第27話 千の貌を持つ者

 駅前のファミレス、俺は額に青筋を浮かべた三人と対面していた。


「さて、何をやってたのカナ?」


「えーっとですね……」


 ――ヤバい、これなんて説明するのが正解なんだ? 和人は俺を見捨てて逃げちまうし……。


『さて、じゃあ悠馬! ご希望通り私達とあそこのファミレスでオハナシしましょう?』


『キチンと説明してもらうから』


『洗いざらい、ですわね』


『助けてくれ和人!?』


『悪い親友、俺にこの三人からお前を奪い返す力はない! よって大人しく運命を受け入れるんだ。俺はお前の冥福を祈ってるから』


『和人ォ! お前明日覚えてr……』


『ちゃっちゃと歩く』


『ハイ』


 ――そうだ! このまま黙秘するってのは……。


 そう考え着いた時、ウェイトレスのお姉さんが涙目で近づいてきた。


「その……お客様。ご注文は?」


「鳥ザンギ単品で」


「私は栗きんとんパフェで」


「ティラミスを一つお願いしますわ」


「ウ、ウィンナーコーヒーで」


「か、かしこまりました」


 そしてウェイトレスのお姉さんは注文を取り終え、そそくさと去っていく。


 ――ま、ビビるのも当たり前だよな。だって……。


 ソフィアは背後に邪悪な女神を、冬香は不動明王を。そしてエミリーヌは炎のオーラを放つ和風の女神を背後に浮かべてるんだから……。つーか何故和風の女神? ってあれイザナミか、そういえばイザナミの力受け取ってたもんなエミリーヌ。ハハッ……。


「えーとお前ら、こんな時間からそんなにガッツリ食っていいのか? 絶対太……ゴメンナサイ」


 俺がそう言った瞬間、場の空気が更に重くなった。


「さて、誰のせいだっけ?」


「まだそんな事気に出来るんだ! 余裕ね」


「鈴木悠馬。口は禍の元ということわざを知っていて?」


 ――全くもってその通りでございます。


「で、何がどうなってあんな事してたのか。教えてくれるよね?」


「黙秘します……噓です、全部お話しします。だからその……助けて姉さん!!」


 場の空気が重くなるどころか完全に場の空気が死に、身の危険を感じた俺はこの場に居ない姉さんに助けを求めた。


 ――殺される、このままだと殺される!


「じゃあもう一回聞くね! ねぇ、悠馬はどうしてあんな事をしてたの?」


 ソフィアが目の笑ってない笑みで聞いてくる。


 そして俺は、全てを包み隠さず話した。





「なんて言うか……男の子って」


「ホントに馬鹿」


「ですわね」


 俺が事情聴取されてる間に各々頼んだものを片付けた三人は、あきれた様子でため息をついた。


「第一、その服装でナンパってあり得ないと思うよ? 悠馬と一緒にいた男の子の服装も不思議だったけど」


 ――何!? これは俺とっておきの勝負服だぞ!?


「馬鹿な!?」


「鈴木悠馬は普段の服装は普通ですから、その本気とやらは出さない方が良いと思いますわよ……。正直、その服装でデートに来られた日には……」


「ときめく?」


「んなわけあるかぁー!」


 冬香はテーブルを叩いて立ち上がった後周囲の客の視線を受け、咳ばらいをしながら座った。


「んん! 兎も角。そこのマスコットキャラクター共に負けた挙句、焦って相手が誰かも確認せずにナンパを仕掛けたら、その相手が私達だったと」


「はいそうです……ん? そこの?」


 俺が振り返ると、疲れ果てた顔をした二匹がそこにいた。


「ひ、ひどい目に遭った」


「我、圧死するかと思った」


「え、えっと……そうです……」

 

 そして俺が三人の反応を恐る恐る伺っていると、三人は笑い出した。


「はえ?」


「い、いや。アウァリティアとロトに負けて、焦る悠馬を想像したらね」


「想像すると笑いすぎてお腹が痛くなりそうですわ」


「そうね、確かに爆笑モノね」


 ――どうせ俺は不思議生物二匹よりも下ですよ……。


「ふふっ。じゃ、帰りましょうか」





 そして月夜に照らされながら、家まで俺達は歩いて帰っていた。


「あれ? そういえばエミリーヌって家コッチ方向だっけ?」


「いえ。ソフィアさんと冬香さんにお誘いされたので、ご相伴にあずかろうかと……ご迷惑、ですわよね。やっぱり……」


「いや、いいっていいって! いつでも気軽に来てくれて良いからさ」


「感謝しますわ!」


「ねえ悠馬」


「ん?」


 ソフィアは振り返りながら、後ろで手を組みながら言う。


「悠馬のカッコいい所も優しい所も勇敢な所も。まだ全部とは言えないけど悠馬の良い所は、私達ちゃんと知ってるからね」


「そうね」


「ですわね」


 ――そういう事急に言うなよ……照れるだろ、全く……。


「お、おう。サンキュー……」


「さて、お腹空いたね! 早く家に帰ろう!」




 その後。いよいよ家の近くまで差し掛かった時、俺は何か寒気を感じた。


 ――なんだ!?


「どうしたの? 悠馬。顔色悪いけど」


 そう言って冬香が心配そうに俺の顔を覗き込んだその瞬間、冬香の背後から何かが猛スピードで冬香目掛けて飛んで来るのが見えた。


「危ないッ!」


 咄嗟に冬香を突き飛ばすと飛んできた何かは俺の手に張り付き、そのまま俺の体内に吸収されるようにして潜り込む。


「ガッ!? ガァァァァ!?」


 そして激しい頭痛に襲われ、俺は地面に膝を突く。


「ちょっと悠馬!?」


「どうしたんですの!?」


「え、なに一体……? え……ゆ、悠馬!?」


 ――消えろ。


 俺は脳裏で俺に何かを語りかけて来た、様々な生物や怪物に数秒おきに変化する何かに叫ぶ。


 ――消えろよ!

 

 その瞬間。神威と龍装がオートで発動して頭痛は納まり、脳裏から奇妙な怪物は消えた。


 ――大丈夫か悠馬!


 ――クソ! 少し対処が遅れた! 邪神の一部が体内に入り込んでやがる!


 その時。どこかから声がした。


「驚いた……」


「誰だ!」


 俺が立ち上がりながら叫ぶと、銀髪でハーフアップの赤い瞳をした少女が、その赤い瞳を輝かせながら暗がりから出てきた。



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 個人的な好みで銀髪ロングにしようとしたけど、完全にアウトだったんで変更しました。俺はなあ! 銀髪ロングが好きなんだよ!!!



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