手段は残されていない。


「チェックメイトだ、ライ」




あとがき

現代の通信規格は4Gや5Gが主流ですが、二人のいる場所では100Gが使われています。

ライが一瞬で3つのスキルをインストールできたのはそのためですね

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