第15話 渾身の一撃

 ルシファーを倒し終えた後。俺は龍斗の元まで一旦下がると、龍斗にまだ戦えるかどうか尋ねた。


「まだ行けそうか? 龍斗」


「大丈夫。後はアイツを倒すだけだ!」


 俺達が目を向けると、グレゴリーは笑った。


「ハ、アッハハハハハ! まさか本当にルシファーを倒すとは! 凄げぇよお前ら! ……けどさ」


「ゴフッ!?」


 気がつくと目の前にグレゴリーが移動していて、俺はグレゴリーの蹴りをモロに食らって吹き飛ばされた。


「悠馬!?」


「そんな満身創痍で俺に勝てると思ってるわけ?」


 俺は壁に叩きつけられ、膝を突きながらも龍斗に警告した。


「龍斗! 後ろだ!」


「なッ!?」


 俺の警告が功を奏し龍斗はガードしたものの、繰り出された突きによって空中に吹き飛ばされ、そのまま魔法で追撃されて地面を転がった。


「クソ! タラリア!」


 空中を跳ねながら、俺はグレゴリー向かう。


「遅い」


 しかし、前にいたはずのグレゴリーがいつの間にか俺の真横に居た。


「レイスラッ!? グアッ!?」


 咄嗟に剣を振るったものの、グレゴリーに掴み取られてしまう。そして俺はそのまま魔法を食らい、龍斗の真横の地面に叩きつけられた。


「グ……ヤベェ、これはあばらも何本か逝ったな……」


 ――逃げろ悠馬! コイツはお前が勝てる相手では!


 ――わかってる……だけどな。


 ルシファーに吹き飛ばされ、なんとか立とうと藻く冬香、壁にもたれかかったまま動かないソフィアや腹を抑えながら膝を突き、荒い息を吐く姉さん。意識を保つのもやっとなのに、刀を支えにして無理矢理動こうとする真司。折れた足を引きずり、こちらに来ようとする茜。


 そんな傷だらけの皆を見てから、俺はロトに言った。


 ――仲間を見捨てるなんて出来ないんでな。悪いけど付き合ってもらうぞ、ロト。


 ――ハァ……分かった。我も円華の作る飯が食えなくなったり、見知った人間が死ぬのは気分の良いものではないからな。


 ――お前、ホントに邪神かよ。


 俺は苦笑した。


 ――だから我は邪神ではないと! ……全く、貴様が死んだら我も死ぬのだ。絶対に死ぬことは許さんぞ。


 ――へいへい。


 俺はロトとの会話を終えると立ち上がり、こちらに向かって来ようとする茜を止めた。


「茜さん、来ないでください」


「なに、心配いらない。こんな状態でも肉壁くらいには……」


「もう少し自分の事、大切にしてくださいよ。貴方が俺の事を実の弟子の様に思ってくれてるように。俺にとっても、もう既に茜さんは守りたい大切な人達の一員なんですから」


「俺の事を守りたい。だなんて言うヤツは初めてだ……ホントにお前はおかしな奴だ。それにお前に自分を大切にしろ、なんて言われる日が来るなんてな」


「ハハッ、すいません。だから茜さんは俺を信じて、大人しく見ていてください」


「分かった……俺はお前の事を信じる。だから、必ず……必ず生きて勝つんだぞ!」


「ハイ!」


 俺は視線を龍斗に移すと、声を掛けた。


「オイ龍斗。いつまで寝たふりしてるつもりだ」


「ははは……バレた?」


「そりゃあな」


「なんかお邪魔そうだったからさ」


「余計な気は遣わんでもよろしい」


 俺は龍斗に手を貸して立たせると、肩を並べながら再び尋ねた。


「勿論、まだ行けるよな?」


「手厳しいね、悠馬は。」


 そんな俺達の様子を見て、グレゴリーは嗤う。


「へぇ、まだ立つのかよ。さっさと諦めてくたばればいいモノを。ま、いいや。まだ俺の気は済んでねぇんだ。俺の左肩の分、たっぷりと痛めつけて殺してやるよ!」


 そう言った瞬間。グレゴリーが消え、龍斗の真横に現れた。


「グッ!」


 俺は龍斗とグレゴリーの合間に滑り込むとグレゴリーの拳を剣で弾き、背中から斧を引き抜いたグレゴリーと鍔迫り合いになった。


「助かったよ悠馬!」

 

「気にすんな!」


 そして龍斗は鍔迫り合いをする俺の脇を抜けて、グレゴリーに攻撃を仕掛けるが避けられてしまう。


 俺と龍斗は瞬間移動を多用するグレゴリーに翻弄されながら、愚痴を吐いた。


「クソッ! さっきからちょこまかと瞬間移動しやがって!」


「なんなんだろうね、アレ」


「ん? これか? コレは俺が取り込んだ堕ちた神の権能だよ」


「わざわざご親切に説明ドーモ。って、ヤベェ!」


 グレゴリーの行使した魔法により光の矢が雨の様に降り注いで来たので、俺達は光の矢を剣で弾きながら隙を伺った。


「いつまで続くんだこの魔法!」


「さぁ、ね!」


 暫く防ぎ続けていると、光の矢の雨が止まった。


「今だ!」


「まて龍斗!」


 飛び出そうとする龍斗を止めようとしたが、一歩遅かった。


 龍斗はグレゴリーにスキルを発動させて切りかかるも、斧で弾き飛ばされる。


「一人じゃ無理だ!」


「ご、ごめん。つい……だけど、どうしよう? コッチの攻撃は全部当たらないし」


「……俺にいい考えがある」




 俺は龍斗に作戦を話終えると、突撃した。


「ハッ!」


「効かねえよ!」


 俺は攻撃を続けるが、すべて防がれてしまう。


「なんだんなんだ!? もう終わりか!」


 そして、背後から龍斗が襲い掛かった。


「見え見えなんだよ!」


 そしてグレゴリーが龍斗の方を向き、斧を振って龍斗を切り裂こうとしたその時。


「スロウ!」


 龍斗は斧をかがんでよけながら、手を構えてグレゴリーに魔法を掛けた。


「なッ!?」


 そしてほんの一瞬動きが遅くなり、腕を構えて防御しようとしたグレゴリーに、疾風迅雷・真を発動しながら俺はバインドを掛けた。


 スロウとバインド。スロウは三秒間だけ相手の動きを50%遅くしスキルの使用も同時に遅くなる、そしてバインドは一秒間だけ相手を動けなくしてスキルも封じる。

 どちらもクールタイムが馬鹿みたいに長い上、効果時間も短く普段はあまり使いどころのないスキルだ。

 だが奴の瞬間移動を一瞬だけ封じられる点でいえば、今は切り札と言っても過言じゃない。


「ハァァァ!」


 俺はディメンジョンスラッシュでグレゴリーの義手を切り裂き、紫電一閃・真をお見舞いした後。俺は拳を構え、グレゴリーに叩きつける!


「茜さんほど威力は出ないが! 喰らいやがれッ! ドラゴンズインパクト!」


 その瞬間。スキルを纏った俺の拳は更に金色に輝き、グレゴリーに突き刺さると、奴を吹き飛ばした。

 


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 い、いや。わざと睡眠時間削ったわけじゃないんです……ベットの上で寝られず。気がついたら部屋が明るくなってたんです……ご心配をおかけしました。

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