それってまずいのでは

 開店から数日、ハンバーガー店は順調に売り上げを伸ばしている。僕は完全に手を引いているから、高い幸運値に頼った『会心の出来』のハンバーガーではないんだけど、売り上げは少しも落ちていないみたい。もともと『会心の出来』の影響はそれほどでもなかったのか、それともきっかけはともかく何度か食べているうちにハンバーガー自体の美味しさにハマってしまったのか。どちらにせよ、お店は大繁盛している。おかげで、ルランナさんもニコニコとご機嫌だった。


 というわけで、時間ができた僕たちは冒険者ギルドに向かった。久しぶりの冒険者活動だ。


「おお、ローウェル! それにトルトとハルファも!」


 ギルドに入ったところで、声をかけられた。ゼフィルだ。その隣にはエイナもいる。他のメンバーはまだ休養中なのか二人だけみたいだ。


「店の方はいいのか?」

「ああ、うん。特に問題はないみたいだし」


 開店にあたって、ゼフィルには宣伝に協力してくれた。宣伝と言っても、冒険者仲間にハンバーガー屋台が正式に出店することを伝えてもらっただけなんだけどね。


「そうか。じゃあ、また一緒に仕事でもするか?」

「何かいい依頼はあった?」

「あ、いや、特に変わり映えは――」

「ゼフィルさん! あ、それにトルト君も!」


 ゼフィルとのやり取りの途中、割り込んできたのはラダンさん。ちょっとポンコ――おっちょこちょいな受付のお兄さんだ。ゼフィルさんを探して声をかけたように見えたけど、どうやら僕もターゲットだったみたい。ちょうど良かったという風に呼びかけられた。


 いったい何だろう?

 ゼフィルと顔を見合わせる。僕たちが一緒に声をかけられるとしたら……廃村にあった遺跡ダンジョンのことかな? そういえば、また話を聞かせて貰うかもしれないと言っていたし。


「すみません、ダンジョンについて伺いたいことがありまして……」


 ラダンさんはそう切り出した。用件は予想通りだったみたい。だけど、話を聞きたがっているのはダンジョン研究の専門家とかではなくて、ギルドマスターらしい。よくわからないまま、僕たちはギルドマスターの執務室へと案内された。さすがに全員で押しかけるには手狭なので、向かったのは僕とゼフィル、そしてローウェルの三人だ。


「おお、すまないね、ゼフィルにローウェル。そして……ああ、君がトルトか。君のことはマドルス――キグニルのマスターからも聞いている。私はミルダスだ。よろしく頼む」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 ガロンドの冒険者ギルドのマスターは、かなり老齢のおじいさんだ。冒険者って荒くれ者も多いから、ギルドマスターは基本的に引退した上級冒険者が就くって聞いたことがあるけど、ミルダスさんはとてもそんな風には見えない。穏やかな風貌だし、体格だってどちらかというとひょろっとしている。魔術師タイプの冒険者だったのかな。


「で、どうしたんだ? ダンジョンのことならもう報告してあるだろ?」


 冒険者同士は対等という理論はギルドマスターにも適用されるのか、ゼフィルが軽い口調でミルダスさんに尋ねた。


「いや、私の方でも再度確認しておきたいことがあってね。すまないが少し付き合ってくれんか」

「構いませんが……」


 あ、いや、ローウェルは普通に敬語だった。まあ、組織のトップだもんね。冒険者ルールを適用するかどうかは、人それぞれってところかな。


 ミルダスさんの質問は、ダンジョンの魔物を倒したときの現象や、ダンジョンの崩壊について。とはいっても僕たちも、詳しいわけじゃないからね。わかる範囲でしか答えられない。それはミルダスさんもわかっているはずなんだけど、僕たちの答えを聞いては唸るような声を漏らすんだよね。なんだろう。ちょっと焦っている……?


