第37話

 翌朝。


 昨日早く休めたこともあり、街を往復した疲労は起床時にそれほど感じなかった。


「よし、今日も1日頑張るか。パプリは……まだ眠そうだし置いていこう」


 しかし、スライムも寝るなんて意外だったな。目も口もないし、普通の動物とは違うのではないかと考えていた。


 俺は布団の上でモゾモゾとしか動かないパプリを置いて、玄関の扉を開けて外へ出た。


「今日もいい天気だなー。ここに来てから雨は降ってないけど……天気予報もないから分からないな」


 この世界に来てからは晴れの日が続いているが、いつ雨が降るかわからないのはかなり不便だった。


「まあ、晴れの日が程よく続くことは良いことだしな。それよりもポムテルとシュワンの様子を見ないといけないな」


 俺は魔法の肥料を撒いた畝に育ててあるポムテルとシュワンの様子を見ることにした。

 畝に近づくと、手前の区画に植えてあるポムテルの苗がかなり黄色くなって、全体的に枯れ始めているのが分かった。


「ジャガイモと同じような収穫時期だったら、今が収穫のチャンスなんだよな……。土も乾いているし、少し掘り返してみるか」


 そうして俺はポムテルの苗の根元を優しく掘り返した。

 すると、すぐにジャガイモのような見た目をした芋が顔を出した。


「……ん?どこまで掘れば全体が見えてくるんだ?」


 俺が土を掘り返して出てきた芋は、ジャガイモの品種の1つであるメークインのように、少し細長い形状をしていた。

 試しに1つ地表に出してみようと、俺は土を掘り返していったのだが、芋が大きすぎたのだ。


 その後、ようやくポムテルの芋を地表に出す事ができた俺だったが、その大きさにかなり驚くことになった。


「いやいや、大きすぎるだろう?20センチくらいあるんじゃないか?」


 こんなジャガイモは見た事がない。まあ、ジャガイモじゃなくてポムテルという別の作物だから大きさも少し変わることは当たり前と言えば当たり前なのだが……。


 魔法の肥料の効果はやはり絶大だった。こんなものが存在するのなら人々が食糧に困ることは無くなるだろう。


「もう収穫しても大丈夫そうだな。苗ごと引っ張ってみるか」


 俺はポムテルの芋の状態を見て、試しに1株ごと引き抜くことにした。

 苗を引っ張ると、芋づる式にポムテルの芋がたくさん地表に出てきた。

 

 ジャガイモの場合、芋が大きく育つと収穫できる個数は少なくなることがある。


 しかし、このポムテルはそういった様子は全くなかった。俺が引き抜いた株には10個ほどのポムテルの芋がついていたのだ。


 俺がポムテルを引き抜いた部分は、かなり深い穴ができていた。


「株を引き抜いただけでこんなに深い穴ができるってことは、ポムテルは地中深く育っていたという事なのか?」


 それなら大きい芋がこの畝に収まっていた理由にも説明がつく。

 20センチもある芋がたくさん地中に出来ていたら、それだけ土寄せの回数も増やさないといけないはずだ。もしそうだとしたら、とんでもない高さの畝になってしまうだろう。


「まあ、これは魔法の肥料のおかげだろうしあまり参考にはならないか……。とりあえず収穫してしまうか」


 俺はすぐに収穫を始めることにした。

 ポムテルの苗は20株ほどあるので、単純計算で200個ほどのポムテルが収穫できる予定だった。

 

 ジャガイモの場合だと、収穫した芋はその場で1〜2時間ほど天日干しを行う。

 表面についた湿気を取り除かないと、貯蔵性が保たれず芋が腐ってしまうことがあるからだ。


「朝食を食べ終えたらカミラに上納すればいいか。よし、パパッと株を引き抜いて天日干しを始めるか」

 

 俺はその後、次々とポムテルの苗を引き抜いて芋を地表に出していった。

 ただ芋を地表に出していくだけなので、あまり時間は掛からなかった。



 

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