1章80 『闇を断つ原初の光』 ①


『――ギャハハハハ……ッ! 死ね……! 死ねェ……ッ! クソ虫どもがァ……ッ!』



 戦場に邪悪な嗤い声が響く。


 それの発生源は弥堂が持つ剣。



 罵声を喚き散らしているのは聖剣エアリスフィールに宿っているモノで、彼女は自分を管理人格だと名乗った。


 ちなみに以前は聖女という立派なご職業に就かれていたらしい。



 彼女の正体は初代聖女であるエアリスで、もう何千年も前に存在していた人物であると異世界の歴史に記されている。


 剣の達人であった初代勇者に相応しい武器を造る為に、伝説の金属を精製する炉の中に自ら身を投げてその魂を鉄に宿し聖剣と為った。


 そのように伝承されている。



 その聖女様は現在、嬉々として悪魔たちを虐殺していた。



 悪魔たちとの最終決戦が開始すると同時、弥堂の持つ聖剣の根元から霊子で編まれた糸が生えてきた。


 それはみるみる肥大化し周囲の物質を取り込みながらドス黒く変色して触手のようになると、勝手に悪魔たちを襲い始めた。



 先端を拳のような形に変えて悪魔を叩き潰したり。


 また無数の針のようなモノを射出して串刺しにしたり。


 勝手に暴れ出し、まるで殺しを愉しむかのような態度で、聖職者にあるまじき汚い言葉を喚き散らしていた。



(管理人格と言ったか……)



 弥堂が聖剣に与えている魔力を吸い上げて自立行動を起こしている。


 先程は【不誠実な真実トゥルーディストーション】と唱え、魔術や魔法のようなモノを使用していた。



 確かに弥堂自身も普段から気配を誤魔化す為に周囲の霊子に干渉をするようなことをしてはいたが、あれは子供だましにもならないような効果しか得られず、あれほどの影響を他者に齎せるようなモノではなかった。


