一人一人に物語を
総督琉
第終話『世界の始まり』
冷たい結晶の中で、私は静かに目を閉じた。
冷たい結晶の中で、私は世界に愛を告げた。
誰もが望むだろう、私が創り上げた世界は。
だがこの世界を生み出すまでに、私は多くの犠牲を払った。それは時に大きなものであり、私を悪に染めたこともあっただろう。
苦痛に苛まれ、激しく後悔し、苦悩の末に死を選ぼうとしたこともあった。だが、彼女がいたから、彼女がいつでも私の側に寄り添ってくれたから、だから私は歩き出せた。
今この世界を創れたのも、きっと彼女がいたからだろう。
全て終わった。
何もかもなくなった。
それでも、新世界へと彼らは向かう。
全ては私が書き上げた世界だったーーはずだった。
全ては最初から描いていた物語だったーーはずだった。
最初から全て私が描いた物語だとしても、誰かが描いたプロローグだったとしても、これは彼らとともに歩んだ英雄譚、なのだろう。
だから私は戻らない。
だから私は振り返らない。
たとえ永遠という闇の中に飲み込まれることになっても、それでも私はこの選択に後悔はしないだろう。
ーーいや、少しだけ違うな。
本当はもう少しだけ、彼らと一緒にいたい。それでも、世界はそれを許してはくれない。
旧世界の崩壊に今、私は巻き込まれる。
だから、新世界へと私は己を犠牲にした。
全てを変えるために、理を破壊し、根底から全てを覆すために。
残酷だ、それでも世界は色づいている。
未来は明るい、だからその未来に彼らを連れていこう。
私はここにいよう。
私の永遠と生け贄に、世界に永遠を与えよう。
ーーたとえ死ぬことになろうとも、私はあなたを救ってみせる。
ーーいつか救えると分かっているのなら、私はそのいつかに賭けます。
誰かがそう言っていたな。
その言葉に影響を受け、私はこの選択を選んだのだろうか。
けれど、これだけは言える。
ーー私は、間違ってなどいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます