醜く、美しいもの

第1話

　創造された世界で生きてみたい。この世で生きていたって面白いことなんてない。

思い切りたい節がある。

　風が吹きすさぶ。

　あのフェンスを越してしまいたい。学校の屋上。

　いち、にい、さん。

「よっ」

「おい」

　ああ、ファンタジーであれよ。現実なんかでいなさんな。

「おい、何してんだよてめえ」

「痛い、痛いから離して」

　フェンスに弾かれて、アスファルトに頬をかすめた。空が青い。

「そんな覚悟でフェンス越えようとするな」

　＿＿あなたに会えた。そのことで世界は変わった。

　同じブレザーのシャツが眩しい。相手は私の名前を覚えてなどいなかったけど、私はその人を知っていた。この高校で一番といっても過言ではないほどチャラい、佐藤俊介（しゅんすけ）だ。

　あの冷たくて優しい目は忘れられない。