 それに、あのような魔法名だか技名だか知らないが、弥堂自身にはあんなものを名付けた憶えがない。



『アッハハハハハハハ……ッ! 血を流せ! 臓物を捧げろッ! 我が神の前に首を差し出せ……ッ! アハッ! アハハハハハハ……ッ!』


「…………」



 無数に枝分かれした触手のそれぞれの先端が鎌のように変化し、それらを滅茶苦茶に振り回すことで一面に悪魔たちの体液と肉片がぶち撒けられていく。



 弥堂は棒立ちのまま自身の手の中の剣の柄をジッと視た。



 この剣は聖女であるシャロから渡された物だ。


 伝説の勇者にのみ使うことが出来る由緒正しき聖剣なのだと、彼女は穢れのない純真な笑顔で弥堂に差し出してきた。



『アハァ……! 死ね……もっと死ね……! 邪悪な魔族を生み出したクソ虫どもめ……! お前らを殺せば殺すほどにワタシの信仰は昂るの!』



 あまりに一方的な虐殺に、何匹かの悪魔が悲鳴をあげて逃げ出す。


 エアリスの触手はそれを掴み取って拘束し宙吊りにした。



『アハハー……泣いた……! 悪魔のくせにメスのように泣いた! そんなにメスになりたいならぁ、ケツから神の慈悲をぶちこんであげるわ……ッ!』



 そして一本の太い触手を捩じって先端を尖らせ、それをドリルのように悪魔の尻に突き刺した。


 体内を抉って進んだ触手は無数に枝分かれして体外に突き出てくる。



『ギャハハハッハア……! 【切断ディバイドリッパー】ッ!』



 哄笑と共に加護を発動させエアリスは悪魔を細切れにした。



 その凄惨な殺しを視てから弥堂はもう一度剣の柄を視た。



 弥堂自身、今までこの剣を碌に使えていなかったものの、これが聖剣なのだということについては特に疑ったことはない。



 だが――



『アッハハハハ……アーッハッハハハハハハハ……ッ!』



 これはどう見ても聖剣ではなく、呪いの魔剣の類にしか見えなかった。




 とはいえ、このまま武器に勝手をさせておくわけにはいかない。



「おい」


『なぁに⁉ ユウくんっ!』



 夢中で悪魔を殺しているように見えたが、それほど大きいわけでもない声で呼びかけると、エアリスはコロっと口調を変えて弥堂の顔に触手を寄せてきた。


 弥堂は非常に強い不快感を覚えたが必要なことを聞くことにする。



「……管理人格というのはどういうことだ?」


『お姉ちゃんが全部お世話してあげるってことよ!』


「……何を……?」


『魔術や霊子の操作のサポートから、『世界』から流れ込んでくる魔力の制御に、インターネットの検索のお手伝いまで! 何もかもお姉ちゃんにお任せよ!』


「…………」



 聞いているだけで正気を削られるようなテンションの女を無視して考える。



 後半部分はともかく魔術や霊子の操作という部分を聞き咎めた。


 もしかして、これまで弥堂でもギリギリどうにか使えていると思っていた魔術は――



「おい、魔術のサポートとは――」


「――なにを話しこんでいる……! ナメるなニンゲンがァ……ッ!」



 エアリスを問い質そうとすると、いつの間にか接近してきていたアスが殴りかかってくる。


 指摘の通り確かに戦場で油断しすぎていたようで反応が追いつかない。


 しかし――



『――ふざけんなこのクソ虫がァ……ッ!』



 特に指示をしていないがエアリスが勝手に迎撃した。



 太い触手の先端が大きな拳になりアスを殴りつける。



『まだウチのユウくんがお喋りしてただろうがァッ――』



 そして枝分かれした触手の鎌でアスの片腕片足を切り飛ばし――



『せっかくワタシに……、ワタシだけに話しかけてくれてたのに……!』



 触手の巨大な手でアスを地面に抑えつけ――



『死ね……! 死ね……ッ! 肉も魂も潰れて死ねェ……ッ!』



 無数の触手の拳で無茶苦茶に殴り始めた。



『アッハハハハハ……死ねェェッ!』


「…………」



 弥堂はその光景を何とも言えない気持ちで見る。



 一応あのアスは今回の戦いのラスボスのような存在のはずだ。


 絶体絶命のピンチの中で、今まで諦めていたはずの勇者のチカラに目醒め、これから決着をつけるはずだった。


 それがよくわからないポッと出の頭のおかしな女に一方的に蹂躙されてしまい、自分とは一体何だったのだろういう思いが蘇る。