「いったいどうしたんだよ、じいさん。らしくねえな」


 ゼフィルさんも違和感を覚えたようだ。問われたミルダスさんは苦笑いを浮かべてふうっと息を吐く。


「はは……そうかもしれんな。いや、なかなか困った事態になっているんだ。君たちにも話しておこう。地下水路の存在を知っているかね?」

「ん? ああ、下水だろ?」

「そうだ。王都全域に広がっている」


 王都には巨大な地下水路があるらしい。その地下水路っていうのが要は下水道なんだ。この世界って、汚物の処理がわりときっちりしていてるんだよね。その辺りに垂れ流しではなくて、きちんと下水道に流れるようなっている。王都全域に下水道が広がっているわけだから、文明レベルを考えると凄いことだよね。もちろん。魔法でどうにかしたんだろうけど。


 地下水路は基本的に人が立ち入るような場所ではないけど、それでも見回りは必要だ。動物や魔物が入り込んで、繁殖してしまうことがあるからね。そして、その見回りの仕事を請け負っているのが冒険者ギルドなんだって。


 定期的な見回りをしているので、基本的に危険性は少ない。なので、駆け出し冒険者たちが請け負うような仕事みたいだ。ところが、最近、地下水路で見慣れぬ魔物が確認されたんだって。その魔物とはリザードソルジャー。リザードマンという二足歩行のトカゲっぽい魔物がいるんだけど、その上位種にあたる。魔物のランクはCだから、駆け出し冒険者だと相手にするのはかなり厳しい。幸い、発見した冒険者たちは無事に逃げおおせたみたいだけど――


「問題はその後だ。討伐依頼を受けた中堅冒険者パーティーが、そのリザードソルジャーを倒したのはいいんだが……死体が消えて魔石だけが残ったそうだよ」


 ……それはもしかして!?

 だとしたらかなりまずい事態なのでは?


――――――――――――――――――――――

ついつい忘れがちな能力表示。

調理技能について記載忘れしてたので

以前のものも修正しました。


名 前:トルト

種 族:普人

年 齢:12

レベル:15 [3up]

生命力:87/87 [15up]

マナ量:81/81 [15up]

筋 力:39 [7up]

体 力:46 [9up]

敏 捷:61 [11up]

器 用:79 [14up]

魔 力:73 [13up]

精 神:59 [11up]

幸 運:123 [3up]


加護:

【職業神の加護・迷宮探索士】


スキル:

【運命神の微笑み】【短剣Lv15】[1up]

【影討ちLv12】[3up] 【投擲Lv6】[1up]

【解錠Lv10】[1up]【罠解除Lv10】[1up]

【方向感覚Lv8】[2up]【調理Lv14】[6up]

【光魔法Lv11】[2up] 【水魔法Lv10】[3up]

【闇魔法Lv12】[4up]【無属性魔法Lv5】[2up]

【風魔法Lv7】[new]


特 性:

【調理の才能 Lv1】【強運】【器用な指先 Lv1】

【魔法の素養 Lv2】


魔法:

〈クリーン〉〈ファーストエイド〉

〈クリエイト・ウォーター〉〈デハイドレイト〉

〈ディコンポジション〉〈ナイト・ヴィジョン〉

〈シャドウハイディング〉

〈ブリーズ〉[new] 〈ウインドカッター〉[new]

〈シュレッディングストーム〉[new]

〈ディテクト・マジック〉


■おまけ


※CランクになりたてのAさんの場合


名 前:斥候ポジションのAさん

種 族:普人

年 齢:25

レベル:20

生命力:116/116

マナ量:72/72

筋 力:63

体 力:65

敏 捷:90

器 用:86

魔 力:55

精 神:53

幸 運:12


加護:

【職業神の加護・斥候】


スキル:

【短剣Lv12】【弓Lv15】【解錠Lv10】

【罠解除Lv12】【追跡Lv5】【観察Lv10】


特 性:

【俊敏 Lv1】


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