第68話 休暇はもう終わりやで
そんなこんなで、ライムちゃんにデートという名の街案内をしてもらったり、カレーを店に出す準備を手伝っていたりしたら、あっという間に約束の50日が過ぎた。
ま、俺にできたのは味に関するアドバイスとか、ほかにこんなスパイス加えたらどう?とか、カレーそのものに関することだけだけどね。販売に関しては何もわからないからなぁ。
で、これから出発って朝に、ライムちゃんとお別れするはずが、何故か、宿の1階で、リーゼとライムちゃんがお見合いしていた。
「シダン、
リーゼがチラ、とライムちゃんを見てから言う。
「こんな…ううう…可愛い女の子っていうのはボクは聞いてないよー」
「あんれぇ〜言ってなかったっけ〜」
いや、そもそもだ、そんなことをいちいち報告するかなぁ。「いやー今日スパイス買いに行ったらそこの店主が可愛い女の子でさー」…それは男子校のノリだ。仮にも、女の子に話したりすることではないよね?
だが、リーゼが、それはそれは、何だか、めちゃくちゃに凹んでるのを見ると……ね。リーゼとは何もないよ?何もないのに、凹まれると、すげー罪悪感が生じるのは、俺もリーゼに少しづつ気持ちが傾いているんだろうな。
「何かねーちょっとね、噂には聞いてまさかとは思ってたんだよ!金持ちボンボンが、美人の
おいおいおいおい。あの時のことかい…何だか、ずいぶんと話が広まっているんだなぁ。
そんな凹んでいるリーゼに、ライムちゃんはニカッと見事なまでのビジネススマイルを浮かべて、話しかけた。
「あんさんがリーゼさんやね。安心してや、ウチはシダンはんとは、そういう関係じゃないん。あれはボンボンが面倒臭くて、諦めてもらうための方便ってやつや!シダンはんとは、友達というか、ビジネスパートナーやな」
「ホントに?」
「ホンマホンマ」
ライムちゃんも、俺もホントに疚しいことないのに、どうして俺はタジタジで、ライムちゃんはあっけらかんとしているのかなぁ。
「うううう…」
「ただ、ウチには
「あの伝説のギフト
知っているのか、リーゼ!
「その人を想っただけで、恋の可能性をジャッジ出来るっていう伝説のギフトじゃん!?」
ライムちゃんのギフトを聞いたリーゼが、急に様子を変えて、解説風に話しだした。え、そんなに有名なギフトなの?俺は初めて聞いたけどなぁ。
「シダンはんを強ーく慕ってる女の子がリーゼはん以外にも3人おんねん、そこは注意したってや」
「さ…さんにん〜!?」
このアマァ…爆弾投げ込みやがった。ライムちゃんを見ると目が合った…すっげぇニヤニヤしているじゃん…絶対にワザとだな!
「一人はアンでしょ…もう一人は幼なじみのロゼッタなのはわかる。あとは…え?カナカ村のカンナ?それともカトリーヌ様?誰!?」
キッ、と睨んでくるリーゼに、またまたタジタジしてしまう俺。おかしいなー、俺、疾しいことないはずなのに、何でこんなにリーゼに対して、後ろ暗い気持ちになっているんだろう?
「えーと?誰でしょう??」
「シダン、目を背けて…わかってるんだね、その感じ!誰!?白状しろー!」
うぬう。ここまで明かされれば、隠しきれるものでもあるまい。俺は正直に話すことにした。
「ええと、ほら小さい頃に会ったって話した
「あーシダンの髪の毛食べたって話していた子?なんでその子なの?」
「そうそう…俺もなんでだかわからん…」
俺もリーゼも首を傾げていたら、俺らの会話を横で聞いていたライムちゃんだけは目を見開いていた。
「髪の毛を食べたァ!?」
ライムちゃんが素っ頓狂な声を上げた。
「なんかまずいの?」
「マズいちゅーか、なるほど、そういうことね」
「そういうこと?」
「
「えええええ!?いや、俺そんなつもりじゃ…」
まさか、あんなほとんどデスエンカウントというか、襲われたに近いあれに、そんな意味があるとは…。
「幼かったと言うてたな…まぁ、そういうことなら、恐らくそのルカって子もそれを意識した訳じゃないんやろうけど」
「おおお」
「そもそも好みの相手でないと、本能的に取り込みを拒否やからなぁ」
「oh……」
「要するにルカって子にとって、シダンはんはバリ好みだったちゅーわけや」
あれ?何か知らぬ間に詰んでる?
「しっかし珍しいこともあんなぁ」
「珍しいって、何が?」
「いんや、
魔力。本来は体内にはなく、大気中に存在しているものだ。大気中の魔力は一定のため、魔法の出力には限界がある。
しかし、
「
では、何かの間違いでは、と言おうとして、ふとルカの言葉を思い出した。
『
ルカはそう言ってた。つまり、俺に魔力をルカは感じていたのだ。でも、俺は
しかし、
「ギフトか…」
「そうだよ!シダンのギフト…」
「ギフトの特性に
そういえば、言ってた。『地?水?の
「あ、でも、
「もし…ルカに会うことがあったら気を付けるよ…」
沈黙。ライムちゃんがよく喋るから、長くなってしまったがそろそろ先に行かないとな。そう思ったところで、リーゼが、すく、と立ち上がった。
「シダン、そろそろ行こっか?」
「そうだな…じゃあライムちゃんもまた、いつか…カレーの店楽しみにしてるから」
手を差し出すと、ライムちゃんは握り返してきた。
「ほな、またな。この1か月半、いろいろとあって楽しかったで?カレー屋は、もちろん楽しみにしててな、あと…」
ライムちゃんは、リーゼの方を向いてウインクする。
「リーゼはん、ファイトな♪」
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