 そんな風にボウッとしていると死角からまた暴走ダンプのようにサイが走って来る。



『あっ――』



 ちょうど自信を無くして強度が揺らいでいたタイミングだったので、弥堂はあっさりと撥ねられて死んだ。



『【殺害再開キリングリスタート】――』



 だが、それでも『死に戻り』は健在で、バックアップされた“魂の設計図アニマグラム”が修復され弥堂は甦る。



『ユウくん……っ!』


「……おい、あのサイみたいなヤツはどこだ? 探せ」


『ゴメンねユウくん! お姉ちゃんが余所見をしていたばっかりに……!』


「いいからあのクソッタレを探せって言ってんだよ」



 慌てて触手を引き上げさせたエアリスに命じるが、やはり会話が成立しない。


 彼女はやたらと心配するばかりで、復活した弥堂の身体に異常がないかを確かめるために触手でペタペタと触ってくる。さりげなく尻を弄ってきた。



「触るな。気持ち悪い」


『あっ……お尻硬い……、男らしい……尊い……』


「聞いてんのかテメエ」


『大丈夫。自信もって! ユウくんすごくイイお尻だよ! お姉ちゃんが保証してあげる!』


「そんなことで揺らいでねんだよ」



 激しく苛立ちながらも弥堂のメンヘラセンサーが強く警告を伝えてくる。


 間違いなくこの女は特級呪物クラスのメンヘラであると、そう確信があった。



『不安になっちゃったの? 大丈夫? お姉ちゃんのおっぱい揉む?』


「剣におっぱいはねえだろうが」


『任せて!』



 エアリスは力強く請け負うと、触手を蠢かせて二つの球体を創り出した。


 先端に微妙に突起物がついているそれをグイグイと弥堂の顔に押し付けようとしてくる。



「やめろ。気持ちワリィんだよ」


『あっ、そうか――』



 明確な弥堂の拒絶にエアリスは何かを思いついたのか、触手おっぱいを離して再び蠢かせてカタチを変えようとする。



『そういえばユウくんは乳輪がおっきい方が好きなんだったよね! お姉ちゃんうっかり!』


「死ね――」



 弥堂は球体に掌を押し付けるとノータイムで“零衝”を打ち込む。


 風船が割れるように左乳が破裂した。



『あぁ……っ⁉』


「あまり調子に――」


『――大丈夫! ユウくんが望むならお姉ちゃんリョナも頑張るから! ユウくんのしたいこと何でもしていいんだよ!』


「こいつ……」



 在りもしないこちらの性癖を勝手に受け入れようとする全肯定風お姉さんに弥堂は戦慄した。



「クソッ……! 精霊ッ! いきなさい!」



 そうして無駄なやりとりをしていると、ボロボロになったアスが龍の精霊を嗾けてきた。



『ユウくん――』


「黙ってろ」



 迫りくる巨大な龍を眼に映しながら弥堂は深く息を吐いて再びマインドセットをする。


 胸の紋章『勇気の証明デモブレイブ』が強く輝きだした。


 全身から蒼銀の魔力が噴き上がる。



 大きく足を踏み出して大地を踏み“威”を汲み上げる。


 膨大な魔力で強化した身体を適切に操り力を体内で加速させながら、突っ込んできた龍の鼻面に拳を突き入れた。



『【霊衝ストライク・ゼロ】――』



 その声とほぼ同時に龍の頭部内で暴れた運動エネルギーが弾けて巨大な龍を弾き飛ばした。


 背後にいた多くの悪魔を轢き殺しながら龍が地に堕ちて吹き飛ばされていく。



 弥堂はその結果を視て、それから自分の手を見下ろした。



「少しミスったが、しかし……」



 異世界での時間で、魔力も魔術も他の何もかもが思い通りにはならなかった。


 だが、エルフィーネが根気強く教えてくれて、どうにか身に着けることが出来たこの技だけは、確かに自分自身のモノだと実感できた。



『ユウくん! あんなメンヘラに教わった技よりもお姉ちゃんを使って! お姉ちゃんのほうが上手にいっぱいぶっ殺せるから!』


「うるさい黙れ」



 端的にメンヘラを切り捨てながら、まだいくらでもいる悪魔たちに眼を向ける。


 少し離れた位置にいる個体に眼をつけた。



 グッと拳を握る。



 零衝は基本だと師は言った。


 だが弥堂にはその基本をどうにか身に着けるだけで精一杯で、続いてエルフィーネが教えてくれようとしていた技については投げ出してしまっていたことを思い出した。



 その内の一つ、離れた位置にいる敵に威を徹す応用技を浮かべる。


 自身と敵との間にある空間に威を徹せば、触れずとも相手へ力を徹すことが出来るという、ちょっと意味のわからなかった技だ。



「あいつ二言目には技術だの修練だの言っていたが……」



 弥堂には一つの仮説があった。



 エルフィーネはハーフだがエルフだ。


 教義によって魔術の使用は禁じられていたが、彼女には大きな魔力があった。



 彼女はトンデモ武術を得意にしていたが、あれは実は膨大な魔力による身体強化でのゴリ押しなのではないかと、弥堂は疑っていた。


 だから、今なら自分にもできるような気がした。



 足を開いて拳を腰だめに構え、膨大な魔力で身体を十分に強化して爪先から捻る。


 そして虚空を拳で打ち抜いた。



 衝撃が空間を奔り抜け、離れた場所にいる悪魔を撃ち破裂させた。



 眼を開いてその結果に少し驚く。


 それから、握ったままの拳をまた見下ろした。



「……見てるか? エル……。俺にも出来たぜ……」



 ここには居ない彼女へ、報告のような感謝のような言葉を語り掛ける。



『エルフィーネなら泣いてるわよ』


「あ?」



 少し遠い目をしていたが、エアリスの言葉で一瞬で眉間が歪められた。



「なんでまた泣いてんだよあいつ。馬鹿じゃねえの」


『あっ、崩れ落ちたわ』


「まぁいい」



 何となくこのチカラを振るう為の心の置き方はわかってきたような気がする。


 弥堂は今度は自分で振るおうと聖剣を握り直すが――



「――クソォッ! 娘だ! あの娘を狙えッ!」



 アスが他の悪魔たちにそう命じる。


 追い詰められて混乱しているのか、単に形振り構わなくなったのか。



 人質にするつもりか、それともこちらの動揺を狙ってかはわからないが、悪魔たちはもう戦えなくなった愛苗を狙って走り出した。



「ちぃ」


『大丈夫、任せて!』



 弥堂も悪魔たちを追おうとしたが、それをエアリスが止めた。


 聖剣が輝く。



『【周到な執着レディ・ジェラシー】――』



 エアリスがそう唱えると、愛苗へ向かう悪魔たちの進路上の地面に魔法陣が浮かび上がった。


 そして――



 その魔法陣の上に踏み込んだ瞬間に悪魔たちがなます切りになった。



「これは――」



 魔眼で視ると魔法陣の上の空間には無数の糸が張り巡らされている。


 限りなく霊子に近い状態で編まれた糸だ。


 それがワイヤートラップのように侵入者を次々に細切れにして仕留めていく。



 これは空地でのボラフとの戦いで弥堂が使った技だ。


 しかし、わざわざ何日もかけて仕込んだあれよりも、遥かに大規模で強力なものだった。



『今のユウくんとワタシなら、これくらいのことは簡単に出来るわ』


「これもお前が……?」


『勘違いしないで。ワタシはあくまでサポートだけ』



 エアリスの声音が優し気なものに変わる。



『何度でも言うわ。自信を持って』


「…………」


『アナタは出来損ないなんかじゃない。その魔眼はスペシャルよ。その眼が霊子を知覚してくれたことで、ワタシもそれを観測して干渉出来るようになったの。だからこれはユウくんのチカラよ』


「俺の、チカラ……」


『初代の聖剣、二代目の魔法、そして霊子の支配。アナタは彼らを超えていける。三代目であるアナタこそが最強よ……!』



 弥堂は答えずに愛苗の方を確認する。


 悪魔たちは彼女に近づくのを諦めたようだ。というか、あちらへ向かった連中はもう皆殺しになっている。



「……さっき、二代目の魔法も使ったな?」


戯謳神話コール・ブレイブのこと?』


「そうだ」



 二代目が開発したオリジナルの大魔法、彼の残したノートに記載されていた中にあった、神話を再現する魔法だ。



『えぇ、そうよ。今のアナタはあのクソ野郎の魔法を使うことが出来るわ』


「そうか」



 弥堂は足に力をこめて地を蹴る。


 一瞬で愛苗の元まで移動した。



「少年……?」


「…………」



 驚いた顔で見上げてくるメロを無視して地に寝かされた愛苗の顔を覗く。


 ぼんやりとした彼女の目に自分は映っているはずだが、反応がない。


 今にも眠りに落ちてしまいそうな様子だ。



「……いけるか?」


『もちろんよ! 思い出して。アナタの“魂の設計図アニマグラム”には、全ての魔術師が血の涙を流して欲しがるような魔導書が完璧に記録されている! それらは全て、アナタのモノよ!』



 二代目のノートにあった一つの魔法を思い出す。


 記憶に記録されたとおりに魔術式を構成する。



 弥堂は片手を愛苗へと翳した。



「……び、とう……くん……?」



 そこでようやく彼女が反応する。


 このまま黙って魔法を行使してもよかったのだが、弥堂は彼女へ言葉を返すことにした。



「これは夢だ」


「えっ……?」


「お前は夢を見ている」


「ゆめ……?」



 もしかしたらこれが最期の会話になるかもしれないが、誠心誠意、彼女へ嘘を騙る。



「お前は勝った。クルードを斃し、お前は街を救った。それで戦いは終わった」


「でも……」


「その後のことは総て夢だ。魔力を使い切ってお前は気を失い、今も夢を見ている。俺のこの言葉も夢だ」


「ぜんぶ……」



 意識がはっきりしない愛苗に催眠のように言葉が染み込んでいく。



「クルードを斃した後には戦いは起こっていない」


「…………」


「悪魔の大軍などいないし、アスも撤退した」


「…………」


「俺も死んでなどいない」


「…………」


「お前も何も変わっていない。人間のまま、魔法少女のまま、何ひとつ変わってなどいない」


「…………」


「全部夢なんだ。目が醒めたら忘れてしまう。そんなありふれた悪い夢だ」


「…………」


「だから、安心して眠れ――」



 寝かしつけるようにゆっくりと喋りかけ、そして魔法陣を起動する。



戯謳神話コール・ブレイブ:【時止めの棺クロノス・コフィン】――」



 愛苗へと向けた指先が光を放ち、そして彼女の周囲を半透明の板のようなものが囲んだ。



「少年……⁉ なにを……」


「黙ってろ」



 やがてその棺のような魔法の結界は黒く変色し、中にいる愛苗は眠りに落ちたように動きを止め瞼を閉じた。


 呼吸のために動いていた胸すらももう動いていない。



「あいつの周囲だけ時間を止めた。これで少しは魔王化の進行を遅らせられるかもしれない」


「ホ、ホントッスか⁉」


「さぁな。どれくらいもつ?」



 メロをあしらうように短く答え、後半はエアリスへ問う。


 愛苗の傍で跪いて彼女の様子を確認した。



『いいところ30分ってところね。それに――』


「――あぁ。本当に時間を止めているわけじゃなくて、時間の流れを遅らせて誤魔化しているんだろ?」


『そうよ。だから――』



 弥堂は立ち上がり、再び敵へ向く。



「――どのみちあいつらを皆殺しにしなければならないのは変わらない」


『えぇ、でも――』


「――あぁ。十分な時間だ」



 聖剣を片手にぶら下げながら悪魔たちへ近づいていく。



「クソォォォ……ッ!」



 怒声を上げながら、アスは跳ね上がるようにして周囲の悪魔たちに飛びついた。


 クルードがそうしていたように大口を開けて他の悪魔たちを喰らっていく。



「ニンゲン風情が……、許さんぞ……ッ!」



 そしてエアリスに切り落とされた腕と足を再生し、こちらへ向かってくる。


 それを確認して弥堂も走り出した。



 お互いの中間点でぶつかり合う。



「何故……ッ! 何故貴様いきなり、こんな――」


「そういえばお前にはいいようにやられっぱなしだったな。借りを返すぞ」


「ナメるなァッ!」



 振り下ろされるアスの拳を片手で受け止め、至近で睨み合う。



 大悪魔を喰った大悪魔と、チカラに目醒めた勇者。



 超越者同士の強大な“魂の設計図アニマグラム”が放つ輝きが、周囲の空間の支配権を奪い合おうと互いを塗り潰そうとする。



 殺意と殺意が物理的な干渉を起こして空間を揺らし大地を捲った。



 何のチカラもなかったはずの弥堂は今や彼らと並び立ち、そして超えようとしている。


 身体の底から続々と湧き上がる魔力を衝動のままに解き放った。



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